大阪大学 1992年 理系 第2問 解説

方針・初手
直線が他の 2 つの直線に交わる条件を考える問題である。空間図形における直線と平面の扱い、またはベクトルを用いた共線条件の定式化が問われている。
アプローチとしては大きく 2 つある。 1 つ目は、点 $P$ と直線 $l$ ($x$ 軸)を含む平面 $\alpha$ を設定し、直線 $m$ がその平面 $\alpha$ と交わる条件を考える幾何的な手法である。直線 $n$ は平面 $\alpha$ 上にあるため、この見方をすると図形的な位置関係が捉えやすくなる。 2 つ目は、直線 $l$ 上の点 $Q$ と直線 $m$ 上の点 $R$ をそれぞれ媒介変数で表し、3 点 $P, Q, R$ が同一直線上にある条件(実数倍のベクトル等式)から方程式を立てる代数的な手法である。
ここでは、計算の見通しが良い平面を用いた解法を「解法1」、ベクトルの共線条件を用いた解法を「解法2」として解説する。
解法1
直線 $l$ は $x$ 軸である。 点 $P(1-t, -t, 1-t)$ が $x$ 軸上にあると仮定すると、$y$ 座標と $z$ 座標がともに $0$ となるが、$-t = 0$ かつ $1-t = 0$ を満たす実数 $t$ は存在しない。よって、点 $P$ は常に $x$ 軸上にない。 したがって、点 $P$ と直線 $l$ ($x$ 軸) は、ただ 1 つの平面 $\alpha$ を定める。
平面 $\alpha$ は $x$ 軸を含むので、その方程式は実数 $a, b$ (ただし $(a, b) \neq (0, 0)$)を用いて次のように表せる。
$$ ay + bz = 0 $$
平面 $\alpha$ は点 $P(1-t, -t, 1-t)$ を通るので、座標を代入して
$$ a(-t) + b(1-t) = 0 $$
これを満たす $(a, b)$ の組として、$(a, b) = (1-t, t)$ をとることができる($t$ と $1-t$ が同時に $0$ になることはないため、平面の方程式として適する)。 よって、平面 $\alpha$ の方程式は以下のようになる。
$$ (1-t)y + tz = 0 $$
直線 $n$ は点 $P$ を通り、直線 $l$ に交わるため、直線 $n$ は平面 $\alpha$ 上に含まれる。さらに、直線 $n$ は直線 $m$ にも交わるため、直線 $m$ と平面 $\alpha$ は交点を持たなければならない。 直線 $m$ は 2 点 $(1, 1, 0), (0, 0, 1)$ を通るので、直線 $m$ 上の任意の点は、実数 $v$ を用いて次のように表せる。
$$ (x, y, z) = (0, 0, 1) + v(1, 1, -1) = (v, v, 1-v) $$
この点が平面 $\alpha$ 上にあるとき、
$$ (1-t)v + t(1-v) = 0 $$
$$ v - tv + t - tv = 0 $$
$$ (1-2t)v = -t $$
この $v$ についての方程式が解を持つ条件を考える。
(i)
$1-2t = 0$ すなわち $t = \frac{1}{2}$ のとき 方程式は $0 \cdot v = -\frac{1}{2}$ となり、これを満たす実数 $v$ は存在しない。 このとき、直線 $m$ と平面 $\alpha$ は交点を持たず、条件を満たす直線 $n$ は存在しない。
(ii)
$1-2t \neq 0$ すなわち $t \neq \frac{1}{2}$ のとき 方程式はただ 1 つの解 $v = \frac{t}{2t-1}$ を持つ。 これにより、直線 $m$ と平面 $\alpha$ の交点 $R$ の座標は次のように定まる。
$$ R\left( \frac{t}{2t-1}, \frac{t}{2t-1}, 1 - \frac{t}{2t-1} \right) = \left( \frac{t}{2t-1}, \frac{t}{2t-1}, \frac{t-1}{2t-1} \right) $$
このとき、直線 $n$ は平面 $\alpha$ 上の 2 点 $P, R$ を通る直線として定まる。 直線 $n$ の方向ベクトル $\vec{PR}$ を計算すると、以下のようになる。
$$ \begin{aligned} \vec{PR} &= R - P \\ &= \left( \frac{t}{2t-1} - (1-t), \frac{t}{2t-1} - (-t), \frac{t-1}{2t-1} - (1-t) \right) \\ &= \left( \frac{t - (1-t)(2t-1)}{2t-1}, \frac{t + t(2t-1)}{2t-1}, \frac{t-1 - (1-t)(2t-1)}{2t-1} \right) \\ &= \frac{1}{2t-1} \left( 2t^2 - 2t + 1, 2t^2, 2t^2 - 2t \right) \end{aligned} $$
ここで、直線 $n$ は直線 $l$ ($x$ 軸) に交わる必要がある。直線 $n$ は $x$ 軸と同じ平面 $\alpha$ 上にあるため、$x$ 軸と平行である場合は交点を持たない。 直線 $n$ が $x$ 軸と平行になるのは、$\vec{PR}$ の $y$ 成分および $z$ 成分が $0$ になるときである。
$$ \frac{2t^2}{2t-1} = 0 \iff t = 0 $$
$t=0$ のとき、$\vec{PR}$ の $z$ 成分も $0$ となり、$\vec{PR} = (-1, 0, 0)$ となるため直線 $n$ は $x$ 軸と平行になる。点 $P(1, 0, 1)$ は $x$ 軸上にないため、このとき直線 $n$ は $x$ 軸と交わらない。 したがって、直線 $n$ が存在するための条件は $t \neq 0$ かつ $t \neq \frac{1}{2}$ である。
このとき、直線 $n$ の方向ベクトルとして $\vec{d} = (2t^2 - 2t + 1, 2t^2, 2t^2 - 2t)$ をとることができる。 求める直線 $n$ の方程式は、媒介変数 $s$ を用いて以下のように表せる。
$$ \begin{cases} x = 1 - t + s(2t^2 - 2t + 1) \\ y = -t + 2st^2 \\ z = 1 - t + 2s(t^2 - t) \end{cases} \quad (s \text{ は実数}) $$
解法2
直線 $l$ は $x$ 軸であるから、直線 $l$ 上の点 $Q$ は実数 $u$ を用いて $Q(u, 0, 0)$ と表せる。 また、直線 $m$ は 2 点 $(1, 1, 0), (0, 0, 1)$ を通るため、直線 $m$ 上の点 $R$ は実数 $v$ を用いて $R(v, v, 1-v)$ と表せる。
点 $P$ を通り直線 $l, m$ に交わる直線 $n$ が存在するとき、3 点 $P, Q, R$ は同一直線上にある。 $P$ が $x$ 軸上にないこと(解法1で確認済)から $P \neq Q$ であり、ある実数 $k$ を用いて $\vec{PR} = k\vec{PQ}$ と表せる。
$$ \vec{PQ} = Q - P = (u + t - 1, t, t - 1) $$
$$ \vec{PR} = R - P = (v + t - 1, v + t, t - v) $$
各成分を比較して、以下の連立方程式を得る。
$$ \begin{cases} v + t - 1 = k(u + t - 1) & \cdots \text{①} \\ v + t = kt & \cdots \text{②} \\ t - v = k(t - 1) & \cdots \text{③} \end{cases} $$
②より $v = t(k - 1)$ となり、これを③に代入する。
$$ t - t(k - 1) = k(t - 1) $$
$$ 2t - kt = kt - k $$
$$ k(2t - 1) = 2t \quad \cdots \text{④} $$
この $k$ についての方程式の解を考える。
(i)
$2t - 1 = 0$ すなわち $t = \frac{1}{2}$ のとき ④は $0 = 1$ となり矛盾する。よって、これを満たす実数 $k$ は存在せず、直線 $n$ は存在しない。
(ii)
$2t - 1 \neq 0$ すなわち $t \neq \frac{1}{2}$ のとき ④より $k = \frac{2t}{2t - 1}$ と定まる。 このとき、②より $v$ も以下のように定まる。
$$ v = t \left( \frac{2t}{2t - 1} - 1 \right) = \frac{t}{2t - 1} $$
これらを①に代入して $u$ について解く。
$$ \frac{t}{2t - 1} + t - 1 = \frac{2t}{2t - 1} (u + t - 1) $$
両辺に $2t - 1$ を掛けて整理する。
$$ t + (t - 1)(2t - 1) = 2t(u + t - 1) $$
$$ 2t^2 - 2t + 1 = 2tu + 2t^2 - 2t $$
$$ 2tu = 1 $$
もし $t = 0$ であれば、$0 = 1$ となり矛盾が生じる。よって $t \neq 0$ が必要である。 $t \neq 0$ のとき、$u = \frac{1}{2t}$ と一意に定まる。
以上より、同一直線上にあるような点 $Q, R$ が存在するための条件は、$t \neq 0$ かつ $t \neq \frac{1}{2}$ である。
このとき、方向ベクトル $\vec{PQ}$ は次のように求まる。
$$ \vec{PQ} = \left( \frac{1}{2t} + t - 1, t, t - 1 \right) = \frac{1}{2t} (2t^2 - 2t + 1, 2t^2, 2t^2 - 2t) $$
直線 $n$ の方向ベクトルとして $2t\vec{PQ}$ を採用すれば、方程式は媒介変数 $s$ を用いて以下のように表せる。
$$ \begin{cases} x = 1 - t + s(2t^2 - 2t + 1) \\ y = -t + 2st^2 \\ z = 1 - t + 2s(t^2 - t) \end{cases} \quad (s \text{ は実数}) $$
解説
空間における直線と交わる条件を扱う、国公立大でよく見られる典型問題である。 「2直線に交わる」という条件を数式に翻訳する際、解法2のようなベクトルの共線条件 $\vec{PR} = k\vec{PQ}$ を立てるのが最も標準的で迷いが少ない方法である。連立方程式の処理において、文字で割る際の場合分け($t=\frac{1}{2}$ や $t=0$ の確認)を丁寧に行えるかが問われている。
一方、解法1のように「点と直線が張る平面」を考える方法は、空間把握の強力な武器になる。「直線 $n$ は $x$ 軸に交わり、点 $P$ を通る」という時点で、直線 $n$ 全体が特定の平面に拘束されることに気付けば、あとは直線 $m$ とその平面の交点を求めるだけの容易な計算に帰着する。ただし、平面上に存在しても「$x$ 軸と平行な場合は交わらない」という条件($t \neq 0$ の確認)を忘れやすい点には注意が必要である。
答え
$t$ についての条件は、 $t \neq 0$ かつ $t \neq \frac{1}{2}$
直線 $n$ の方程式は、媒介変数 $s$ を用いて
$$ \begin{cases} x = 1 - t + s(2t^2 - 2t + 1) \\ y = -t + 2st^2 \\ z = 1 - t + 2s(t^2 - t) \end{cases} \quad (s \text{ は実数}) $$
(ベクトル方程式 $(x, y, z) = (1-t, -t, 1-t) + s(2t^2 - 2t + 1, 2t^2, 2t^2 - 2t)$ などと同値な表現であればよい)
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