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東京工業大学 1972年 理系 第3問 解説

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東京工業大学 1972年 理系 第3問 解説

方針・初手

(1) 二項係数の性質 $_{n}\text{C}_{r} = _{n}\text{C}_{n-r}$ を用いて、変化する変数($l$ や $m$)を一方に寄せる。その後、一方の変数を $x$ とおいた関数 $f(x)$ の単調増加性を示すことで、大小関係を判定する。

(2) $F(x)$ を3次式 $(x-a)^3$ で割ったときの余り $R(x)$ は2次以下の多項式である。そこで、$R(x)$ を $x$ の降べきの順ではなく、$(x-a)$ の累乗を用いて $R(x) = p(x-a)^2 + q(x-a) + r$ とおくのが定石である。その後、割り算の等式を両辺 $x$ で微分し、$x=a$ を代入していく。

解法1

(1) 二項係数の性質 $_{p}\text{C}_{q} = _{p}\text{C}_{p-q}$ を用いると、

$$ _{l+n}\text{C}_{l} = _{l+n}\text{C}_{(l+n)-l} = _{l+n}\text{C}_{n} $$

$$ _{m+n}\text{C}_{m} = _{m+n}\text{C}_{(m+n)-m} = _{m+n}\text{C}_{n} $$

と表せる。ここで、正の整数 $x$ を変数とする関数 $f(x)$ を次のように定義する。

$$ f(x) = _{x+n}\text{C}_{n} $$

$f(x+1)$ と $f(x)$ の差を計算すると、

$$ \begin{aligned} f(x+1) - f(x) &= _{x+n+1}\text{C}_{n} - _{x+n}\text{C}_{n} \\ &= \frac{(x+n+1)!}{n!(x+1)!} - \frac{(x+n)!}{n!x!} \\ &= \frac{(x+n)!}{n!(x+1)!} \{ (x+n+1) - (x+1) \} \\ &= \frac{(x+n)!}{n!(x+1)!} \cdot n \\ &= \frac{(x+n)!}{(n-1)!(x+1)!} \end{aligned} $$

となる。$x, n$ は正の整数であるから、この式の値は明らかに正である。 したがって、$f(x+1) - f(x) > 0$ すなわち $f(x+1) > f(x)$ が成り立ち、関数 $f(x)$ は正の整数 $x$ において単調増加であることがわかる。

与えられた条件 $_{l+n}\text{C}_{l} > _{m+n}\text{C}_{m}$ は、$f(l) > f(m)$ と書き換えられる。 $f(x)$ が単調増加であることから、この不等式が成り立つための条件は $l > m$ である。

(2) $F(x)$ を3次式 $(x-a)^3$ で割ったときの商を $Q(x)$ とすると、余り $R(x)$ は2次以下の多項式である。 実数の定数 $p, q, r$ を用いて、$R(x)$ を次のように表す。

$$ R(x) = p(x-a)^2 + q(x-a) + r $$

このとき、剰余の定理より以下の式が $x$ についての恒等式として成り立つ。

$$ F(x) = (x-a)^3 Q(x) + p(x-a)^2 + q(x-a) + r \quad \cdots \text{①} $$

①の両辺を $x$ で微分すると、積の微分法より

$$ F'(x) = 3(x-a)^2 Q(x) + (x-a)^3 Q'(x) + 2p(x-a) + q \quad \cdots \text{②} $$

さらに、②の両辺を $x$ で微分すると

$$ \begin{aligned} F''(x) &= 6(x-a) Q(x) + 3(x-a)^2 Q'(x) + 3(x-a)^2 Q'(x) + (x-a)^3 Q''(x) + 2p \\ &= (x-a) \{ 6Q(x) + 12(x-a)Q'(x) + (x-a)^2 Q''(x) \} + 2p \quad \cdots \text{③} \end{aligned} $$

となる。 恒等式 ①、②、③ のそれぞれに $x=a$ を代入すると、$(x-a)$ を因数に持つ項はすべて $0$ になるため、以下の連立方程式が得られる。

$$ \begin{aligned} F(a) &= r \\ F'(a) &= q \\ F''(a) &= 2p \end{aligned} $$

これらを $p, q, r$ について解くと、

$$ p = \frac{1}{2}F''(a), \quad q = F'(a), \quad r = F(a) $$

よって、求める余り $R(x)$ は以下のようになる。

$$ R(x) = \frac{1}{2}F''(a)(x-a)^2 + F'(a)(x-a) + F(a) $$

解説

(1) は、二項係数の対称性を利用して式を整理したのち、数列(あるいは関数)の単調性を調べる典型的な問題である。単調性を示す際は、差 $f(x+1) - f(x) > 0$ を計算するか、比 $\frac{f(x+1)}{f(x)} > 1$ を計算するのが基本手法となる。

(2) は、多項式の微分と剰余に関する重要テーマであり、背景には「テイラー展開」がある。多項式を特定の $(x-a)$ の累乗で展開したときの各係数が、その点での微分係数を用いて表現できるという性質を示している。恒等式を繰り返し微分して特定の値を代入する手法は、高次式で割った余りを求める問題において非常に有効である。

答え

(1) $l > m$

(2) $R(x) = \frac{1}{2}F''(a)(x-a)^2 + F'(a)(x-a) + F(a)$

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