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大阪大学 1992年 理系 第3問 解説

数学B/数列数学3/積分法テーマ/不等式の証明
大阪大学 1992年 理系 第3問 解説

方針・初手

数列の和に関する不等式の証明問題においては、各項を「和が計算できる形(階差の形)」に拡大して評価するか、「定積分」を用いて面積として評価する手法が定石である。 本問では、右辺の目標値が $\frac{1}{4}$ であることを見据えて、一般項 $\frac{1}{k^3}$ を部分分数分解できる形に評価するか、適切な区間で積分評価に持ち込むかの2通りのアプローチが考えられる。

解法1

一般項 $\frac{1}{k^3}$ を、部分分数分解を利用して和が計算できる形に上から評価する。

$k \ge 2$ のとき、$k^3 > k^3 - k = (k-1)k(k+1) > 0$ であるから、逆数をとって以下の不等式が成り立つ。

$$ \frac{1}{k^3} < \frac{1}{(k-1)k(k+1)} $$

よって、与式の左辺について以下の不等式が成り立つ。

$$ \sum_{k=2}^n \frac{1}{k^3} < \sum_{k=2}^n \frac{1}{(k-1)k(k+1)} $$

ここで、右辺の一般項は次のように部分分数分解できる。

$$ \frac{1}{(k-1)k(k+1)} = \frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{(k-1)k} - \frac{1}{k(k+1)} \right\} $$

これを代入して和を計算する。

$$ \begin{aligned} \sum_{k=2}^n \frac{1}{(k-1)k(k+1)} &= \frac{1}{2} \sum_{k=2}^n \left\{ \frac{1}{(k-1)k} - \frac{1}{k(k+1)} \right\} \\ &= \frac{1}{2} \left\{ \left( \frac{1}{1 \cdot 2} - \frac{1}{2 \cdot 3} \right) + \left( \frac{1}{2 \cdot 3} - \frac{1}{3 \cdot 4} \right) + \cdots + \left( \frac{1}{(n-1)n} - \frac{1}{n(n+1)} \right) \right\} \\ &= \frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{2} - \frac{1}{n(n+1)} \right\} \\ &= \frac{1}{4} - \frac{1}{2n(n+1)} \end{aligned} $$

$n \ge 2$ の自然数に対して $\frac{1}{2n(n+1)} > 0$ であるから、以下の関係が成り立つ。

$$ \sum_{k=2}^n \frac{1}{k^3} < \frac{1}{4} - \frac{1}{2n(n+1)} < \frac{1}{4} $$

したがって、題意の不等式が成り立つことが示された。

解法2

定積分を用いて和を上から評価する。

(i)

$n=2$ のとき

左辺は $\frac{1}{2^3} = \frac{1}{8}$ であり、$\frac{1}{8} < \frac{1}{4}$ より不等式は成り立つ。

(ii)

$n \ge 3$ のとき

$x > 0$ において関数 $f(x) = \frac{1}{x^3}$ は単調減少であるから、自然数 $k \ge 3$ に対して、区間 $k-1 \le x \le k$ において以下の不等式が成り立つ。

$$ \frac{1}{k^3} \le \frac{1}{x^3} $$

この区間で等号は常に成り立たないため、積分すると厳密な不等式が得られる。

$$ \frac{1}{k^3} < \int_{k-1}^{k} \frac{1}{x^3} dx $$

これを $k=3$ から $k=n$ まで足し合わせる。

$$ \sum_{k=3}^n \frac{1}{k^3} < \sum_{k=3}^n \int_{k-1}^{k} \frac{1}{x^3} dx = \int_{2}^{n} \frac{1}{x^3} dx $$

定積分を計算する。

$$ \int_{2}^{n} \frac{1}{x^3} dx = \left[ -\frac{1}{2x^2} \right]_2^n = \frac{1}{8} - \frac{1}{2n^2} $$

したがって、以下の不等式が得られる。

$$ \sum_{k=3}^n \frac{1}{k^3} < \frac{1}{8} - \frac{1}{2n^2} $$

両辺に $k=2$ のときの項 $\frac{1}{2^3} = \frac{1}{8}$ を加える。

$$ \sum_{k=2}^n \frac{1}{k^3} < \frac{1}{8} + \left( \frac{1}{8} - \frac{1}{2n^2} \right) = \frac{1}{4} - \frac{1}{2n^2} $$

$n \ge 3$ の自然数に対して $\frac{1}{2n^2} > 0$ であるから、以下の関係が成り立つ。

$$ \sum_{k=2}^n \frac{1}{k^3} < \frac{1}{4} $$

これにより、$n \ge 3$ のときも不等式が成り立つことが示された。

以上 (i), (ii) より、2以上の自然数 $n$ に対して題意の不等式が成り立つ。

解説

数列の和の不等式証明における代表的な手法である「部分分数分解による評価」と「積分による評価」の2通りの解法を示した。

解法1で用いた $\frac{1}{k^3} < \frac{1}{(k-1)k(k+1)}$ という評価は、右辺が綺麗に打ち消し合う階差の形を作り出せるため非常に強力である。難関大の入試でも頻出のテクニックであるため、確実に習得しておきたい。

解法2の積分評価も定石であるが、評価の精度に注意が必要である。仮に $k=2$ からまとめて積分で評価しようとすると、$\sum_{k=2}^n \frac{1}{k^3} < \int_{1}^{n} \frac{1}{x^3} dx = \frac{1}{2} - \frac{1}{2n^2}$ となり、目標の上限である $\frac{1}{4}$ を下回ることが示せない。このように評価が甘くなってしまう場合は、最初の数項だけ直接計算し、残りの項を積分で評価することで精度を上げる工夫が求められる。

答え

題意の不等式が成り立つことが示された。(証明終)

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