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東北大学 1976年 文系 第3問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明テーマ/整式の証明
東北大学 1976年 文系 第3問 解説

方針・初手

行列 $P$ についての等式と $\det(P) = ad - bc = 1$ という条件が与えられています。2次正方行列の問題では、ケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数を下げたり、逆行列を消去したりする手法が有効です。

まずはケーリー・ハミルトンの定理を立式し、与えられた等式 $P^2 - dP = P^{-1}$ と連立させて $P^{-1}$ や $P^2$ を消去し、$P$ の1次式を導くことを目指します。

解法1

単位行列を $E = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ 、零行列を $O = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}$ とする。

行列 $P = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ に対して、ケーリー・ハミルトンの定理より

$$ P^2 - (a+d)P + (ad - bc)E = O $$

が成り立つ。条件 $ad - bc = 1$ より、

$$ P^2 - (a+d)P + E = O $$

すなわち

$$ P^2 = (a+d)P - E $$

となる。これを与えられた等式 $P^2 - dP = P^{-1}$ に代入すると、

$$ (a+d)P - E - dP = P^{-1} $$

$$ aP - E = P^{-1} $$

を得る。この両辺に右から $P$ を掛けると、

$$ aP^2 - P = E $$

となる。再びケーリー・ハミルトンの定理 $P^2 = (a+d)P - E$ を代入すると、

$$ a \{(a+d)P - E\} - P = E $$

$$ (a^2 + ad - 1)P = (a+1)E $$

が導かれる。ここで、仮に $a^2 + ad - 1 \neq 0$ とすると、

$$ P = \frac{a+1}{a^2+ad-1}E $$

となり、$P$ は $E$ の実数倍($P = kE$ とおく)となる。 $P = kE$ のとき、$a=k, b=0, c=0, d=k$ であり、条件 $ad - bc = 1$ に代入すると $k^2 = 1$ となるため、$k = 1$ または $k = -1$ である。

(i) $k = 1$ すなわち $P = E$ のとき $a=1, d=1$ である。与えられた等式 $P^2 - dP = P^{-1}$ に代入すると、

$$ E^2 - 1 \cdot E = E^{-1} $$

$$ O = E $$

となり、矛盾する。

(ii) $k = -1$ すなわち $P = -E$ のとき $a=-1, d=-1$ である。与えられた等式に代入すると、

$$ (-E)^2 - (-1) \cdot (-E) = (-E)^{-1} $$

$$ E - E = -E $$

$$ O = -E $$

となり、矛盾する。

したがって、$P$ は $E$ の実数倍にはならない。 ゆえに、等式 $(a^2 + ad - 1)P = (a+1)E$ が成り立つためには、

$$ \begin{cases} a^2 + ad - 1 = 0 \\ a + 1 = 0 \end{cases} $$

でなければならない。 第2式より $a = -1$ であり、これを第1式に代入すると

$$ (-1)^2 + (-1) \cdot d - 1 = 0 $$

$$ d = 0 $$

を得る。 $a = -1, d = 0$ のとき、ケーリー・ハミルトンの定理の式 $P^2 - (a+d)P + E = O$ は

$$ P^2 + P + E = O $$

となる。この両辺に左から $(P - E)$ を掛けると、

$$ (P - E)(P^2 + P + E) = O $$

$$ P^3 - E^3 = O $$

$$ P^3 = E $$

となり、$P^3$ が求まる。

解法2

単位行列を $E = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ とする。

与えられた等式 $P^2 - dP = P^{-1}$ の両辺に左から $P$ を掛けると、

$$ P^3 - dP^2 = E $$

$$ P^3 = dP^2 + E $$

となる。一方、条件 $ad - bc = 1$ とケーリー・ハミルトンの定理より、

$$ P^2 - (a+d)P + E = O $$

$$ P^2 = (a+d)P - E $$

が成り立つ。これを $P^3 = dP^2 + E$ に代入すると、

$$ P^3 = d \{(a+d)P - E\} + E $$

$$ P^3 = d(a+d)P + (1-d)E $$

を得る。 また、ケーリー・ハミルトンの定理の両辺に $P$ を掛けると、

$$ P^3 - (a+d)P^2 + P = O $$

$$ P^3 = (a+d)P^2 - P $$

となる。これに再び $P^2 = (a+d)P - E$ を代入すると、

$$ P^3 = (a+d) \{(a+d)P - E\} - P $$

$$ P^3 = \{(a+d)^2 - 1\}P - (a+d)E $$

を得る。 2通りの方法で導いた $P^3$ の式を等置すると、

$$ d(a+d)P + (1-d)E = \{(a+d)^2 - 1\}P - (a+d)E $$

$$ \{(a+d)^2 - 1 - d(a+d)\}P = \{1 - d + (a+d)\}E $$

$$ \{a(a+d) - 1\}P = (a+1)E $$

$$ (a^2 + ad - 1)P = (a+1)E $$

となる。以降の議論は解法1と同様であり、$P$ が $E$ の実数倍でないことから $a = -1, d = 0$ が導かれる。 その後、$P^2 + P + E = O$ から $P^3 = E$ を得る手順も同じである。

解説

2次正方行列の累乗や逆行列が絡む方程式では、「ケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数を下げる」のが定石です。解法1は $P^{-1}$ を消去するアプローチ、解法2は $P^3$ を2通りに表して比較するアプローチですが、どちらも最終的に $xP = yE$ という形の方程式に行き着きます。

ここで最も注意すべき点は、$xP = yE$ から直ちに $x=0$ かつ $y=0$ と係数比較してはいけないことです。行列 $P$ が単位行列の定数倍である可能性($P=kE$)を考慮し、その場合が条件に反して不適であることをきちんと論証する必要があります。この論証の有無が、記述式試験における大きな減点ポイントになり得るため注意しましょう。

答え

$$ P^3 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} $$

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