名古屋大学 1988年 文系 第1問 解説

注意 画像には(3)の問題文が含まれておらず、設問が途切れています。以下は読み取れた(1)、(2)のみを解答解説として作成したものです。
方針・初手
(1) 与えられた2次の関係式 $A^2 - 2AB + B^2 = O$ から3次の関係式を導くため、両辺に $A$ や $B$ を掛けて新たな式を作り、それらの差をとることを考えます。
(2) $A = A', B = B'$ は $A, B$ が対称行列であることを意味します。与式の両辺の転置をとることで $AB = BA$(可換性)を導き、$(A-B)^2 = O$ の形を作ります。さらに、実数を成分とする対称行列の2乗が零行列ならば、元の行列も零行列であることを成分計算で示します。
解法1
(1)
与えられた条件式は以下の通りである。
$$ A^2 - 2AB + B^2 = O $$
この式の両辺に左から $A$ を掛けると、
$$ A^3 - 2A^2B + AB^2 = O \quad \cdots \text{①} $$
また、元の条件式の両辺に右から $B$ を掛けると、
$$ A^2B - 2AB^2 + B^3 = O \quad \cdots \text{②} $$
①の式から②の式を辺々引くと、
$$ (A^3 - 2A^2B + AB^2) - (A^2B - 2AB^2 + B^3) = O $$
$$ A^3 - 3A^2B + 3AB^2 - B^3 = O $$
となり、題意が示された。
(2)
条件より $A = A', B = B'$ である。 条件式 $A^2 - 2AB + B^2 = O$ の両辺の転置行列をとる。 転置の性質 $(XY)' = Y'X'$ および $(X+Y)' = X'+Y'$ を用いると、
$$ (A^2 - 2AB + B^2)' = O' $$
$$ (A')^2 - 2B'A' + (B')^2 = O $$
ここで $A' = A, B' = B$ を代入すると、
$$ A^2 - 2BA + B^2 = O \quad \cdots \text{③} $$
元の条件式は以下の通りである。
$$ A^2 - 2AB + B^2 = O \quad \cdots \text{④} $$
④から③を辺々引くと、
$$ -2AB + 2BA = O $$
$$ AB = BA $$
すなわち、$A$ と $B$ は乗法について可換であることがわかる。 このとき、展開の公式が成り立つため、条件式④は次のように因数分解できる。
$$ (A - B)^2 = O $$
ここで、$C = A - B$ とおく。$A, B$ は対称行列($A=A', B=B'$)であるから、$C$ も対称行列となる。
$$ C' = (A - B)' = A' - B' = A - B = C $$
行列 $C$ は実数を成分とする2次の対称行列であるため、実数 $x, y, z$ を用いて次のように表せる。
$$ C = \begin{pmatrix} x & y \\ y & z \end{pmatrix} $$
$C^2 = O$ であるから、
$$ \begin{pmatrix} x & y \\ y & z \end{pmatrix}^2 = \begin{pmatrix} x^2+y^2 & y(x+z) \\ y(x+z) & y^2+z^2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$
両辺の対角成分を比較すると、以下の式が得られる。
$$ x^2 + y^2 = 0, \quad y^2 + z^2 = 0 $$
$x, y, z$ は実数であるから、これらの和が $0$ になるのは $x = 0, y = 0, z = 0$ のときに限られる。 したがって、
$$ C = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} = O $$
すなわち $A - B = O$ となり、$A = B$ であることが示された。
解説
行列の演算において、一般に $AB \neq BA$ であるため、乗法公式や因数分解がそのまま適用できないことに注意する問題です。 (1) では、因数分解を前提とせず、式の両辺に左からと右から別々に行列を掛けて差をとることで目的の式を作り出します。 (2) では、転置の性質 $(XY)' = Y'X'$ を利用して乗法の順序が逆転することを利用し、$AB = BA$ を導き出します。これにより $(A-B)^2 = O$ を得られます。また、「実対称行列 $C$ に対して $C^2 = O$ ならば $C = O$ となる」という性質は、成分を文字でおいて対角成分の2乗和が $0$ になることから簡潔に示すことができます。
答え
(1) 解法1に示した通り。
(2) 解法1に示した通り。
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