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大阪大学 1995年 理系 第4問 解説

数学2/指数対数数学3/微分法数学C/平面ベクトルテーマ/接線・法線テーマ/図形総合
大阪大学 1995年 理系 第4問 解説

方針・初手

滑らずに転がる図形の軌跡を考える問題である。 曲線の弧長と、転がる図形(今回は正三角形の辺)の上の距離が等しくなるという性質を利用する。 接点 $T(t, f(t))$ における接線方向と法線方向の単位ベクトルを求め、位置ベクトルの和 $\vec{OP} = \vec{OT} + \vec{TM} + \vec{MP}$ を用いて点 $P$ の座標を $t$ の式で表すことから始める。 最後に $y$ 座標が一定になるための条件から $a$ を逆算する。

解法1

関数 $f(x) = -\frac{e^x + e^{-x}}{2}$ の導関数は以下のようになる。

$$ f'(x) = -\frac{e^x - e^{-x}}{2} $$

これより、

$$ 1 + \{f'(x)\}^2 = 1 + \left( -\frac{e^x - e^{-x}}{2} \right)^2 = \left( \frac{e^x + e^{-x}}{2} \right)^2 = \{f(x)\}^2 $$

となる。

最初の状態から接点が $T(t, f(t))$ $(t > 0)$ に移動するまでに、曲線 $C$ 上で転がった弧長 $s$ を求める。

$$ \begin{aligned} s &= \int_{0}^{t} \sqrt{1 + \{f'(x)\}^2} \,dx \\ &= \int_{0}^{t} \sqrt{\left( \frac{e^x + e^{-x}}{2} \right)^2} \,dx \\ &= \int_{0}^{t} \frac{e^x + e^{-x}}{2} \,dx \\ &= \left[ \frac{e^x - e^{-x}}{2} \right]_{0}^{t} \\ &= \frac{e^t - e^{-t}}{2} \end{aligned} $$

ここで、$s = -f'(t)$ であることがわかる。

次に、接点 $T$ における接線方向と法線方向の単位ベクトルを求める。 $T$ における接線ベクトルのうち、$x$ 成分が正となる方向ベクトルとして $(1, f'(t))$ がとれる。 $t > 0$ において $f(t) < 0$ であり、このベクトルの大きさは $\sqrt{1 + \{f'(t)\}^2} = -f(t)$ であるから、進行方向の単位接線ベクトル $\vec{e}_1$ は以下のように表せる。

$$ \vec{e}_1 = \frac{1}{-f(t)} (1, f'(t)) $$

また、これに直交し曲線の上側($y > f(x)$ の領域)を向く単位法線ベクトル $\vec{e}_2$ は、$\vec{e}_1$ を反時計回りに $90^\circ$ 回転させたベクトルとして得られる。

$$ \vec{e}_2 = \frac{1}{-f(t)} (-f'(t), 1) $$

$\triangle PQR$ は滑ることなく右に傾いてゆくため、接点 $T$ は正三角形の辺 $QR$ 上を中点 $M$ から $R$ に向かって距離 $s$ だけ移動した点となる。 したがって、ベクトル $\vec{MT}$ は進行方向 $\vec{e}_1$ を用いて $\vec{MT} = s\vec{e}_1$ となり、逆ベクトルの $\vec{TM}$ は以下のようになる。

$$ \vec{TM} = -s\vec{e}_1 $$

さらに、正三角形の中線 $MP$ は $QR$ に垂直であり、長さは $\frac{\sqrt{3}}{2}a$ である。 点 $P$ は曲線の上側にあるため、$\vec{MP}$ の向きは $\vec{e}_2$ と一致する。

$$ \vec{MP} = \frac{\sqrt{3}}{2}a \vec{e}_2 $$

これらを用いて、点 $P$ の位置ベクトル $\vec{OP}$ を求める。

$$ \vec{OP} = \vec{OT} + \vec{TM} + \vec{MP} = \vec{OT} - s\vec{e}_1 + \frac{\sqrt{3}}{2}a \vec{e}_2 $$

位置ベクトルの $y$ 成分に注目して、点 $P$ の $y$ 座標 $y_P$ を計算する。 $\vec{OT}$ の $y$ 成分は $f(t)$、$\vec{e}_1$ の $y$ 成分は $\frac{f'(t)}{-f(t)}$、$\vec{e}_2$ の $y$ 成分は $\frac{1}{-f(t)}$ であるから、

$$ y_P = f(t) - s \left( \frac{f'(t)}{-f(t)} \right) + \frac{\sqrt{3}}{2}a \left( \frac{1}{-f(t)} \right) $$

ここで $s = -f'(t)$ を代入する。

$$ y_P = f(t) - \frac{\{f'(t)\}^2}{f(t)} - \frac{\sqrt{3}a}{2f(t)} = \frac{\{f(t)\}^2 - \{f'(t)\}^2 - \frac{\sqrt{3}}{2}a}{f(t)} $$

前述の通り $\{f(t)\}^2 = 1 + \{f'(t)\}^2$ であるため、$\{f(t)\}^2 - \{f'(t)\}^2 = 1$ が成り立つ。 これを用いて式を整理する。

$$ y_P = \frac{1 - \frac{\sqrt{3}}{2}a}{f(t)} $$

点 $R$ が初めて曲線 $C$ 上にくるまでの間、接点は $QR$ 上を $M$ から $R$ に向かって動くため、$s$ は $0 \le s \le \frac{a}{2}$ の範囲を動く。 このとき $t$ も幅のある区間を動き、分母の $f(t)$ は変化し続ける。 したがって、$y_P$ が一定の値をとるための必要十分条件は、分子が $0$ になることである。

$$ 1 - \frac{\sqrt{3}}{2}a = 0 $$

これを解いて $a$ を求める。

$$ a = \frac{2}{\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{3}}{3} $$

解説

懸垂線(カテナリー曲線)の上を直線が滑らずに転がるときの軌跡に関する問題である。 直線を転がしたときに特定の点が描く軌跡を扱う問題では、曲線の弧長と直線の移動距離が等しいという性質を用いるのが基本である。 本問では、接線方向と法線方向の単位ベクトルを基底にとり、ベクトルの和として位置を追跡することで、煩雑な座標計算を機械的かつ見通しよく処理できる。 双曲線関数に関連する関係式 $\{f(t)\}^2 - \{f'(t)\}^2 = 1$ が背後にあるため、最終的に $t$ に依存しない美しい条件式が導出される。

答え

$$ a = \frac{2\sqrt{3}}{3} $$

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