名古屋大学 2012年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) 微分を用いて接線の方程式を求め、3次曲線と接線で囲まれた面積を定積分で計算する。定積分の計算では $\frac{1}{12}$ 公式を用いると計算が簡略化できる。 (2) 曲線上の点における接線の方程式を立て、それが点 $B$ を通る条件を考える。接点の $x$ 座標に関する3次方程式の実数解の個数が、求める接線の本数と一致することを利用する。 (3) (2) の結果から接線が2本になる条件を絞り込み、与えられた条件(原点を通らない)を満たすものを特定する。特定した接点の $x$ 座標を (1) の結果に代入し、面積比を求める。
解法1
(1) $y = x^3 - a^2x$ を $x$ について微分すると、
$$ y' = 3x^2 - a^2 $$
曲線 $C$ 上の点 $A(t, t^3-a^2t)$ における接線 $l$ の方程式は、
$$ y - (t^3 - a^2t) = (3t^2 - a^2)(x - t) $$
$$ y = (3t^2 - a^2)x - 2t^3 $$
曲線 $C$ と接線 $l$ の共有点の $x$ 座標を求めるため、次の方程式を解く。
$$ x^3 - a^2x = (3t^2 - a^2)x - 2t^3 $$
$$ x^3 - 3t^2x + 2t^3 = 0 $$
直線 $l$ は $x = t$ で曲線 $C$ に接することから、左辺は $(x-t)^2$ を因数にもつ。
$$ (x-t)^2(x+2t) = 0 $$
したがって、共有点の $x$ 座標は $x = t, -2t$ である。$t \neq 0$ より、これらは異なる2点である。 求める面積 $S(t)$ は、この2交点間の定積分で求められる。
$$ S(t) = \left| \int_{-2t}^{t} \{(x^3 - a^2x) - ((3t^2 - a^2)x - 2t^3)\} dx \right| $$
$$ S(t) = \left| \int_{-2t}^{t} (x-t)^2(x+2t) dx \right| $$
ここで、定積分 $\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx = \frac{1}{12}(\beta - \alpha)^4$ などの性質を利用すると、
$$ S(t) = \frac{1}{12} |t - (-2t)|^4 = \frac{1}{12} |3t|^4 = \frac{81}{12} t^4 = \frac{27}{4} t^4 $$
(2) 曲線 $C$ 上の接点 $(s, s^3 - a^2s)$ における接線が点 $B(2a, b)$ を通るとする。 (1)より、この接線の方程式は $y = (3s^2 - a^2)x - 2s^3$ である。 これが点 $B(2a, b)$ を通るので、
$$ b = (3s^2 - a^2) \cdot 2a - 2s^3 $$
$$ 2s^3 - 6as^2 + 2a^3 + b = 0 $$
点 $B$ を通る接線の本数は、この $s$ についての3次方程式の異なる実数解の個数に等しい。 $g(s) = 2s^3 - 6as^2 + 2a^3 + b$ とおく。
$$ g'(s) = 6s^2 - 12as = 6s(s - 2a) $$
$g'(s) = 0$ とすると $s = 0, 2a$ である。$a > 0$ であるから、$g(s)$ は $s = 0$ で極大値 $g(0) = 2a^3 + b$ をとり、$s = 2a$ で極小値 $g(2a) = 16a^3 - 24a^3 + 2a^3 + b = b - 6a^3$ をとる。
実数解の個数、すなわち接線の本数は、極値の積の符号によって分類される。 極値の積を $P$ とすると、$P = g(0)g(2a) = (b + 2a^3)(b - 6a^3)$ である。
(i) $P < 0$ すなわち $-2a^3 < b < 6a^3$ のとき、実数解は3個であり、接線は3本。
(ii) $P = 0$ すなわち $b = -2a^3$ または $b = 6a^3$ のとき、実数解は2個であり、接線は2本。
(iii) $P > 0$ すなわち $b < -2a^3$ または $b > 6a^3$ のとき、実数解は1個であり、接線は1本。
(3) 接線が2本のみとなるのは、(2)より $b = -2a^3$ または $b = 6a^3$ のときである。
(ア) $b = -2a^3$ のとき 方程式 $g(s) = 0$ は、
$$ 2s^3 - 6as^2 = 0 $$
$$ 2s^2(s - 3a) = 0 $$
これを解くと接点の $x$ 座標は $s = 0, 3a$ となる。 しかし、$s = 0$ のときの接点は $(0, 0)$ となり、接線は原点を通ることになる。 これは「接線はどちらも原点を通らない」という条件に反するため不適である。
(イ) $b = 6a^3$ のとき 方程式 $g(s) = 0$ は、
$$ 2s^3 - 6as^2 + 8a^3 = 0 $$
$$ s^3 - 3as^2 + 4a^3 = 0 $$
$s = -a$ が解の1つであるから、左辺は $s+a$ で因数分解できる。
$$ (s+a)(s^2 - 4as + 4a^2) = 0 $$
$$ (s+a)(s-2a)^2 = 0 $$
これを解くと接点の $x$ 座標は $s = -a, 2a$ となる。 それぞれの接線が原点を通らないか確認する。 $s = -a$ のとき、接線の方程式は $y = \{3(-a)^2 - a^2\}x - 2(-a)^3 = 2a^2x + 2a^3$ となる。$a > 0$ より $y$ 切片は $2a^3 > 0$ であり、原点を通らない。 $s = 2a$ のとき、接線の方程式は $y = \{3(2a)^2 - a^2\}x - 2(2a)^3 = 11a^2x - 16a^3$ となる。$a > 0$ より $y$ 切片は $-16a^3 < 0$ であり、原点を通らない。 したがって、この場合は条件を満たす。
接線 $l_1, l_2$ の接点の $x$ 座標は $t = -a, 2a$ であり、それぞれに対応する面積は (1) の結果から次のように求まる。
$$ S(-a) = \frac{27}{4}(-a)^4 = \frac{27}{4}a^4 $$
$$ S(2a) = \frac{27}{4}(2a)^4 = 108a^4 $$
$S_1 \geqq S_2$ であるから、
$$ S_1 = 108a^4, \quad S_2 = \frac{27}{4}a^4 $$
よって、求める比は、
$$ \frac{S_1}{S_2} = \frac{108a^4}{\frac{27}{4}a^4} = 108 \times \frac{4}{27} = 16 $$
解説
微積分における基本的な解法を問う標準的な総合問題である。 (1) は3次曲線と接線で囲まれた面積の公式($\frac{1}{12}$ 公式)を用いると、積分の計算ミスを防ぐことができ、時間を大幅に短縮できる。 (2) の「ある点から引いた接線の本数」は、「接点を文字で置き、その $x$ 座標に関する方程式の実数解の個数を調べる」という定石通りに処理する。極値の積の符号を利用することで、面倒な方程式の分離などをせずに素早く場合分けができる。 (3) では、(2) で求めた境界値に対して、問題文の条件(接線が原点を通らない)を満たすかどうかの確認を怠らないようにしたい。接点の $x$ 座標さえ求まれば、(1) で一般化した $S(t)$ の式に代入するだけで各面積が求まるため、再び定積分を計算する必要はない。
答え
(1) $S(t) = \frac{27}{4} t^4$
(2) $-2a^3 < b < 6a^3$ のとき3本、$b = -2a^3, 6a^3$ のとき2本、$b < -2a^3$ または $b > 6a^3$ のとき1本
(3) $\frac{S_1}{S_2} = 16$
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