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東京工業大学 1992年 理系 第1問 解説

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東京工業大学 1992年 理系 第1問 解説

方針・初手

与えられた関数を $y = \frac{x^2 - 2x + k^2}{x^2 + 2x + k^2}$ とおき、$x$ が任意の実数を動くときの $y$ の値域を求める。

「$1$ 以外の整数値をとらない」という条件は、この値域に含まれる整数が $1$ のみ(または $1$ つも存在しない)ことと同値である。値域を求める方法として、分母を払って $x$ についての2次方程式とみなし、その実数解条件(判別式)から $y$ の範囲を絞る方法や、微分を用いて関数の最大値・最小値を直接求める方法が有効である。

解法1

$y = \frac{x^2 - 2x + k^2}{x^2 + 2x + k^2}$ とおく。

両辺に $x^2 + 2x + k^2$ を掛けて整理すると、以下の $x$ についての方程式を得る。

$$ (y-1)x^2 + 2(y+1)x + k^2(y-1) = 0 \cdots (*) $$

$x$ は任意の実数を取り得るため、$y$ が値域に含まれる条件は、方程式 $(*)$ が実数解 $x$ をもつことである。

(i)

$y = 1$ のとき

方程式 $(*)$ は $4x = 0$ となり、$x=0$ という実数解をもつ。したがって、$y=1$ は値域に必ず含まれる。

(ii)

$y \neq 1$ のとき

方程式 $(*)$ は $x$ についての2次方程式となる。実数解をもつ条件は、判別式を $D$ として $D \geqq 0$ であることである。

$$ \frac{D}{4} = (y+1)^2 - k^2(y-1)^2 \geqq 0 $$

展開して $y$ について整理すると、次の不等式を得る。

$$ (1-k^2)y^2 + 2(1+k^2)y + 1-k^2 \geqq 0 \cdots (**) $$

ここで、$k$ の値によって場合分けを行う。

(ア) $0 \leqq k \leqq 1$ のとき

もし $k=1$ であれば、不等式 $(**)$ は $4y \geqq 0 \iff y \geqq 0$ となる。このとき $y$ は $y \neq 1$ なる正の実数すべてをとり得るため、$2, 3, 4, \dots$ といった $1$ 以外の整数値を無数にとり、不適である。

もし $0 \leqq k < 1$ であれば、$1-k^2 > 0$ となり、$(**)$ は $y^2$ の係数が正の2次不等式となる。この解は $y \leqq \alpha, \beta \leqq y$ のような両側に非有界な範囲となり、同様に $1$ 以外の整数値を無数にとるため、不適である。

(イ) $k > 1$ のとき

$1-k^2 < 0$ となるため、不等式 $(**)$ の両辺を $1-k^2$ (負の数)で割って不等号の向きを反転させる。

$$ y^2 - 2\frac{k^2+1}{k^2-1}y + 1 \leqq 0 $$

平方完成を行う。

$$ \left( y - \frac{k^2+1}{k^2-1} \right)^2 \leqq \left( \frac{k^2+1}{k^2-1} \right)^2 - 1 $$

右辺を計算する。

$$ \left( \frac{k^2+1}{k^2-1} \right)^2 - 1 = \frac{(k^2+1)^2 - (k^2-1)^2}{(k^2-1)^2} = \frac{4k^2}{(k^2-1)^2} $$

$k > 1$ より $\frac{2k}{k^2-1} > 0$ であるから、平方根をとって以下の範囲を得る。

$$ \frac{k^2+1-2k}{k^2-1} \leqq y \leqq \frac{k^2+1+2k}{k^2-1} $$

分子を因数分解し、約分して整理する。

$$ \frac{(k-1)^2}{(k-1)(k+1)} \leqq y \leqq \frac{(k+1)^2}{(k-1)(k+1)} $$

$$ \frac{k-1}{k+1} \leqq y \leqq \frac{k+1}{k-1} $$

これが $y \neq 1$ における $y$ の存在範囲である。$y=1$ もこの区間に含まれるため、全体の関数 $y$ の値域はこの閉区間となる。

ここで、$k > 1$ より $0 < k-1 < k+1$ が成り立つため、値域の下限については常に以下の関係が成り立つ。

$$ 0 < \frac{k-1}{k+1} < 1 $$

したがって、値域の下限は区間 $(0, 1)$ の中にあり、$0$ 以下の整数をとることはない。

条件「$1$ 以外の整数値をとらない」を満たすためには、値域の上限が $2$ 未満であればよい。

$$ \frac{k+1}{k-1} < 2 $$

$k > 1$ より $k-1 > 0$ であるから、両辺に $k-1$ を掛けて解く。

$$ k+1 < 2(k-1) $$

$$ k > 3 $$

解法2

与えられた関数を $f(x)$ とおく。

$$ f(x) = \frac{x^2 - 2x + k^2}{x^2 + 2x + k^2} = 1 - \frac{4x}{x^2 + 2x + k^2} $$

(i)

$0 \leqq k \leqq 1$ のとき

分母 $x^2 + 2x + k^2 = 0$ は、判別式 $\frac{D}{4} = 1 - k^2 \geqq 0$ であるため実数解をもつ。

$k=0$ のとき、$f(x) = \frac{x^2 - 2x}{x^2 + 2x} = \frac{x-2}{x+2}$ (ただし $x \neq 0, -2$)となる。この関数は $1$ 以外のすべての実数値をとり得るため不適である。

$0 < k \leqq 1$ のとき、分母が $0$ となる実数 $x$ を $\alpha$ とすると、$x = \alpha$ において分子は $\alpha^2 - 2\alpha + k^2 \neq 0$ である(仮に $0$ とすると共通解をもつことになり $k=0$ に矛盾するため)。よって $\lim_{x\to\alpha} f(x) = \pm\infty$ となり、値域は非有界となるため、$1$ 以外の整数値を無数にとり不適である。

(ii)

$k > 1$ のとき

すべての実数 $x$ に対して分母 $x^2 + 2x + k^2 > 0$ となり、$f(x)$ は連続関数となる。 $g(x) = \frac{4x}{x^2 + 2x + k^2}$ とおき、その極値を調べる。

$$ g'(x) = \frac{4(x^2+2x+k^2) - 4x(2x+2)}{(x^2+2x+k^2)^2} = \frac{-4x^2 + 4k^2}{(x^2+2x+k^2)^2} = \frac{-4(x-k)(x+k)}{(x^2+2x+k^2)^2} $$

$g'(x) = 0$ となるのは $x = \pm k$ のときである。 増減表を書くと、$x = -k$ で極小、$x = k$ で極大となる。$\lim_{x\to\pm\infty} g(x) = 0$ であるから、極小値が最小値、極大値が最大値となる。

最小値:$g(-k) = \frac{-4k}{k^2 - 2k + k^2} = \frac{-2}{k-1}$

最大値:$g(k) = \frac{4k}{k^2 + 2k + k^2} = \frac{2}{k+1}$

$f(x) = 1 - g(x)$ であるから、$f(x)$ の値域は以下のようになる。

$$ 1 - \frac{2}{k+1} \leqq f(x) \leqq 1 - \left( \frac{-2}{k-1} \right) $$

$$ \frac{k-1}{k+1} \leqq f(x) \leqq \frac{k+1}{k-1} $$

以降は解法1と同様に評価する。$0 < \frac{k-1}{k+1} < 1$ であるため、区間内に含まれる整数値が $1$ のみとなるためには、最大値が $2$ 未満であればよい。

$$ \frac{k+1}{k-1} < 2 $$

$$ k > 3 $$

解説

分数関数の値域を求める典型問題である。解法1のように「$y = f(x)$ とおいて $x$ についての2次方程式とみなし、判別式 $D \geqq 0$ を用いる手法」は、微積分を学習していない段階でも解答でき、計算の見通しも立ちやすいため非常に有効である。

解法2のように微分を利用する手法は、関数の増減や極値、漸近線の振る舞いを直接把握できるため、より視覚的に値域を納得しやすい。いずれの解法においても、$k \leqq 1$ の場合に分母が $0$ になり、値域が全実数(または非有界)に広がってしまう点を見落とさないよう注意が必要である。

答え

$k > 3$

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