大阪大学 1968年 理系 第5問 解説

方針・初手
左辺の極限 $\lim_{n\to\infty} (x^{2n} + y^{2n})^{\frac{1}{n}}$ を評価することから始める。この形の極限は、かっこの中の最大となる項でくくり出し、はさみうちの原理を利用するのが定石である。 極限値を求めた後は、問題の不等式を $x, y$ の大小関係によって場合分けし、座標平面上の領域として図示する。領域の対称性に注目すると、面積計算の見通しが良くなる。
解法1
左辺の極限について、$A_n = (x^{2n} + y^{2n})^{\frac{1}{n}}$ とおく。 $x, y$ について対称であるから、一般性を失うことなく $x^2 \ge y^2$ と仮定して極限を求める。
(ア) $x = 0$ のとき 仮定より $y = 0$ となり、$A_n = 0$ であるから $$\lim_{n\to\infty} A_n = 0$$
(イ) $x \neq 0$ のとき $x^2 > 0$ であるから、式を以下のように変形できる。 $$A_n = \left\{ x^{2n} \left( 1 + \left( \frac{y}{x} \right)^{2n} \right) \right\}^{\frac{1}{n}} = x^2 \left( 1 + \left( \frac{y}{x} \right)^{2n} \right)^{\frac{1}{n}}$$
ここで、仮定 $x^2 \ge y^2$ より $0 \le \left( \frac{y}{x} \right)^2 \le 1$ であるから、 $$1 \le 1 + \left( \frac{y}{x} \right)^{2n} \le 2$$ 各辺を $\frac{1}{n}$ 乗して $x^2$ を掛けると、 $$x^2 \le A_n \le x^2 \cdot 2^{\frac{1}{n}}$$
$\lim_{n\to\infty} 2^{\frac{1}{n}} = 2^0 = 1$ であるから、はさみうちの原理により $$\lim_{n\to\infty} A_n = x^2$$
以上 (ア), (イ) と対称性より、任意の $x, y$ に対して極限値は大きい方の2乗、すなわち $\max(x^2, y^2)$ となる。 したがって、与えられた不等式は次のように書き直せる。 $$\max(x^2, y^2) \ge \frac{3}{2}x^2 + \frac{3}{2}y^2 - 1$$
これを $x^2$ と $y^2$ の大小で場合分けして領域を求める。
(i) $x^2 \ge y^2$ のとき 不等式は $x^2 \ge \frac{3}{2}x^2 + \frac{3}{2}y^2 - 1$ となる。整理すると、 $$x^2 + 3y^2 \le 2$$
(ii) $x^2 < y^2$ のとき 不等式は $y^2 \ge \frac{3}{2}x^2 + \frac{3}{2}y^2 - 1$ となる。整理すると、 $$3x^2 + y^2 \le 2$$
求める領域 $D$ は、これら (i) と (ii) を合わせたものである。 不等式の条件および領域の式は、$x \leftrightarrow -x$、$y \leftrightarrow -y$、$x \leftrightarrow y$ のそれぞれの入れ替えに対して不変であるため、領域 $D$ は $x$ 軸、$y$ 軸、原点、直線 $y=x$ および $y=-x$ について対称な図形となる。 また、境界となる2つの楕円の交点は、$x^2 = y^2$ かつ $x^2 + 3y^2 = 2$ より、$(x, y) = \left( \pm\frac{1}{\sqrt{2}}, \pm\frac{1}{\sqrt{2}} \right)$ である。
面積を求める。対称性から、第1象限かつ $y \le x$ の部分の領域 $D_1$ の面積 $S_1$ を求め、それを8倍すればよい。 領域 $D_1$ は不等式 $x^2 + 3y^2 \le 2$ かつ $0 \le y \le x$ で表される。 これを $x$ 軸に沿って積分する。上側の境界線は $x = \frac{1}{\sqrt{2}}$ を境に $y = x$ から $y = \sqrt{\frac{2-x^2}{3}}$ へと切り替わるため、積分区間を分ける。 $$S_1 = \int_0^{\frac{1}{\sqrt{2}}} x \, dx + \int_{\frac{1}{\sqrt{2}}}^{\sqrt{2}} \sqrt{\frac{2-x^2}{3}} \, dx$$
第1項は、 $$\int_0^{\frac{1}{\sqrt{2}}} x \, dx = \left[ \frac{1}{2}x^2 \right]_0^{\frac{1}{\sqrt{2}}} = \frac{1}{4}$$
第2項について、$x = \sqrt{2}\sin\theta$ と置換積分する。$dx = \sqrt{2}\cos\theta \, d\theta$ であり、積分区間は $\theta$ が $\frac{\pi}{6}$ から $\frac{\pi}{2}$ となる。 $$\int_{\frac{1}{\sqrt{2}}}^{\sqrt{2}} \sqrt{\frac{2-x^2}{3}} \, dx = \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \frac{1}{\sqrt{3}} \sqrt{2(1-\sin^2\theta)} \cdot \sqrt{2}\cos\theta \, d\theta$$
$$= \frac{2}{\sqrt{3}} \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \cos^2\theta \, d\theta = \frac{1}{\sqrt{3}} \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} (1 + \cos 2\theta) \, d\theta$$
$$= \frac{1}{\sqrt{3}} \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta \right]_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} = \frac{1}{\sqrt{3}} \left\{ \left( \frac{\pi}{2} + 0 \right) - \left( \frac{\pi}{6} + \frac{\sqrt{3}}{4} \right) \right\} = \frac{\pi}{3\sqrt{3}} - \frac{1}{4}$$
これらを足し合わせて、 $$S_1 = \frac{1}{4} + \left( \frac{\pi}{3\sqrt{3}} - \frac{1}{4} \right) = \frac{\pi}{3\sqrt{3}}$$
求める面積 $S$ は、 $$S = 8 S_1 = \frac{8\sqrt{3}}{9}\pi$$
解法2
面積計算において、変数変換を利用して楕円を円に帰着させる別解を示す。
領域 $D_1$ は $x^2 + 3y^2 \le 2$ かつ $0 \le y \le x$ で定義される。 ここで、変数変換 $u = \frac{x}{\sqrt{2}}$、$v = \sqrt{\frac{3}{2}}y$ を行う。 このとき、$x^2 + 3y^2 \le 2$ は $u^2 + v^2 \le 1$ に写る。 また、条件 $0 \le y \le x$ は $0 \le \sqrt{\frac{2}{3}}v \le \sqrt{2}u$ となり、整理すると $0 \le v \le \sqrt{3}u$ に写る。
したがって、$(u, v)$ 平面における対応する領域 $E_1$ は、 $$u^2 + v^2 \le 1 \quad \text{かつ} \quad 0 \le v \le \sqrt{3}u$$ となる。直線 $v = \sqrt{3}u$ は傾き $\sqrt{3}$ の直線であり、偏角は $\frac{\pi}{3}$ であるから、領域 $E_1$ は原点を中心とする半径 $1$、中心角 $\frac{\pi}{3}$ の扇形である。 その面積は、 $$\pi \cdot 1^2 \cdot \frac{1}{6} = \frac{\pi}{6}$$
元の領域 $D_1$ の面積 $S_1$ は、$x = \sqrt{2}u$、$y = \sqrt{\frac{2}{3}}v$ の関係から、領域 $E_1$ の面積を $x$ 軸方向に $\sqrt{2}$ 倍、$y$ 軸方向に $\sqrt{\frac{2}{3}}$ 倍に拡大したものである(ヤコビアン)。 $$S_1 = \frac{\pi}{6} \times \left( \sqrt{2} \cdot \sqrt{\frac{2}{3}} \right) = \frac{\pi}{6} \times \frac{2}{\sqrt{3}} = \frac{\pi}{3\sqrt{3}}$$
全体の面積 $S$ は対称性からこれを8倍して、 $$S = 8 S_1 = \frac{8\sqrt{3}}{9}\pi$$
解説
- $\lim_{n\to\infty} (a^n + b^n)^{\frac{1}{n}} = \max(a, b)$ ($a \ge 0, b \ge 0$) は有名な極限であり、底が最大の項でくくり出してはさみうちの原理を用いる手法は頻出である。
- 条件に絶対値や $\max$ が含まれることによる対称性に気づくことが、図示と面積計算における鍵となる。領域の対称性を最大限に活用し、第1象限のさらに一部(直線 $y=x$ で区切った領域)だけを考えることで、無用な場合分けを回避できる。
- 解法1のような楕円に関する積分は計算が煩雑になりやすいため、解法2のように楕円を円に変換し、図形的に面積を求める手法は計算ミスの防止に非常に有効である。
答え
求める領域は以下の不等式を満たす点 $(x, y)$ の集合である。
- $x^2 \ge y^2$ のとき: $x^2 + 3y^2 \le 2$
- $x^2 < y^2$ のとき: $3x^2 + y^2 \le 2$
図示する領域は、$x$ 軸、$y$ 軸、$y=x$、$y=-x$ に関して対称であり、点 $(\pm\frac{1}{\sqrt{2}}, \pm\frac{1}{\sqrt{2}})$ でなめらかに繋がる2つの楕円の弧で囲まれた閉曲線およびその内部である(境界線を含む)。
面積は $\frac{8\sqrt{3}}{9}\pi$
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