大阪大学 1989年 理系 第1問 解説

方針・初手
原点を通る直線 $l$ の方向ベクトルを $\vec{u}$ とおく。 1次変換 $f$ を表す行列を $A$ とすると、$f(l)$ の方向ベクトルは $\vec{u'} = A\vec{u}$ となる。 $l$ と $f(l)$ が直交する条件は、2つの方向ベクトルの内積が $0$ になること($\vec{u} \cdot \vec{u'} = 0$)である。 この条件式から、直線 $l$ の傾き、または方向ベクトルの偏角についての関係式を導き、解の存在条件となす角の条件に帰着させる。
解法1
$f$ を表す行列を $A = \begin{pmatrix} a & a-2 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$ とする。 $\det A = a \cdot 1 - (a-2) \cdot 1 = 2 \neq 0$ より $A$ は正則行列であるから、原点を通る直線 $l$ の像 $f(l)$ は必ず原点を通る直線になる。
$l$ の方向ベクトルを $\vec{u} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \neq \vec{0}$ とすると、$f(l)$ の方向ベクトルは
$$ \vec{u'} = \begin{pmatrix} a & a-2 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax + (a-2)y \\ x + y \end{pmatrix} $$
となる。
$l \perp f(l)$ であるから $\vec{u} \cdot \vec{u'} = 0$ より
$$ x(ax + (a-2)y) + y(x+y) = 0 $$
整理して
$$ ax^2 + (a-1)xy + y^2 = 0 $$
を得る。これが性質 $P$ をもつための条件である。
(1)
直線 $l$ の存在条件は、上の式を満たす $(x, y) \neq (0, 0)$ が存在することである。
(i)
$l$ が $y$ 軸と一致するとき
方向ベクトルは $x=0, y \neq 0$ とおける。これを条件式に代入すると $y^2 = 0$ となり不適である。 したがって、直線 $l$ は $y$ 軸と一致しない。
(ii)
$l$ が $y$ 軸と一致しないとき
$x \neq 0$ であるから、条件式の両辺を $x^2$ で割り、$m = \frac{y}{x}$($m$ は直線 $l$ の傾き)とおくと
$$ m^2 + (a-1)m + a = 0 $$
となる。性質 $P$ をもつ $l$ が存在するための条件は、この $m$ についての2次方程式が実数解をもつことである。 判別式を $D$ とすると $D \ge 0$ であるから
$$ D = (a-1)^2 - 4a = a^2 - 6a + 1 \ge 0 $$
これを解いて
$$ a \le 3-2\sqrt{2}, \quad 3+2\sqrt{2} \le a $$
を得る。
(2)
性質 $P$ をもつ $l$ が2本存在するとき、(1)の2次方程式は異なる2つの実数解 $m_1, m_2$ をもつ。 よって $D > 0$ であり
$$ a < 3-2\sqrt{2}, \quad 3+2\sqrt{2} < a $$
を満たす。 このとき、解と係数の関係より
$$ m_1 + m_2 = -(a-1), \quad m_1 m_2 = a $$
が成り立つ。
2直線のなす角が $\frac{\pi}{3}$ であるとき、
$$ \tan \frac{\pi}{3} = \left| \frac{m_1 - m_2}{1 + m_1 m_2} \right| $$
が成り立つ。ただし、$1 + m_1 m_2 = 1 + a = 0$ すなわち $a = -1$ のときは分母が $0$ になるが、このとき2直線のなす角は $\frac{\pi}{2}$ となり条件を満たさないため、$a \neq -1$ としてよい。
$\tan \frac{\pi}{3} = \sqrt{3}$ より
$$ \sqrt{3} = \frac{|m_1 - m_2|}{|1 + a|} $$
両辺を正として2乗して変形すると
$$ 3(1+a)^2 = (m_1 - m_2)^2 $$
右辺は $(m_1 - m_2)^2 = (m_1 + m_2)^2 - 4m_1 m_2 = D$ であるから
$$ 3(a^2 + 2a + 1) = a^2 - 6a + 1 $$
整理すると
$$ 2a^2 + 12a + 2 = 0 $$
$$ a^2 + 6a + 1 = 0 $$
これを解いて
$$ a = -3 \pm 2\sqrt{2} $$
これは $a < 3-2\sqrt{2}, \quad 3+2\sqrt{2} < a$ および $a \neq -1$ を満たす。
解法2
方針・初手、および内積からの条件式導出は解法1と同様である。 ここでは方向ベクトルを三角関数を用いて表す。
$l$ の方向ベクトルとして、大きさが 1 のベクトル $\vec{u} = \begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}$ をとる($0 \le \theta < \pi$)。 $l \perp f(l)$ の条件式より
$$ a\cos^2\theta + (a-1)\sin\theta\cos\theta + \sin^2\theta = 0 $$
半角・倍角の公式を用いて変形すると
$$ a \cdot \frac{1+\cos2\theta}{2} + (a-1) \cdot \frac{\sin2\theta}{2} + \frac{1-\cos2\theta}{2} = 0 $$
$$ (a-1)\sin2\theta + (a-1)\cos2\theta + a + 1 = 0 $$
ここで $a = 1$ とすると $2 = 0$ となり等式を満たさないため、$a \neq 1$ である。 両辺を $a-1$ で割って移項すると
$$ \sin2\theta + \cos2\theta = -\frac{a+1}{a-1} $$
三角関数の合成を用いると
$$ \sqrt{2} \sin\left(2\theta + \frac{\pi}{4}\right) = -\frac{a+1}{a-1} $$
$$ \sin\left(2\theta + \frac{\pi}{4}\right) = -\frac{a+1}{\sqrt{2}(a-1)} $$
(1)
性質 $P$ をもつ $l$ が存在するための条件は、上の式を満たす実数 $\theta$ が存在することである。 正弦関数の値域は $-1 \le \sin x \le 1$ であるから
$$ \left| -\frac{a+1}{\sqrt{2}(a-1)} \right| \le 1 $$
両辺は正なので2乗して
$$ \frac{(a+1)^2}{2(a-1)^2} \le 1 $$
$$ (a+1)^2 \le 2(a-1)^2 $$
展開して整理すると
$$ a^2 + 2a + 1 \le 2a^2 - 4a + 2 $$
$$ a^2 - 6a + 1 \ge 0 $$
これを解いて
$$ a \le 3-2\sqrt{2}, \quad 3+2\sqrt{2} \le a $$
(2)
(1)の条件において等号が成立しないとき、性質 $P$ をもつ $l$ が2本存在し、それらの偏角を $\theta_1, \theta_2$ ($0 \le \theta_1 < \theta_2 < \pi$) とする。 2直線のなす角が $\frac{\pi}{3}$ であるから
$$ \theta_2 - \theta_1 = \frac{\pi}{3} $$
$\alpha = 2\theta_1 + \frac{\pi}{4}, \beta = 2\theta_2 + \frac{\pi}{4}$ とおくと、
$$ \beta - \alpha = 2(\theta_2 - \theta_1) = \frac{2\pi}{3} $$
このとき、$\sin\alpha = \sin\beta$ であり、単位円上で $y$ 座標が等しく偏角が $\frac{2\pi}{3}$ 離れた2点であるから、図形的な対称性より
$$ |\sin\alpha| = \cos\frac{\pi}{3} = \frac{1}{2} $$
したがって
$$ \left| -\frac{a+1}{\sqrt{2}(a-1)} \right| = \frac{1}{2} $$
両辺を2乗して
$$ \frac{(a+1)^2}{2(a-1)^2} = \frac{1}{4} $$
$$ 2(a+1)^2 = (a-1)^2 $$
展開して整理すると
$$ 2a^2 + 4a + 2 = a^2 - 2a + 1 $$
$$ a^2 + 6a + 1 = 0 $$
これを解いて
$$ a = -3 \pm 2\sqrt{2} $$
解説
原点を固定する1次変換によって、直線がどのように移るかを調べる典型問題である。 直線の扱いとして、「傾きを変数にする方法(解法1)」と「方向ベクトルを極方程式のように角度で表す方法(解法2)」の2つが有効である。 解法1は、計算が代数的で馴染み深いが、$y$ 軸に平行な場合(傾きが定義できない場合)の確認を忘れてはならない。また、なす角を扱う際に $\tan$ の加法定理を利用するため、$90^\circ$ になるケースを避ける記述が必要である。 解法2は、$y$ 軸に平行な場合も例外なく扱えるうえ、半角・倍角の公式を用いて $\sin$ の一次方程式に帰着させることができる。図形的な意味も捉えやすいため、計算量や見通しの良さからおすすめの手法である。
答え
(1)
$$ a \le 3-2\sqrt{2}, \quad 3+2\sqrt{2} \le a $$
(2)
$$ a = -3 \pm 2\sqrt{2} $$
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