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東北大学 2000年 理系 第3問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明テーマ/整式の証明
東北大学 2000年 理系 第3問 解説

方針・初手

(1) は逆関数の定義に従って $y=f(x)$ を $x$ について解く。 (2) と (3) は、(1)で求めた逆関数と関数を直接比較するか、一次分数関数を行列に対応させて処理する方針が考えられる。

解法1

(1) $y = \frac{ax+b}{cx+d}$ とおく。 $y(cx+d) = ax+b$ より、 $$(cy-a)x = -dy+b$$ $cy-a = 0$ と仮定すると、上式より $-dy+b = 0$ となる。このとき $y = \frac{a}{c}$ を代入すると、$-d\frac{a}{c}+b = 0$ より $ad-bc = 0$ となり、問題の条件 $ad-bc \neq 0$ に反する。 よって $cy-a \neq 0$ であり、$x = \frac{-dy+b}{cy-a}$ となる。 $x$ と $y$ を入れ替えて、逆関数は $$f^{-1}(x) = \frac{-dx+b}{cx-a}$$

(2) $f^{-1}(x) = f(x)$ より、 $$\frac{-dx+b}{cx-a} = \frac{ax+b}{cx+d}$$ これが恒等的に成り立つ条件は、定数 $k \neq 0$ が存在して、 $$\begin{cases} -d = ka \\ b = kb \\ c = kc \\ -a = kd \end{cases}$$ が成り立つことである。

(i) $c \neq 0$ のとき $c = kc$ より $k=1$。このとき第1式と第4式より $-d = a, -a = d$ となり $a+d = 0$。第2式の $b = b$ は常に成り立つ。

(ii) $c = 0$ のとき $ad-bc \neq 0$ より $ad \neq 0$ すなわち $a \neq 0$ かつ $d \neq 0$。 このとき $f(x) = \frac{ax+b}{d}$。 $f(x) \neq x$ より、$a \neq d$ または $b \neq 0$ である。 逆関数は $f^{-1}(x) = \frac{-dx+b}{-a} = \frac{d}{a}x - \frac{b}{a}$。 $f^{-1}(x) = f(x)$ より、$\frac{d}{a}x - \frac{b}{a} = \frac{a}{d}x + \frac{b}{d}$。 係数を比較して、$\frac{d}{a} = \frac{a}{d}$ かつ $-\frac{b}{a} = \frac{b}{d}$。 $\frac{d}{a} = \frac{a}{d}$ より $a^2 = d^2$、よって $a = d$ または $a = -d$。 $a = d$ のとき、$-\frac{b}{a} = \frac{b}{a}$ より $b = 0$。これは $a=d$ かつ $b=0$ となり $f(x) \neq x$ に反するため不適。 $a = -d$ のとき、$-\frac{b}{a} = \frac{b}{d}$ は $\frac{b}{d} = \frac{b}{d}$ となり成り立つ。このとき $a+d = 0$。

以上より、求める関係式は $a+d = 0$。

(3) $f^{-1}(x) = f(f(x))$ の両辺を $f$ で合成すると、$x = f(f(f(x)))$ となる。 関数 $f(f(x))$ を計算すると、 $$f(f(x)) = \frac{a \frac{ax+b}{cx+d} + b}{c \frac{ax+b}{cx+d} + d} = \frac{a(ax+b)+b(cx+d)}{c(ax+b)+d(cx+d)} = \frac{(a^2+bc)x+b(a+d)}{c(a+d)x+(bc+d^2)}$$ ここで、$f(f(x)) = f^{-1}(x)$ が恒等的に成り立つ条件を考える。 $$\frac{(a^2+bc)x+b(a+d)}{c(a+d)x+(bc+d^2)} = \frac{-dx+b}{cx-a}$$ 定数 $k \neq 0$ が存在して、 $$\begin{cases} a^2+bc = -kd \\ b(a+d) = kb \\ c(a+d) = kc \\ bc+d^2 = -ka \end{cases}$$ が成り立つ。

(i) $b \neq 0$ または $c \neq 0$ のとき 第2式または第3式から $k = a+d$ を得る。これを第1式と第4式に代入すると、 $a^2+bc = -(a+d)d \iff a^2+ad+d^2+bc = 0$ $bc+d^2 = -(a+d)a \iff a^2+ad+d^2+bc = 0$ これは共通の式 $(a+d)^2 = ad-bc$ を与える。

(ii) $b = 0$ かつ $c = 0$ のとき $ad \neq 0$ より $a \neq 0, d \neq 0$。 $f(x) = \frac{a}{d}x$ であり、$f(x) \neq x$ より $a \neq d$。 $f^{-1}(x) = \frac{d}{a}x$、$f(f(x)) = \frac{a^2}{d^2}x$。 これらが等しいので、$\frac{d}{a} = \frac{a^2}{d^2}$ すなわち $a^3 = d^3$。 $a, d$ は実数であるから $a=d$ となり、$f(x) \neq x$ に矛盾する。よってこの場合は不適である。

以上より、求める関係式は $a^2+ad+d^2+bc = 0$。

解法2

(1) 一次分数変換と行列の対応を用いる。 関数 $f(x) = \frac{ax+b}{cx+d}$ に対して、行列 $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ を対応させる。 $ad-bc \neq 0$ より $A$ は正則であり、逆関数 $f^{-1}(x)$ は $A^{-1} = \frac{1}{ad-bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}$ に対応する。 よって、係数の定数倍の違いを無視して $$f^{-1}(x) = \frac{dx-b}{-cx+a} = \frac{-dx+b}{cx-a}$$

(2) $f^{-1}(x) = f(x)$ より、$x = f(f(x))$ である。 $f(f(x))$ に対応する行列は $A^2$ である。恒等変換 $x$ に対応する行列は単位行列 $I$ の定数倍であるから、 $$A^2 = kI$$ (ただし $k \neq 0$)とおける。 ケーリー・ハミルトンの定理より、$A^2 - (a+d)A + (ad-bc)I = O$ であるから、 $$kI - (a+d)A + (ad-bc)I = O$$ $$(a+d)A = (k+ad-bc)I$$ $f(x) \neq x$ より $A$ は $I$ の定数倍ではないため、$A$ の係数が $0$ となる。 よって、$a+d = 0$ である。

(3) $f^{-1}(x) = f(f(x))$ の両辺を $f$ で合成すると $x = f(f(f(x)))$ となる。 これに対応する行列の条件は、$A^3 = lI$ ($l \neq 0$)となることである。 ケーリー・ハミルトンの定理 $A^2 - (a+d)A + (ad-bc)I = O$ の両辺に $A$ を掛けて、 $$A^3 - (a+d)A^2 + (ad-bc)A = O$$ $A^3 = lI$ と $A^2 = (a+d)A - (ad-bc)I$ を代入して、 $$lI - (a+d)\{ (a+d)A - (ad-bc)I \} + (ad-bc)A = O$$ $$\{ ad-bc - (a+d)^2 \}A + \{ l + (a+d)(ad-bc) \}I = O$$ $A$ は $I$ の定数倍ではないため、係数がともに $0$ となる必要がある。 よって、 $$ad-bc - (a+d)^2 = 0$$ すなわち、$a^2+ad+d^2+bc = 0$ が求める関係式である。

解説

一次分数関数の逆関数や合成関数を扱う典型問題である。 関数が等しいという条件 $\frac{ax+b}{cx+d} = \frac{px+q}{rx+s}$ は、「係数が定数倍で一致する」すなわち $a=kp, b=kq, c=kr, d=ks$ となることである。分母を払って係数比較しても同値な結果が得られる。 解法2で示したように、一次分数変換は行列の積と対応させると非常に見通しが良くなる。$f(x) \neq x$ は行列 $A$ が単位行列の定数倍ではないことに対応し、ケーリー・ハミルトンの定理を用いることでスムーズに条件式を導ける。

答え

(1) $f^{-1}(x) = \frac{-dx+b}{cx-a}$ (2) $a+d = 0$ (3) $a^2+ad+d^2+bc = 0$

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