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東京大学 1963年 文系 第2問 解説

数学2/図形と式数学1/図形計量テーマ/軌跡・領域テーマ/面積・体積
東京大学 1963年 文系 第2問 解説

方針・初手

動点 $Q, S$ を介して定められた点 $R$ の条件を、定点 $P$ と定直線 $l$ からの距離の条件としてそれぞれ独立に捉える。$PQ, QR$ の長さから、点 $P$ と点 $R$ の距離のとりうる範囲(三角不等式)を求め、$RS$ の長さから、直線 $l$ と点 $R$ の距離のとりうる範囲を求める。その後、それらの共通部分を図示し、面積を計算する。

解法1

直線 $l$ を $x$ 軸($y=0$)とし、定点 $P$ が $y$ 軸上にあるように座標系を設定する。 $P$ から $l$ までの距離は $\sqrt{3}+1$ であるから、$P(0, \sqrt{3}+1)$ とおける。 動点 $R$ の座標を $(x, y)$ とする。

点 $R$ が存在するための条件を、2つの独立した条件に分けて考える。

(i) 点 $P$ との距離に関する条件 点 $Q$ は $P$ を中心とする半径 $2+\sqrt{2}$ の円周上にあり、点 $R$ は $Q$ を中心とする半径 $2-\sqrt{2}$ の円周上にある。 したがって、$\vec{PR} = \vec{PQ} + \vec{QR}$ と表せる。 三角不等式より、線分 $PR$ の長さについて以下が成り立つ。

$$ | |\vec{PQ}| - |\vec{QR}| | \le |\vec{PR}| \le |\vec{PQ}| + |\vec{QR}| $$

$|\vec{PQ}| = 2+\sqrt{2}$、$|\vec{QR}| = 2-\sqrt{2}$ であるから、

$$ 2\sqrt{2} \le PR \le 4 $$

逆に、この不等式を満たす任意の点 $R$ に対して、辺の長さが $2+\sqrt{2}, 2-\sqrt{2}, PR$ となる三角形(退化を含む)を構成できるため、条件を満たす点 $Q$ が必ず存在する。 これを座標で表すと、以下の不等式となる。

$$ 8 \le x^2 + (y - \sqrt{3} - 1)^2 \le 16 \quad \cdots \text{①} $$

(ii) 直線 $l$ との距離に関する条件 点 $S$ は直線 $l$ 上にあり、$RS = \sqrt{3}-1$ である。 点 $R$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、直角三角形(または線分)$RHS$ において $RH \le RS$ が成り立つため、

$$ RH \le \sqrt{3}-1 $$

逆に、この条件を満たす任意の点 $R$ に対して、直角三角形の存在条件より斜辺が $\sqrt{3}-1$、高さが $RH$ となるように直線 $l$ 上に点 $S$ をとることができる。 点 $R$ から $x$ 軸までの距離は $|y|$ であるから、

$$ |y| \le \sqrt{3}-1 $$

すなわち、

$$ 1-\sqrt{3} \le y \le \sqrt{3}-1 \quad \cdots \text{②} $$

領域の図示と面積計算 点 $R$ の動きうる範囲は、不等式①と②を同時に満たす領域である。 見通しを良くするため、$X = x, Y = y - (\sqrt{3}+1)$ とおき、領域を $Y$ 軸方向に $-(\sqrt{3}+1)$ 平行移動する。 移動後の領域 $D$ は、

$$ \begin{cases} 8 \le X^2 + Y^2 \le 16 \\ -2\sqrt{3} \le Y \le -2 \end{cases} $$

境界となる円を $C_1: X^2+Y^2=8$(内円)、$C_2: X^2+Y^2=16$(外円)、直線を $L_1: Y=-2$、$L_2: Y=-2\sqrt{3}$ とする。 交点を調べると、 $C_1$ と $L_1$ の交点:$X^2 + 4 = 8$ より $X = \pm 2$。よって $(\pm 2, -2)$。 $C_1$ と $L_2$ の交点は存在しない($C_1$ の最下点は $Y = -2\sqrt{2}$ であり、$L_2$ より上にある)。 $C_2$ と $L_1$ の交点:$X^2 + 4 = 16$ より $X = \pm 2\sqrt{3}$。よって $(\pm 2\sqrt{3}, -2)$。 $C_2$ と $L_2$ の交点:$X^2 + 12 = 16$ より $X = \pm 2$。よって $(\pm 2, -2\sqrt{3})$。

領域 $D$ は $Y$ 軸に関して対称であるため、$X \ge 0$ の部分の面積を求めて2倍する。 面積 $S$ は、$Y$ 軸方向の積分を用いて次のように表せる。

$$ \frac{S}{2} = \int_{-2\sqrt{3}}^{-2} \sqrt{16-Y^2} dY - \int_{-2\sqrt{2}}^{-2} \sqrt{8-Y^2} dY $$

第1項の積分は $Y = 4\sin\theta$ と置換する($dY = 4\cos\theta d\theta$)。

$$ \begin{aligned} \int_{-2\sqrt{3}}^{-2} \sqrt{16-Y^2} dY &= \int_{-\frac{\pi}{3}}^{-\frac{\pi}{6}} 16\cos^2\theta d\theta \\ &= 8 \int_{-\frac{\pi}{3}}^{-\frac{\pi}{6}} (1 + \cos 2\theta) d\theta \\ &= 8 \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta \right]_{-\frac{\pi}{3}}^{-\frac{\pi}{6}} \\ &= 8 \left( \left(-\frac{\pi}{6} - \frac{\sqrt{3}}{4}\right) - \left(-\frac{\pi}{3} - \frac{\sqrt{3}}{4}\right) \right) \\ &= 8 \left( \frac{\pi}{6} \right) = \frac{4\pi}{3} \end{aligned} $$

第2項の積分は $Y = 2\sqrt{2}\sin\theta$ と置換する($dY = 2\sqrt{2}\cos\theta d\theta$)。

$$ \begin{aligned} \int_{-2\sqrt{2}}^{-2} \sqrt{8-Y^2} dY &= \int_{-\frac{\pi}{2}}^{-\frac{\pi}{4}} 8\cos^2\theta d\theta \\ &= 4 \int_{-\frac{\pi}{2}}^{-\frac{\pi}{4}} (1 + \cos 2\theta) d\theta \\ &= 4 \left[ \theta + \frac{1}{2}\sin 2\theta \right]_{-\frac{\pi}{2}}^{-\frac{\pi}{4}} \\ &= 4 \left( \left(-\frac{\pi}{4} - \frac{1}{2}\right) - \left(-\frac{\pi}{2} + 0\right) \right) \\ &= 4 \left( \frac{\pi}{4} - \frac{1}{2} \right) = \pi - 2 \end{aligned} $$

したがって、求める面積 $S$ は、

$$ S = 2 \left( \frac{4\pi}{3} - (\pi - 2) \right) = \frac{2\pi}{3} + 4 $$

解説

動点 $Q, S$ の存在条件を「他の変数を消去して $R$ の条件のみを残す」という軌跡・領域の定石に従って処理する問題である。 点 $Q$ の条件は「2円の交点が存在する条件」すなわち三角不等式に帰着し、点 $S$ の条件は「点から直線までの距離」に帰着する。図示においては境界線の交点を正確に把握し、面積計算では図形の対称性を活かして平行移動・積分を行うと計算ミスを防ぎやすい。扇形と三角形の面積公式を組み合わせて幾何学的に求めてもよいが、置換積分を用いると符号の相殺が自動的に行われるため記述が簡潔になる。

答え

点 $R$ の動きうる範囲は、座標平面上で $l$ を $x$ 軸、$P$ を $(0, \sqrt{3}+1)$ としたとき、以下の2つの不等式を同時に満たす領域(境界を含む)である。 $\begin{cases} 8 \le x^2 + (y - \sqrt{3} - 1)^2 \le 16 \\ 1-\sqrt{3} \le y \le \sqrt{3}-1 \end{cases}$

これは、定点 $P$ を中心とする半径 $2\sqrt{2}$ の円の外部、同中心で半径 $4$ の円の内部と、直線 $l$ と平行で距離が $\sqrt{3}-1$ 以下の帯状領域の共通部分である。

その面積は $\frac{2\pi}{3} + 4$

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