東京工業大学 1977年 理系 第1問 解説

方針・初手
円 $D$ に内接し、円 $C$ に接する弦がなす図形的性質に着目する。中心 $O$ を共有する同心円であるため、対称性を利用すると見通しが良くなる。
円 $D$ 上の点が円 $C$ への接線(弦)を引くとき、弦の長さや中心からの距離は一定である。したがって、点 $A$ から $P$、点 $P$ から $Q$ への移動は、原点 $O$ を中心とする一定角の回転移動として捉えることができる。このことに気づけば、三角関数を用いた偏角の計算に帰着できる。また、点と直線の距離の公式を用いて代数的にゴリ押しすることも可能であるが、計算の工夫が必要である。
解法1
円 $D$ 上の点の座標を、原点 $O$ を中心とする偏角($x$ 軸の正の向きを始線とする)を用いて表す。 点 $A(1, 0)$ の偏角は $0$ である。
点 $A$ から円 $C$ に引いた接線 $l$ の接点を $T_1$ とする。 $\triangle OAT_1$ は $\angle OT_1A = \frac{\pi}{2}$ の直角三角形であり、$OA = 1$、$OT_1 = r$ である。 $\angle AOT_1 = \alpha$ とおくと、次が成り立つ。
$$ \cos \alpha = \frac{OT_1}{OA} = r $$
ここで、$0 < r < 1$ であるから $0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$ とできる。 このとき、接点 $T_1$ の $y$ 座標は $r \sin \alpha > 0$ となり、条件を満たす。
直線 $l$ は弦 $AP$ であり、$OT_1 \perp l$ であるから、$T_1$ は弦 $AP$ の中点である。 直角三角形の合同($\triangle OAT_1 \equiv \triangle OPT_1$)より $\angle POT_1 = \angle AOT_1 = \alpha$ となるため、点 $P$ の偏角は $\alpha + \alpha = 2\alpha$ である。
次に、点 $P$ から円 $C$ に引いた接線 $m$ の接点を $T_2$ とし、もう一方の交点を $Q$ とする。 $\triangle OPT_2$ においても同様に、$\angle PT_2O = \frac{\pi}{2}$、$OP = 1$、$OT_2 = r$ より $\angle POT_2 = \alpha$ である。
接線 $m$ は $l$ と異なるため接点も異なり、$T_1 \neq T_2$ である。 点 $P$ の偏角が $2\alpha$、$\angle POT_2 = \alpha$ であり、方向が進むことから、接点 $T_2$ の偏角は $2\alpha + \alpha = 3\alpha$ となる。 さらに、$T_2$ は弦 $PQ$ の中点であるから $\triangle OPT_2 \equiv \triangle OQT_2$ となり、$\angle QOT_2 = \angle POT_2 = \alpha$ である。 したがって、点 $Q$ の偏角は $3\alpha + \alpha = 4\alpha$ となる。
点 $Q$ の座標は $(\cos 4\alpha, \sin 4\alpha)$ と表せる。 これを $r$ を用いて計算する。$\sin \alpha = \sqrt{1 - \cos^2 \alpha} = \sqrt{1 - r^2}$ である。 倍角の公式より、まず $2\alpha$ の三角関数を求める。
$$ \cos 2\alpha = 2\cos^2 \alpha - 1 = 2r^2 - 1 $$
$$ \sin 2\alpha = 2\sin \alpha \cos \alpha = 2r\sqrt{1 - r^2} $$
さらに倍角の公式を用いて $4\alpha$ の三角関数を求める。
$$ \cos 4\alpha = 2\cos^2 2\alpha - 1 = 2(2r^2 - 1)^2 - 1 = 8r^4 - 8r^2 + 1 $$
$$ \sin 4\alpha = 2\sin 2\alpha \cos 2\alpha = 2\left(2r\sqrt{1 - r^2}\right)(2r^2 - 1) = 4r(2r^2 - 1)\sqrt{1 - r^2} $$
以上より、点 $Q$ の座標が求まる。
解法2
座標と方程式を用いて代数的に解く。 点 $P$ の座標を $(p, q)$ とおく。$P$ は円 $D$ 上にあるため $p^2 + q^2 = 1$ である。
直線 $AP$ の方程式は $(p-1)y = q(x-1)$ より $qx - (p-1)y - q = 0$ となる。 円 $C$ に接するため、原点とこの直線の距離は $r$ である。
$$ \frac{|-q|}{\sqrt{q^2 + (p-1)^2}} = r $$
両辺を2乗して整理する。分母は $q^2 + p^2 - 2p + 1 = 2 - 2p$ となる。
$$ r^2 = \frac{q^2}{2 - 2p} = \frac{1 - p^2}{2(1 - p)} = \frac{(1 - p)(1 + p)}{2(1 - p)} $$
点 $P$ は $A$ と異なるため $p \neq 1$ であり、約分ができる。
$$ r^2 = \frac{1 + p}{2} \iff p = 2r^2 - 1 $$
これにより $q^2 = 1 - p^2 = 4r^2(1 - r^2)$ となる。 ここで、接点の $y$ 座標が正となる条件を確認する。 原点から直線 $l$ への垂線の方程式は $(1 - p)x - qy = 0$ であり、これが接点を通る。 交点の $y$ 座標は $y = \frac{q}{2}$ となるため、接点の $y$ 座標が正であることから $q > 0$ である。 したがって $q = 2r\sqrt{1 - r^2}$ と定まる。
次に、点 $P(p, q)$ を通り円 $C$ に接する直線 $m$ と、円 $D$ の交点 $Q(X, Y)$ を考える。$X^2 + Y^2 = 1$ である。 直線 $PQ$ の方程式は $(Y - q)x - (X - p)y - (pY - qX) = 0$ となる。 これが円 $C$ に接するため、原点との距離が $r$ となる。
$$ \frac{|pY - qX|}{\sqrt{(Y - q)^2 + (X - p)^2}} = r $$
分母のルート内は $X^2 + Y^2 + p^2 + q^2 - 2(pX + qY) = 2 - 2(pX + qY)$ である。 分子の2乗は $(p^2 + q^2)(X^2 + Y^2) - (pX + qY)^2 = 1 - (pX + qY)^2$ と変形できる。 よって、両辺を2乗した式は次のように整理できる。
$$ r^2 = \frac{1 - (pX + qY)^2}{2 - 2(pX + qY)} = \frac{1 + (pX + qY)}{2} $$
直線 $m$ は $l$ と異なるため $Q \neq A$ であり、$pX + qY \neq 1$ として約分した。 これを解くと $pX + qY = 2r^2 - 1$ となり、$p = 2r^2 - 1$ より $pX + qY = p$ を得る。
この関係式と $X^2 + Y^2 = 1$ を連立して $X, Y$ を求める。 $qY = p(1 - X)$ の両辺を2乗し、$q^2 = 1 - p^2$、$Y^2 = 1 - X^2$ を代入する。
$$ (1 - p^2)(1 - X^2) = p^2(1 - X)^2 $$
$X \neq 1$ であるから $1 - X$ で両辺を割る。
$$ (1 - p^2)(1 + X) = p^2(1 - X) $$
展開して整理すると、次のようになる。
$$ 1 - p^2 + X - p^2X = p^2 - p^2X \iff X = 2p^2 - 1 $$
$Y$ については $qY = p(1 - X) = p(2 - 2p^2) = 2p(1 - p^2) = 2pq^2$ より、$Y = 2pq$ となる。 最後に $p = 2r^2 - 1$ と $q = 2r\sqrt{1 - r^2}$ を代入する。
$$ X = 2(2r^2 - 1)^2 - 1 = 8r^4 - 8r^2 + 1 $$
$$ Y = 2(2r^2 - 1)\left(2r\sqrt{1 - r^2}\right) = 4r(2r^2 - 1)\sqrt{1 - r^2} $$
これにより座標が求まる。
解説
本問は、同心円における接線と弦の幾何学的性質を見抜けるかが鍵である。 「等しい長さの弦は、中心から等距離にある」「中心から等距離にある弦は、等しい中心角をもつ」という円の基本性質から、点 $A \to P \to Q$ という移動が単なる回転移動であることに気づけば、解法1のように三角関数の倍角の公式だけでスムーズに解くことができる。
解法2のように座標と方程式で押し切ることも可能であるが、点と直線の距離の公式で現れる $(pY - qX)^2$ を $1 - (pX + qY)^2$ と恒等変形できるかどうかが計算量を減らす最大のポイントになる。これはベクトルを用いた内積と外積(行列式)の大きさの関係式に等しく、計算の工夫として覚えておくと有用である。
答え
$$ \left( 8r^4 - 8r^2 + 1, \ 4r(2r^2 - 1)\sqrt{1 - r^2} \right) $$
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