東京工業大学 2014年 理系 第2問 解説

方針・初手
不等式の証明および成立条件を求める問題である。(1) は差をとって微分し、関数の増減を調べる定石に従う。式の形に注目して両辺に $e^{-\frac{t}{2}}$ を掛けると、計算が少し見やすくなる。(2) は「すべての $t>0$ で成り立つ」ための必要条件を、端点である $t \to +0$ 付近の関数の振る舞いから絞り込むのがポイントである。その後、(1) の結果を利用して十分性を確認する。
解法1
(1)
与えられた不等式において $a=2$ とした不等式
$$ \frac{e^t - 1}{t} \geqq e^{\frac{t}{2}} $$
は、$t > 0$ であるから両辺に $t$ を掛けて
$$ e^t - 1 \geqq t e^{\frac{t}{2}} $$
と同値である。さらに両辺に $e^{-\frac{t}{2}} > 0$ を掛けて整理すると、
$$ e^{\frac{t}{2}} - e^{-\frac{t}{2}} - t \geqq 0 $$
となる。ここで、左辺を $f(t)$ とおく。
$$ f(t) = e^{\frac{t}{2}} - e^{-\frac{t}{2}} - t $$
$t \geqq 0$ において $f(t)$ を微分すると、
$$ f'(t) = \frac{1}{2} e^{\frac{t}{2}} + \frac{1}{2} e^{-\frac{t}{2}} - 1 $$
これを平方完成の形に変形すると、
$$ f'(t) = \frac{1}{2} \left( e^{\frac{t}{4}} - e^{-\frac{t}{4}} \right)^2 $$
となる。$t > 0$ のとき $e^{\frac{t}{4}} > 1 > e^{-\frac{t}{4}}$ であるから、$e^{\frac{t}{4}} - e^{-\frac{t}{4}} > 0$ となり、$f'(t) > 0$ が成り立つ。
したがって、$f(t)$ は $t \geqq 0$ において単調に増加する。
$f(0) = 1 - 1 - 0 = 0$ であるから、$t > 0$ において $f(t) > 0$ すなわち $f(t) \geqq 0$ が成り立つ。
以上より、すべての $t > 0$ に対して元の不等式が成り立つことが示された。
(2)
すべての $t > 0$ に対して不等式 (*) が成り立つことは、$t > 0$ より
$$ e^t - 1 - t e^{\frac{t}{a}} \geqq 0 $$
が成り立つことと同値である。
$$ g(t) = e^t - 1 - t e^{\frac{t}{a}} $$
とおく。仮定より、すべての $t > 0$ において $g(t) \geqq 0$ が成り立つ。
$g(t)$ を $t$ で微分していくと、
$$ g'(t) = e^t - \left( 1 \cdot e^{\frac{t}{a}} + t \cdot \frac{1}{a} e^{\frac{t}{a}} \right) = e^t - \left( 1 + \frac{t}{a} \right) e^{\frac{t}{a}} $$
$$ g''(t) = e^t - \left\{ \frac{1}{a} e^{\frac{t}{a}} + \left( 1 + \frac{t}{a} \right) \frac{1}{a} e^{\frac{t}{a}} \right\} = e^t - \frac{t+2a}{a^2} e^{\frac{t}{a}} $$
となる。ここで、$t=0$ を代入すると、
$$ g(0) = 1 - 1 - 0 = 0 $$
$$ g'(0) = 1 - (1+0) \cdot 1 = 0 $$
$$ g''(0) = 1 - \frac{2a}{a^2} = 1 - \frac{2}{a} $$
である。
もし $g''(0) < 0$ であると仮定すると、$g''(t)$ は連続関数であるため、ある $\delta > 0$ が存在して、$0 < t < \delta$ を満たすすべての $t$ について $g''(t) < 0$ となる。
このとき、$g'(t)$ は $0 \leqq t < \delta$ において単調に減少する。$g'(0) = 0$ であるから、$0 < t < \delta$ において $g'(t) < 0$ となる。
さらに、これより $g(t)$ は $0 \leqq t < \delta$ において単調に減少する。$g(0) = 0$ であるから、$0 < t < \delta$ において $g(t) < 0$ となる。
しかし、これは「すべての $t > 0$ において $g(t) \geqq 0$ である」という前提に矛盾する。
したがって、$g''(0) \geqq 0$ でなければならない。
$$ 1 - \frac{2}{a} \geqq 0 $$
$a > 1$ より $a > 0$ であるから、両辺に $a$ を掛けて
$$ a - 2 \geqq 0 \quad \therefore a \geqq 2 $$
が必要である。
逆に $a \geqq 2$ のとき、$t > 0$ において $\frac{t}{a} \leqq \frac{t}{2}$ である。
底 $e > 1$ より、$e^{\frac{t}{a}} \leqq e^{\frac{t}{2}}$ が成り立つ。
$t > 0$ より両辺に $t$ を掛けて、
$$ t e^{\frac{t}{a}} \leqq t e^{\frac{t}{2}} $$
これと (1) で証明した $e^t - 1 \geqq t e^{\frac{t}{2}}$ を組み合わせると、
$$ e^t - 1 \geqq t e^{\frac{t}{2}} \geqq t e^{\frac{t}{a}} $$
よって
$$ e^t - 1 \geqq t e^{\frac{t}{a}} $$
となり、$t > 0$ で割ることで元の不等式 (*) がすべての $t > 0$ で成り立つことがわかる。
以上より、求める $a$ の範囲は $a \geqq 2$ である。
解法2
(1)の別解
両辺に $e^{-\frac{t}{2}}$ を掛けずに、そのまま関数の増減を調べる。
不等式 (*) は $t > 0$ のとき $e^t - 1 - t e^{\frac{t}{2}} \geqq 0$ と同値である。
$$ h_1(t) = e^t - 1 - t e^{\frac{t}{2}} $$
とおく。$t \geqq 0$ において微分すると、
$$ h_1'(t) = e^t - \left( e^{\frac{t}{2}} + t \cdot \frac{1}{2} e^{\frac{t}{2}} \right) = e^{\frac{t}{2}} \left( e^{\frac{t}{2}} - 1 - \frac{t}{2} \right) $$
ここでさらに $h_2(t) = e^{\frac{t}{2}} - 1 - \frac{t}{2}$ とおいて微分すると、
$$ h_2'(t) = \frac{1}{2} e^{\frac{t}{2}} - \frac{1}{2} = \frac{1}{2} \left( e^{\frac{t}{2}} - 1 \right) $$
$t > 0$ のとき $e^{\frac{t}{2}} > 1$ であるから、$h_2'(t) > 0$ となる。
したがって $h_2(t)$ は単調に増加し、$h_2(0) = 0$ より $t > 0$ のとき $h_2(t) > 0$ である。
これより、$t > 0$ のとき $h_1'(t) = e^{\frac{t}{2}} h_2(t) > 0$ となるため、$h_1(t)$ も単調に増加する。
$h_1(0) = 0$ より、$t > 0$ のとき $h_1(t) > 0$ すなわち $h_1(t) \geqq 0$ が成り立つ。
以上より、題意は示された。
解説
不等式が「常に成り立つ」ための条件を求める問題では、必要条件からパラメータの範囲を絞り込み、その後十分性を確認する論法が強力である。
本問では $t \to +0$ 付近の挙動がクリティカルになる。関数 $g(t)$ について、$g(0)=0$ かつ $g'(0)=0$ であるため、もし $g''(0) < 0$ ならば原点のすぐ右側で $g(t) < 0$ となってしまうという「連続関数と微分の性質」を用いた背理法は、難関大で頻出の厳密な論法である。
十分性の確認については、(1) で $a=2$ のときの成立が示されていることを巧みに利用すると、計算を大幅に省略できる。
答え
(1)
すべての $t>0$ に対して
$$ e^t - 1 \ge t e^{t/2} $$
が成り立つ。
(2)
$a \geqq 2$
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