大阪大学 1974年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた連立不等式の条件から、変数 $\theta$ の動く範囲を特定する。
解法1では、三角関数の合成を用いて変数をまとめ、不等式を満たす角度の範囲を代数的に求める。
解法2では、座標平面上の点 $(x, y) = (\cos\theta, \sin\theta)$ を考え、直交する2直線によって定まる図形領域における $y$ 座標の最大値問題として視覚的に処理する。
解法1
$r = \sqrt{a^2+b^2}$ とおく。条件 $a^2+b^2 > 0$ より $r > 0$ である。
角 $\alpha$ を
$$ \cos\alpha = \frac{a}{r}, \quad \sin\alpha = \frac{b}{r} $$
を満たす角とする。三角関数の合成を用いると、与えられた連立不等式は次のように変形できる。
$$ \begin{cases} r(\sin\theta\cos\alpha + \cos\theta\sin\alpha) \geqq 0 \\ r(\cos\theta\cos\alpha - \sin\theta\sin\alpha) \geqq 0 \end{cases} $$
加法定理より、
$$ \begin{cases} r\sin(\theta+\alpha) \geqq 0 \\ r\cos(\theta+\alpha) \geqq 0 \end{cases} $$
$r > 0$ であるから、$\sin(\theta+\alpha) \geqq 0$ かつ $\cos(\theta+\alpha) \geqq 0$ となる。
これを満たす角 $\theta+\alpha$ の範囲は、整数 $n$ を用いて
$$ 2n\pi \leqq \theta+\alpha \leqq 2n\pi + \frac{\pi}{2} $$
と表される。$\sin\theta$ の最大値を求めるにあたり、周期性を考慮すれば $n=0$ の場合、すなわち
$$ 0 \leqq \theta+\alpha \leqq \frac{\pi}{2} $$
の範囲で考えれば十分である。
ここで $t = \theta+\alpha$ とおくと、$0 \leqq t \leqq \frac{\pi}{2}$ であり、$\theta = t-\alpha$ であるから、求める最大値は関数
$$ f(t) = \sin(t-\alpha) $$
の区間 $0 \leqq t \leqq \frac{\pi}{2}$ における最大値に等しい。
$f(t)$ は正弦関数であり、引数が $\frac{\pi}{2}$ のときに最大値 $1$ をとる。すなわち $t-\alpha = \frac{\pi}{2}$、つまり $t = \alpha + \frac{\pi}{2}$ のときである。
この $t$ が区間 $0 \leqq t \leqq \frac{\pi}{2}$ に含まれるための条件は、
$$ 0 \leqq \alpha + \frac{\pi}{2} \leqq \frac{\pi}{2} $$
すなわち $-\frac{\pi}{2} \leqq \alpha \leqq 0$ である。
この条件は $\cos\alpha \geqq 0$ かつ $\sin\alpha \leqq 0$ と同値であり、$\frac{a}{r} \geqq 0$ かつ $\frac{b}{r} \leqq 0$、すなわち $a \geqq 0$ かつ $b \leqq 0$ である。
よって、$a \geqq 0$ かつ $b \leqq 0$ のとき、最大値は $1$ である。
一方、$-\frac{\pi}{2} \leqq \alpha \leqq 0$ でない場合(すなわち $a < 0$ または $b > 0$ の場合)、関数 $f(t) = \sin(t-\alpha)$ は区間 $0 \leqq t \leqq \frac{\pi}{2}$ 内で極大値をとらないため、最大値は区間の端点 $t=0$ または $t=\frac{\pi}{2}$ のいずれかでとる。
端点での値はそれぞれ、
$$ f(0) = \sin(-\alpha) = -\sin\alpha = -\frac{b}{r} $$
$$ f\left(\frac{\pi}{2}\right) = \sin\left(\frac{\pi}{2}-\alpha\right) = \cos\alpha = \frac{a}{r} $$
となる。よって、この場合の最大値は $\max\left(\frac{a}{r}, -\frac{b}{r}\right)$ である。
解法2
座標平面において、$x = \cos\theta, y = \sin\theta$ とおく。
$\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ より、点 $P(x,y)$ は単位円 $x^2+y^2=1$ 上を動く。
このとき、与えられた連立不等式は次のように表される。
$$ \begin{cases} bx + ay \geqq 0 \\ ax - by \geqq 0 \end{cases} $$
この連立不等式が表す領域を $D$ とする。
直線 $l_1 : bx+ay = 0$ の法線ベクトル $\vec{n_1} = (b, a)$ と、直線 $l_2 : ax-by = 0$ の法線ベクトル $\vec{n_2} = (a, -b)$ の内積は $\vec{n_1} \cdot \vec{n_2} = ab - ab = 0$ であるから、$l_1$ と $l_2$ は直交する。
したがって、領域 $D$ は原点を境界の頂点とする、中心角 $\frac{\pi}{2}$ の扇形領域(直角をなす領域)である。
点 $P$ は、この領域 $D$ 内にある単位円周上の弧を動く。この弧を $C$ とし、弧 $C$ 上の点における $y$ 座標の最大値を求める。
まず、単位円上で $y$ 座標が最大となる点 $(0,1)$ が弧 $C$ 上に含まれる条件を考える。
点 $(0,1)$ が領域 $D$ に含まれるのは、連立不等式に $(x,y)=(0,1)$ を代入して
$$ \begin{cases} b \cdot 0 + a \cdot 1 \geqq 0 \\ a \cdot 0 - b \cdot 1 \geqq 0 \end{cases} $$
が成り立つとき、すなわち $a \geqq 0$ かつ $b \leqq 0$ のときである。
このとき、最大値は $1$ である。
次に、点 $(0,1)$ が領域 $D$ に含まれない場合(すなわち $a < 0$ または $b > 0$ の場合)を考える。
このとき、弧 $C$ 上には極大値となる点が存在しないため、$y$ 座標は弧の端点で最大となる。
弧 $C$ の両端点は、単位円と直線 $l_1, l_2$ の交点のうち、領域 $D$ の境界上にある点である。
$r = \sqrt{a^2+b^2}$ とおく。
直線 $l_1$ と単位円の交点のうち $ax-by \geqq 0$ を満たす点は、
$$ P_1\left(\frac{a}{r}, -\frac{b}{r}\right) $$
である。実際、これらが $l_1$ 上にあり、単位円上にあり、かつ $a\left(\frac{a}{r}\right) - b\left(-\frac{b}{r}\right) = \frac{a^2+b^2}{r} = r \geqq 0$ を満たすことが確認できる。
同様に、直線 $l_2$ と単位円の交点のうち $bx+ay \geqq 0$ を満たす点は、
$$ P_2\left(\frac{b}{r}, \frac{a}{r}\right) $$
である。
したがって、この場合の最大値は、端点 $P_1, P_2$ の $y$ 座標のうち大きい方、すなわち $\max\left(\frac{a}{r}, -\frac{b}{r}\right)$ である。
解説
三角関数の一次式で構成された連立不等式を処理する問題である。
代数的に解く(解法1)場合、三角関数の合成によって変数を1つにまとめ、角の変域を明確にすることがポイントである。
図形的に解く(解法2)場合、条件式をベクトルや領域の不等式として捉える視点が強力である。係数の形から2直線の直交性を見抜けると、円周上の弧の長さが特定でき、議論が非常に見通しよくなる。
どちらの解法においても、最大値をとる点(頂点や弧の端点)が条件を満たす領域に含まれるか否かの場合分けが重要となる。
答え
$a \geqq 0$ かつ $b \leqq 0$ のとき
$$ 1 $$
$a < 0$ または $b > 0$ のとき
$$ \max\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}, \frac{-b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right) $$
(※ $\max$ を用いず、以下のように場合分けして答えてもよい)
$a \geqq 0$ かつ $b \leqq 0$ のとき
$$ 1 $$
$a+b \geqq 0$ かつ $b > 0$ のとき
$$ \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} $$
$a+b < 0$ かつ $a < 0$ のとき
$$ \frac{-b}{\sqrt{a^2+b^2}} $$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











