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東京工業大学 1969年 理系 第4問 解説

旧課程/行列・一次変換数学B/数列数学3/極限テーマ/漸化式テーマ/図形総合
東京工業大学 1969年 理系 第4問 解説

方針・初手

領域を変換する問題では、変換式をベクトルによる一次結合として捉えるか、一次変換(行列)の性質を利用して面積の拡大率を考えるのが定石である。まずは変換後の領域 $S_n$ の面積を $a_n$ と $a_{n-1}$ を用いて表し、面積が $2$ であるという条件から漸化式を導く。その後、得られた漸化式から極限を計算する。

解法1

与えられた関係式は、ベクトルを用いて次のように表すことができる。

$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = x \begin{pmatrix} a_n \\ a_{n-1} \end{pmatrix} + y \begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix} $$

ここで、$\vec{u} = \begin{pmatrix} a_n \\ a_{n-1} \end{pmatrix}$、$\vec{v} = \begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix}$ とおき、点 $(X, Y)$ の位置ベクトルを $\vec{P}$ とすると、

$$ \vec{P} = x\vec{u} + y\vec{v} $$

と表せる。

点 $(x, y)$ の動く範囲 $D: |x| + |y| \leqq 1$ は、以下の4つの領域に分割できる。

(i) $x \geqq 0, y \geqq 0, x+y \leqq 1$

(ii) $x < 0, y \geqq 0, -x+y \leqq 1$

(iii) $x < 0, y < 0, -x-y \leqq 1$

(iv) $x \geqq 0, y < 0, x-y \leqq 1$

領域 (i) を $(x, y)$ が動くとき、$\vec{P}$ は原点 $O$ と $2$ 点 $A(\vec{u}), B(\vec{v})$ を頂点とする三角形($\triangle OAB$)の周および内部を動く。

同様に、領域 (ii), (iii), (iv) に対する $\vec{P}$ の動く範囲は、それぞれ $\triangle OA'B$, $\triangle OA'B'$, $\triangle OAB'$ (ただし $A'(-\vec{u}), B'(-\vec{v})$)の周および内部となる。

したがって、点 $(X, Y)$ の存在する範囲 $S_n$ は、これら4つの三角形を合わせた、4点 $A, B, A', B'$ を頂点とする平行四辺形の周および内部である。

この平行四辺形の面積は $\triangle OAB$ の面積の $4$ 倍である。

$\triangle OAB$ の面積は、

$$ \triangle OAB = \frac{1}{2} |a_n \cdot 3 - a_{n-1} \cdot 2| = \frac{1}{2} |3a_n - 2a_{n-1}| $$

問題の条件より $3a_n > 2a_{n-1}$ であるから、絶対値記号の中身は正であり、

$$ \triangle OAB = \frac{1}{2} (3a_n - 2a_{n-1}) $$

となる。

したがって、$S_n$ の面積は、

$$ 4 \times \frac{1}{2} (3a_n - 2a_{n-1}) = 2(3a_n - 2a_{n-1}) $$

これがすべての $n$ に対して $2$ であるから、

$$ 2(3a_n - 2a_{n-1}) = 2 $$

$$ 3a_n - 2a_{n-1} = 1 $$

この式を変形すると、

$$ a_n - 1 = \frac{2}{3} (a_{n-1} - 1) $$

となる。

数列 $\{a_n - 1\}$ は公比 $\frac{2}{3}$ の等比数列であるから、$n \geqq 2$ において、

$$ a_n - 1 = \left(\frac{2}{3}\right)^{n-2} (a_2 - 1) $$

$$ a_n = 1 + \left(\frac{2}{3}\right)^{n-2} (a_2 - 1) $$

ここで、$n \to \infty$ のとき $\left(\frac{2}{3}\right)^{n-2} \to 0$ であるから、初項側の値によらず、

$$ \lim_{n \to \infty} a_n = 1 $$

解法2

一次変換を用いた解法を示す。

$x, y$ から $X, Y$ への変換は、行列を用いて次のように表せる。

$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a_n & 2 \\ a_{n-1} & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$

この一次変換を表す行列を $A_n$ とおくと、行列式 $\det A_n$ は、

$$ \det A_n = a_n \cdot 3 - 2 \cdot a_{n-1} = 3a_n - 2a_{n-1} $$

条件より $3a_n > 2a_{n-1}$ であるから、$\det A_n > 0$ である。

一般に、行列 $A$ による一次変換によって、図形の面積は $|\det A|$ 倍になる。

点 $(x, y)$ の動く範囲である $|x| + |y| \leqq 1$ が表す領域は、対角線の長さが $2$ の正方形であり、その面積は、

$$ \frac{1}{2} \times 2 \times 2 = 2 $$

である。

したがって、変換後の図形 $S_n$ の面積は、

$$ |\det A_n| \times 2 = 2(3a_n - 2a_{n-1}) $$

となる。

問題の条件より、$S_n$ の面積は $2$ であるから、

$$ 2(3a_n - 2a_{n-1}) = 2 $$

$$ 3a_n - 2a_{n-1} = 1 $$

以下、解法1と同様にして漸化式を解き、$\lim_{n \to \infty} a_n = 1$ を得る。

解説

領域の変換に関する典型問題である。与えられた関係式をベクトルや行列を用いて解釈することで、図形的なイメージを容易に掴むことができる。

ベクトルを用いる場合(解法1)は、元の領域を分割して境界がどのように移るかを追跡すると分かりやすい。行列を用いる場合(解法2)は、一次変換の「面積拡大率が $|\det A|$ になる」という事実を用いると計算が非常に簡潔に済む。どちらの手法も応用範囲が広いため、両方の見方を身につけておきたい。

また、漸化式を解く過程で $a_2$ などの具体的な値が定まらないが、公比の絶対値が $1$ より小さいため、極限をとることで定数部分のみが残る点も頻出の処理である。

答え

$$ \lim_{n \to \infty} a_n = 1 $$

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