名古屋大学 1994年 理系 第2問 解説

方針・初手
方程式を $(1+x)^n - 1 - 2^n x = 0$ と変形し、関数 $f(x) = (1+x)^n - 1 - 2^n x$ とおいて $y=f(x)$ のグラフと $x$ 軸の共有点の個数を考える。 関数を微分して増減を調べるが、$n$ の偶奇によって $(1+x)^{n-1}$ の値域や関数の極限が異なるため、場合分けが必要である。 また、$x=0$ が常に解の $1$ つとなることに気づけば、$f(0)=0$ を基準とすることで極値の符号判定が容易になる。
解法1
$f(x) = (1+x)^n - 1 - 2^n x$ とおき、方程式 $f(x)=0$ の実数解の個数を求める。 $f(0) = 1 - 1 - 0 = 0$ であるから、$x=0$ は常に解の $1$ つである。
(i) $n=1$ のとき
$f(x) = (1+x) - 1 - 2x = -x$ となる。 $f(x)=0$ とすると $x=0$ であり、実数解は $1$ 個である。
(ii) $n \ge 2$ のとき
$f(x)$ を微分すると、以下のようになる。
$$ f'(x) = n(1+x)^{n-1} - 2^n $$
$f'(x) = 0$ を満たす $x$ を考える。 ここで、二項定理より $n \ge 2$ において $2^n = (1+1)^n = 1 + n + \cdots > n$ が成り立つため、$\frac{2^n}{n} > 1$ であることに注意する。
($n$ が偶数の場合)
$n-1$ は奇数であるから、$(1+x)^{n-1}$ は単調増加であり、全ての実数値をとる。 したがって、$f'(x)=0$ となる実数 $x$ はただ $1$ つ存在する。これを $\alpha$ とおく。
$$ 1+\alpha = \left(\frac{2^n}{n}\right)^{\frac{1}{n-1}} $$
$\frac{2^n}{n} > 1$ より $1+\alpha > 1 \iff \alpha > 0$ である。 $x < \alpha$ のとき $f'(x) < 0$、$x > \alpha$ のとき $f'(x) > 0$ となるから、$f(x)$ の増減表は以下のようになる。
| $x$ | $\cdots$ | $\alpha$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ |
ここで $f(0) = 0$ であり、$\alpha > 0$ より極小値は $f(\alpha) < f(0) = 0$ となる。 また、$n$ が偶数であるから $\lim_{x \to \pm\infty} f(x) = \infty$ である。 よって、$y=f(x)$ のグラフは $x$ 軸と $x=0$ および $x > \alpha$ の範囲でそれぞれ $1$ 回ずつ交わる。 ゆえに、実数解は $2$ 個である。
($n$ が奇数の場合、$n \ge 3$)
$n-1$ は正の偶数であるから、$(1+x)^{n-1} \ge 0$ である。 $\frac{2^n}{n} > 0$ であるため、$f'(x) = 0$ は $2$ つの実数解をもつ。 $1+x = \pm \left(\frac{2^n}{n}\right)^{\frac{1}{n-1}}$ これらを $\alpha, \beta$ ($\alpha < \beta$) とおく。
$$ \alpha = -1 - \left(\frac{2^n}{n}\right)^{\frac{1}{n-1}}, \quad \beta = -1 + \left(\frac{2^n}{n}\right)^{\frac{1}{n-1}} $$
$\frac{2^n}{n} > 1$ より $\left(\frac{2^n}{n}\right)^{\frac{1}{n-1}} > 1$ であるから、$\alpha < -2 < -1 < 0 < \beta$ となる。 $f(x)$ の増減表は以下のようになる。
| $x$ | $\cdots$ | $\alpha$ | $\cdots$ | $\beta$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ |
ここで、$f(0)=0$ であり、$\alpha < 0 < \beta$ であるから、$x=0$ は $f(x)$ が単調減少する区間 $\alpha < x < \beta$ に含まれる。 したがって、極大値 $f(\alpha) > 0$、極小値 $f(\beta) < 0$ であることがわかる。 また、$n$ が奇数であるため、$\lim_{x \to \infty} f(x) = \infty$, $\lim_{x \to -\infty} f(x) = -\infty$ となる。 よって、$y=f(x)$ のグラフは $x$ 軸と $x < \alpha$, $\alpha < x < \beta$ ($x=0$ がこれに該当), $x > \beta$ のそれぞれの区間で $1$ 回ずつ、合計 $3$ 回交わる。 ゆえに、実数解は $3$ 個である。
解法2
方程式 $(1+x)^n = 1+2^n x$ の実数解は、曲線 $C: y=(1+x)^n$ と直線 $l: y=1+2^n x$ の共有点の $x$ 座標である。 $x=0$ のとき、両辺ともに $1$ となるため、$x=0$ は常に共有点の $1$ つである。
(i) $n=1$ のとき
直線 $y=1+x$ と直線 $y=1+2x$ は傾きが異なるため、交点は $x=0$ の $1$ 個のみである。
(ii) $n \ge 2$ のとき
$g(x) = (1+x)^n$ とおくと、以下のようになる。
$$ g'(x) = n(1+x)^{n-1} $$
$$ g''(x) = n(n-1)(1+x)^{n-2} $$
$x=0$ における $C$ の接線の傾きは $g'(0) = n$ である。 一方、$l$ の傾きは $2^n$ であり、$n \ge 2$ において $2^n > n$ が成り立つため、$x=0$ においては直線 $l$ の方が傾きが大きい。 すなわち、$x=0$ の近くにおいて、 $x < 0$ では $C$ が $l$ の上側に、$x > 0$ では $C$ が $l$ の下側にある。
($n$ が偶数の場合)
$n-2$ は偶数であるから、常に $g''(x) \ge 0$ となり、曲線 $C$ は全体で下に凸である。 下に凸な曲線と直線の共有点は最大でも $2$ 個である。 $x > 0$ において、$\lim_{x \to \infty} \frac{g(x)}{x} = \infty$ より、十分大きい $x$ では $C$ が $l$ の上側に出るため、$x > 0$ の範囲に共有点を $1$ つもつ。 したがって、共有点は $x=0$ と正の数の合計 $2$ 個である。
($n$ が奇数の場合、$n \ge 3$)
$n-2$ は奇数であるから、$x < -1$ のとき $g''(x) < 0$ (上に凸)、$x > -1$ のとき $g''(x) > 0$ (下に凸) となり、変曲点は $x=-1$ である。 区間 $x > -1$ において $C$ は下に凸であり、先ほどと同様の理由で $x > 0$ に共有点を $1$ つもつ。(区間 $x > -1$ での共有点は $x=0$ と合わせて $2$ 個) 区間 $x < -1$ において $C$ は上に凸である。 $x=-1$ において、$g(-1) = 0$。$l$ の $y$ 座標は $1-2^n$ であり、$n \ge 3$ より $1-2^n < 0$ であるから、 $C$ が $l$ の上側にある。 また、$\lim_{x \to -\infty} \{ g(x) - (1+2^n x) \} = -\infty$ であるから、十分小さな負の $x$ に対しては $C$ は $l$ の下側にある。 中間値の定理より $x < -1$ の範囲に共有点を少なくとも $1$ つもち、上に凸であるため共有点は高々 $2$ 個だが、変曲点 $x=-1$ で $C$ が $l$ の上側にあることから、共有点はちょうど $1$ つである。 したがって、共有点は $x < -1$, $x=0$, $x>0$ の合計 $3$ 個である。
解説
関数やグラフの形状を調べる際、$n$ の偶奇で大きく振る舞いが変わる(多項式の次数、偶数乗と奇数乗の違いなど)点に気づき、正確に場合分けできるかが問われている。 解法1のように増減表を書いて愚直に調べるのが最も確実だが、極値をとる $x$ 座標 $\alpha, \beta$ を直接代入して極値の符号を判定するのは計算が煩雑になる。そこで、$x=0$ が解であることを利用し、「$f(0)=0$」と「極値をとる $x$ 座標と $0$ との大小関係」を組み合わせることで、極値の符号をスマートに決定する手法が非常に重要である。 解法2のように、グラフの凹凸(第2次導関数)や極限、接線の傾きを利用して定性的に交点の個数を把握するアプローチも、見通しを良くする上で強力な武器となる。
答え
- $n=1$ のとき、$1$ 個
- $n$ が $2$ 以上の偶数のとき、$2$ 個
- $n$ が $3$ 以上の奇数のとき、$3$ 個
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