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名古屋大学 1968年 理系 第5問 解説

数学2/微分法数学2/積分法テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1968年 理系 第5問 解説

方針・初手

$f(0)=0$ と「$x_1 < x_2$ ならば $f(x_1) \leqq f(x_2)$」(単調非減少)の条件から、定義域 $0 \leqq x < 1$ において常に $f(x) \geqq 0$ であることをまず見抜く。 次に、積分を含む不等式 $f(x) \leqq \int_0^x f(t) dt$ の扱い方として、2つのアプローチが考えられる。1つは単調非減少性を利用して被積分関数を上から評価する方法、もう1つは $F(x) = \int_0^x f(t) dt$ とおいて微分の形に持ち込む方法である。

解法1

$f(x)$ は $0 \leqq x < 1$ で定義された関数であり、$f(0)=0$ かつ単調非減少($x_1 < x_2 \implies f(x_1) \leqq f(x_2)$)であるから、$0 \leqq x < 1$ を満たす任意の $x$ に対して

$$ f(x) \geqq f(0) = 0 $$

が成り立つ。 また、単調非減少の条件から、$0 \leqq t \leqq x$ の範囲において

$$ f(t) \leqq f(x) $$

が成り立つ。 この両辺を $t$ について $0$ から $x$ まで積分すると

$$ \int_0^x f(t) dt \leqq \int_0^x f(x) dt $$

となる。右辺の被積分関数 $f(x)$ は積分変数 $t$ に無関係な定数とみなせるため、

$$ \int_0^x f(x) dt = f(x) \int_0^x 1 dt = x f(x) $$

となる。 これを問題文で与えられた不等式 $f(x) \leqq \int_0^x f(t) dt$ とつなげると

$$ f(x) \leqq \int_0^x f(t) dt \leqq x f(x) $$

よって

$$ f(x) \leqq x f(x) $$

整理すると

$$ (1 - x) f(x) \leqq 0 $$

となる。 ここで、問題の条件から $0 \leqq x < 1$ であるため、$1 - x > 0$ である。 したがって、両辺を $1 - x$ で割って

$$ f(x) \leqq 0 $$

が得られる。 最初に確認した $f(x) \geqq 0$ と合わせると、すべての $0 \leqq x < 1$ について

$$ f(x) = 0 $$

となり、$f(x)$ は恒等的に $0$ であることが示された。(証明終)

解法2

解法1と同様に、条件より $0 \leqq x < 1$ において $f(x) \geqq 0$ である。

ここで、関数 $F(x)$ を

$$ F(x) = \int_0^x f(t) dt $$

とおく。 $f(x) \geqq 0$ であるから、積分区間 $0 \leqq t \leqq x$ において $F(x) \geqq 0$ である。 また、$f(x)$ は連続関数なので、$F(x)$ は微分可能であり、$F'(x) = f(x)$ が成り立つ。

問題で与えられた不等式は

$$ F'(x) \leqq F(x) $$

すなわち

$$ F'(x) - F(x) \leqq 0 $$

と書き直せる。 この両辺に $e^{-x} (> 0)$ を掛けると

$$ e^{-x} F'(x) - e^{-x} F(x) \leqq 0 $$

となり、左辺は積の微分法により次のように変形できる。

$$ \frac{d}{dx} \left\{ e^{-x} F(x) \right\} \leqq 0 $$

これより、関数 $g(x) = e^{-x} F(x)$ は単調非増加関数である。 したがって、$0 \leqq x < 1$ において

$$ g(x) \leqq g(0) $$

が成り立つ。 ここで、$g(0) = e^0 F(0) = 1 \cdot \int_0^0 f(t) dt = 0$ であるから

$$ e^{-x} F(x) \leqq 0 $$

となる。$e^{-x} > 0$ より

$$ F(x) \leqq 0 $$

が得られる。 一方で、先に確認した通り $F(x) \geqq 0$ であるから、すべての $0 \leqq x < 1$ について

$$ F(x) = 0 $$

でなければならない。 与えられた不等式 $f(x) \leqq F(x)$ に代入すると

$$ f(x) \leqq 0 $$

となる。これと $f(x) \geqq 0$ を合わせると、すべての $0 \leqq x < 1$ について

$$ f(x) = 0 $$

となり、$f(x)$ は恒等的に $0$ であることが示された。(証明終)

解説

単調非減少性と定積分における不等式の性質を活用する問題である。 解法1では、$f(x)$ の単調非減少性を最大限に利用し、被積分関数を最大値 $f(x)$ で上から評価した。これにより $f(x) \leqq x f(x)$ を導出している。問題の定義域が $x < 1$ であることが、最後の不等式を解く際に効いてくるという美しい構造になっている。 解法2では、$F'(x) - F(x) \leqq 0$ の両辺に $e^{-x}$ を掛けて $\left\{ e^{-x} F(x) \right\}' \leqq 0$ を作る手筋を用いた。これは微分方程式や不等式の評価(グロンウォールの不等式など)でよく用いられる積分因子の考え方であり、大学数学につながる重要な手法である。

答え

証明は解法に示した通りである。条件より $f(x) \geqq 0$ を示し、与えられた不等式から $f(x) \leqq 0$ を導くことで、恒等的に $f(x) = 0$ であることが示される。

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