大阪大学 1989年 文系 第4問 解説

方針・初手
与えられた不等式に含まれる三角関数を $\sin x$ に統一し、$\sin x = t$ とおいて変数 $t$ の関数についての条件に帰着させる。$x$ がすべての実数を動くとき、$t$ は $-1 \leqq t \leqq 1$ の範囲を動くため、区間 $[-1, 1]$ において絶対値を含む2次不等式が常に成り立つ条件を考える問題となる。絶対値を外し、2つの2次関数の最大・最小の問題として処理する。
解法1
$\cos^2 x = 1 - \sin^2 x$ より、与えられた不等式は次のように変形できる。
$$ \left|1 - \sin^2 x + a\sin x + b\right| \leqq 3 $$
ここで、$\sin x = t$ とおく。$x$ がすべての実数を動くとき、$t$ のとり得る値の範囲は
$$ -1 \leqq t \leqq 1 $$
である。このとき、与式は変数 $t$ を用いて次のように表される。
$$ \left|-t^2 + at + b + 1\right| \leqq 3 $$
絶対値を外すと、
$$ -3 \leqq -t^2 + at + b + 1 \leqq 3 $$
この不等式が $-1 \leqq t \leqq 1$ を満たすすべての実数 $t$ について成り立つための条件を求める。各辺に $t^2 - at$ を加え、$1$ を引くことで、次のような連立不等式に分けることができる。
$$ \begin{cases} t^2 - at - b - 4 \leqq 0 \\ t^2 - at - b + 2 \geqq 0 \end{cases} $$
それぞれの不等式が $-1 \leqq t \leqq 1$ において常に成り立つ条件を調べる。
(1) $-1 \leqq t \leqq 1$ において、常に $t^2 - at - b - 4 \leqq 0$ が成り立つ条件
$F(t) = t^2 - at - b - 4$ とおく。$y = F(t)$ のグラフは下に凸の放物線であるから、区間 $[-1, 1]$ において常に $F(t) \leqq 0$ となる条件は、区間の両端において $F(t) \leqq 0$ となることである。すなわち、
$$ \begin{cases} F(-1) \leqq 0 \\ F(1) \leqq 0 \end{cases} $$
これを計算して整理すると、
$$ \begin{cases} 1 + a - b - 4 \leqq 0 \\ 1 - a - b - 4 \leqq 0 \end{cases} $$
$$ \begin{cases} b \geqq a - 3 \\ b \geqq -a - 3 \end{cases} $$
(2) $-1 \leqq t \leqq 1$ において、常に $t^2 - at - b + 2 \geqq 0$ が成り立つ条件
$G(t) = t^2 - at - b + 2$ とおく。$y = G(t)$ のグラフは下に凸の放物線であり、その軸は直線 $t = \frac{a}{2}$ である。区間 $[-1, 1]$ において常に $G(t) \geqq 0$ となる条件は、この区間における $G(t)$ の最小値が $0$ 以上となることである。軸の位置によって場合分けを行う。
(i)
$\frac{a}{2} < -1$、すなわち $a < -2$ のとき
区間 $[-1, 1]$ において $G(t)$ は単調に増加するから、最小値は $G(-1)$ である。
$$ G(-1) = 1 + a - b + 2 \geqq 0 \iff b \leqq a + 3 $$
(ii)
$-1 \leqq \frac{a}{2} \leqq 1$、すなわち $-2 \leqq a \leqq 2$ のとき
区間 $[-1, 1]$ において $G(t)$ は $t = \frac{a}{2}$ で最小値をとる。
$$ G\left(\frac{a}{2}\right) = \frac{a^2}{4} - \frac{a^2}{2} - b + 2 = -\frac{a^2}{4} - b + 2 \geqq 0 \iff b \leqq -\frac{a^2}{4} + 2 $$
(iii)
$1 < \frac{a}{2}$、すなわち $a > 2$ のとき
区間 $[-1, 1]$ において $G(t)$ は単調に減少するから、最小値は $G(1)$ である。
$$ G(1) = 1 - a - b + 2 \geqq 0 \iff b \leqq -a + 3 $$
以上より、求める点 $(a, b)$ の存在範囲は、これらすべての条件を同時に満たす領域である。
解説
三角関数の不等式を、変数の置き換えによって2次関数の区間における不等式に帰着させる典型的な問題である。絶対値を含む不等式 $\left|X\right| \leqq 3$ は $-3 \leqq X \leqq 3$ と同値であることを利用し、2つの不等式に分けて考える。それぞれにおいて、「ある区間で常に不等式が成り立つ条件」を求めるため、2次関数のグラフの配置(最大値・最小値)を調べる。下に凸の放物線が $x$ 軸以下になる条件は端点のみを調べればよく、$x$ 軸以上になる条件は軸の位置による場合分けが必要になるという、それぞれのアプローチの違いを正確に実行できるかがポイントである。
答え
点 $(a, b)$ の存在範囲は、以下の不等式が表す領域である。
$$ b \geqq a - 3 \quad \text{かつ} \quad b \geqq -a - 3 $$
かつ
$$ \begin{cases} b \leqq a + 3 & (a < -2) \\ b \leqq -\frac{a^2}{4} + 2 & (-2 \leqq a \leqq 2) \\ b \leqq -a + 3 & (a > 2) \end{cases} $$
これを $ab$ 平面上に図示すると、以下の条件を満たす領域となる(境界線を含む)。
- 上側の境界線:半直線 $b = a + 3 \ (a < -2)$、放物線 $b = -\frac{a^2}{4} + 2 \ (-2 \leqq a \leqq 2)$、半直線 $b = -a + 3 \ (a > 2)$ からなる連続した曲線である。これらは点 $(-2, 1)$ および $(2, 1)$ において、傾きがそれぞれ $1, -1$ でなめらかにつながる。
- 下側の境界線:半直線 $b = -a - 3 \ (a \leqq 0)$ および $b = a - 3 \ (a > 0)$ からなるV字型の折れ線である。
- 領域の主な頂点:上端の頂点は $(0, 2)$、下端の頂点は $(0, -3)$、左端の頂点は $(-3, 0)$、右端の頂点は $(3, 0)$ である。
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