大阪大学 2024年 理系 第3問 解説

方針・初手
空間内の2直線 $l, m$ について、それぞれの直線上の動点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}$ をベクトルを用いてパラメータ表示する。直線 $\mathrm{PQ}$ が $l, m$ の両方に直交するという条件は、ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ が $l, m$ の両方の方向ベクトルと垂直になることである。この垂直条件から得られる連立方程式が、ただ1組の実数解を持つことを示せばよい。その際、$l$ と $m$ が「ねじれの位置にある(平行ではなく、共有点を持たない)」という条件を利用する。
解法1
直線 $l$ の方向ベクトルを $\vec{u}$、直線 $m$ の方向ベクトルを $\vec{v}$ とする。 直線 $l, m$ はねじれの位置にあるため、互いに平行ではなく、$\vec{u} \neq \vec{0}$, $\vec{v} \neq \vec{0}$ かつ $\vec{u} \neq k\vec{v}$($k$ は実数)である。
直線 $l$ 上に定点 $\mathrm{A}$、直線 $m$ 上に定点 $\mathrm{B}$ をとる。 直線 $l$ 上の点 $\mathrm{P}$、直線 $m$ 上の点 $\mathrm{Q}$ は、実数 $s, t$ を用いて次のように表される。
$$ \overrightarrow{\mathrm{AP}} = s\vec{u} $$
$$ \overrightarrow{\mathrm{BQ}} = t\vec{v} $$
基準となる点を $\mathrm{A}$ とすると、点 $\mathrm{Q}$ の位置ベクトルは $\overrightarrow{\mathrm{AQ}} = \overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\vec{v}$ となるので、ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ は以下のように表される。
$$ \begin{aligned} \overrightarrow{\mathrm{PQ}} &= \overrightarrow{\mathrm{AQ}} - \overrightarrow{\mathrm{AP}} \\ &= \overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\vec{v} - s\vec{u} \end{aligned} $$
直線 $\mathrm{PQ}$ が $l, m$ の両方に直交するための条件は、点 $\mathrm{P}$ と点 $\mathrm{Q}$ が異なる点であり、かつ $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ が $\vec{u}, \vec{v}$ の両方と垂直に交わることである。 $l, m$ はねじれの位置にあり共有点を持たないため、任意の $s, t$ において $\mathrm{P} \neq \mathrm{Q}$ すなわち $\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \neq \vec{0}$ は常に成り立つ。
したがって、直交するための条件は以下の通りとなる。
$$ \begin{cases} \overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{u} = 0 \\ \overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{v} = 0 \end{cases} $$
これらに $\overrightarrow{\mathrm{PQ}} = \overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\vec{v} - s\vec{u}$ を代入する。
$$ \begin{cases} (\overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\vec{v} - s\vec{u}) \cdot \vec{u} = 0 \\ (\overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\vec{v} - s\vec{u}) \cdot \vec{v} = 0 \end{cases} $$
内積を展開して $s, t$ について整理すると、次の連立1次方程式を得る。
$$ \begin{cases} |\vec{u}|^2 s - (\vec{u} \cdot \vec{v}) t = \overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \vec{u} \\ (\vec{u} \cdot \vec{v}) s - |\vec{v}|^2 t = \overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \vec{v} \end{cases} $$
この $s, t$ についての連立方程式がただ1組の解を持つことを示せば、条件を満たす点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}$ がただ1組定まり、直線 $\mathrm{PQ}$ がただ1つ存在することが示される。 連立1次方程式がただ1組の解を持つ条件は、未知数 $s, t$ の係数からなる行列式が $0$ でないこと、すなわち以下が成り立つことである。
$$ |\vec{u}|^2 \times (-|\vec{v}|^2) - \{-(\vec{u} \cdot \vec{v})\} \times (\vec{u} \cdot \vec{v}) \neq 0 $$
整理すると、示すべき条件は次のように書ける。
$$ |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 - (\vec{u} \cdot \vec{v})^2 \neq 0 $$
ここで、$\vec{u}$ と $\vec{v}$ のなす角を $\theta$ とおくと、$\vec{u} \cdot \vec{v} = |\vec{u}||\vec{v}|\cos\theta$ であるから、
$$ \begin{aligned} |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 - (\vec{u} \cdot \vec{v})^2 &= |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 - (|\vec{u}||\vec{v}|\cos\theta)^2 \\ &= |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 (1 - \cos^2\theta) \\ &= |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 \sin^2\theta \end{aligned} $$
$l, m$ はねじれの位置にあるため平行ではなく、$0 < \theta < \pi$ である。 したがって $\sin\theta \neq 0$ であり、$|\vec{u}| \neq 0$, $|\vec{v}| \neq 0$ と合わせて以下が成り立つ。
$$ |\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 \sin^2\theta > 0 $$
これにより $|\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 - (\vec{u} \cdot \vec{v})^2 \neq 0$ が示された。 よって、上の連立方程式を満たす実数 $(s, t)$ の組はただ1つ存在する。 これに対応して、直線 $l, m$ 上の点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}$ がただ1組定まり、$\mathrm{P} \neq \mathrm{Q}$ であることから、2点を通る直線 $\mathrm{PQ}$ がただ1つ定まる。
以上より、$l$ と $m$ の両方に直交する直線がただ1つ存在することが示された。
解説
空間ベクトルを用いた立式と、連立1次方程式の解の存在条件(行列式)を結びつける、数学B・Cにおける典型かつ重要な証明問題である。 「ねじれの位置にある」という幾何学的な条件を、ベクトルの方程式において「方向ベクトルが平行ではない($\vec{u} \not\parallel \vec{v}$)」および「共有点を持たない($\mathrm{P} \neq \mathrm{Q}$)」という数式条件に正しく翻訳できるかがポイントとなる。
$|\vec{u}|^2|\vec{v}|^2 - (\vec{u} \cdot \vec{v})^2 \neq 0$ の証明では、内積の定義を用いて $\sin^2\theta$ を括り出す方法が最も簡明である。コーシー・シュワルツの不等式の等号不成立条件として論じてもよい。 また、大学数学における外積(クロス積)の知識があれば、$\vec{u}$ と $\vec{v}$ の両方に直交するベクトルが $\vec{u} \times \vec{v}$ として一意に定まる(定数倍を除く)ことから、図形的に共通垂線の存在を直感的に捉えることもできる。
答え
ベクトルを用いて直線上の動点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}$ をパラメータ $s, t$ で表し、直交条件から導かれる $s, t$ についての連立1次方程式が、方向ベクトルが平行でないという条件によりただ1組の解を持つことを示した。(証明終了)
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