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東京大学 1966年 文系 第3問 解説

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東京大学 1966年 文系 第3問 解説

方針・初手

内心は三角形の内部にあり、3辺(3直線)から等距離にある点である。内心の座標を $(X, Y)$、内接円の半径を $r$ とおき、点と直線の距離の公式を用いて方程式を立てるのが基本方針である。

絶対値記号を外すために、内心が各直線の作る領域のどちら側(正の領域か負の領域か)にあるかを調べる必要がある。また、与えられた2直線 $x+y-1=0$ と $x-y+1=0$ が直交していることに気づけば、直角三角形の幾何的性質を利用して鮮やかに解くこともできる。

解法1

3直線をそれぞれ以下のように定める。

$$ \begin{aligned} l_1 &: x+y-1=0 \\ l_2 &: x-y+1=0 \\ l_3 &: 3x+4y-5=0 \end{aligned} $$

まず、これらの交点(三角形の頂点)の座標を求める。 $l_1$ と $l_2$ の交点 $\text{A}$ は、連立方程式を解いて $\text{A}(0, 1)$。 $l_2$ と $l_3$ の交点 $\text{B}$ は、連立方程式を解いて $\text{B}\left(\frac{1}{7}, \frac{8}{7}\right)$。 $l_3$ と $l_1$ の交点 $\text{C}$ は、連立方程式を解いて $\text{C}(-1, 2)$。

求める内心の座標を $I(X, Y)$、内接円の半径を $r$ $(r>0)$ とおく。 内心は三角形の内部にあるため、直線に関して頂点と同じ側に存在する。 直線 $l_1$ の式に頂点 $\text{B}$ の座標を代入すると $\frac{1}{7}+\frac{8}{7}-1 = \frac{2}{7} > 0$ であるから、内心 $I$ についても $X+Y-1 > 0$ が成り立つ。 直線 $l_2$ の式に頂点 $\text{C}$ の座標を代入すると $-1-2+1 = -2 < 0$ であるから、内心 $I$ についても $X-Y+1 < 0$ が成り立つ。 直線 $l_3$ の式に頂点 $\text{A}$ の座標を代入すると $3 \cdot 0+4 \cdot 1-5 = -1 < 0$ であるから、内心 $I$ についても $3X+4Y-5 < 0$ が成り立つ。

点と直線の距離の公式より、内心 $I$ から各直線までの距離はすべて $r$ に等しいため、以下の式が成り立つ。

$$ r = \frac{|X+Y-1|}{\sqrt{1^2+1^2}} = \frac{|X-Y+1|}{\sqrt{1^2+(-1)^2}} = \frac{|3X+4Y-5|}{\sqrt{3^2+4^2}} $$

先ほど調べた符号を用いて絶対値を外すと、次のようになる。

$$ r = \frac{X+Y-1}{\sqrt{2}} = \frac{-(X-Y+1)}{\sqrt{2}} = \frac{-(3X+4Y-5)}{5} $$

左の2つの式から $X$ を求める。

$$ \frac{X+Y-1}{\sqrt{2}} = \frac{-X+Y-1}{\sqrt{2}} $$

分母を払い整理すると $2X = 0$ となり、$X = 0$ を得る。 これを両端の式に代入して $Y$ を求める。

$$ \frac{0+Y-1}{\sqrt{2}} = \frac{-3 \cdot 0-4Y+5}{5} $$

$$ \frac{Y-1}{\sqrt{2}} = \frac{-4Y+5}{5} $$

両辺に $5\sqrt{2}$ を掛けて整理する。

$$ \begin{aligned} 5(Y-1) &= \sqrt{2}(-4Y+5) \\ 5Y-5 &= -4\sqrt{2}Y+5\sqrt{2} \\ (5+4\sqrt{2})Y &= 5+5\sqrt{2} \end{aligned} $$

これを解いて有理化する。

$$ \begin{aligned} Y &= \frac{5+5\sqrt{2}}{5+4\sqrt{2}} \\ &= \frac{(5+5\sqrt{2})(5-4\sqrt{2})}{(5+4\sqrt{2})(5-4\sqrt{2})} \\ &= \frac{25-20\sqrt{2}+25\sqrt{2}-40}{25-32} \\ &= \frac{-15+5\sqrt{2}}{-7} \\ &= \frac{15-5\sqrt{2}}{7} \end{aligned} $$

したがって、内心の座標は $\left(0, \frac{15-5\sqrt{2}}{7}\right)$ となる。 さらに、内接円の半径 $r$ は $X=0$, $Y=\frac{15-5\sqrt{2}}{7}$ を代入して求める。

$$ \begin{aligned} r &= \frac{Y-1}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{\frac{15-5\sqrt{2}}{7}-1}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{\frac{8-5\sqrt{2}}{7}}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{8\sqrt{2}-10}{14} \\ &= \frac{4\sqrt{2}-5}{7} \end{aligned} $$

解法2

直線 $l_1: x+y-1=0$ の法線ベクトルは $\vec{n_1} = (1, 1)$、直線 $l_2: x-y+1=0$ の法線ベクトルは $\vec{n_2} = (1, -1)$ である。 $\vec{n_1} \cdot \vec{n_2} = 1 \cdot 1 + 1 \cdot (-1) = 0$ より $l_1 \perp l_2$ となるため、この3直線で囲まれる $\triangle \text{ABC}$ は直角三角形である。 直角となる頂点 $\text{A}$ は $l_1$ と $l_2$ の交点であり、$\text{A}(0, 1)$ である。 他の2頂点は、解法1と同様に求めて $\text{B}\left(\frac{1}{7}, \frac{8}{7}\right)$, $\text{C}(-1, 2)$ である。

$\triangle \text{ABC}$ の3辺の長さをそれぞれ $a=\text{BC}$, $b=\text{CA}$, $c=\text{AB}$ とすると、

$$ \begin{aligned} c &= \sqrt{\left(\frac{1}{7}-0\right)^2+\left(\frac{8}{7}-1\right)^2} = \sqrt{\frac{1}{49}+\frac{1}{49}} = \frac{\sqrt{2}}{7} \\ b &= \sqrt{(-1-0)^2+(2-1)^2} = \sqrt{1+1} = \sqrt{2} \\ a &= \sqrt{\left(-1-\frac{1}{7}\right)^2+\left(2-\frac{8}{7}\right)^2} = \sqrt{\frac{64}{49}+\frac{36}{49}} = \frac{10}{7} \end{aligned} $$

直角三角形の内接円の半径 $r$ は、直角を挟む辺 $b, c$ と斜辺 $a$ を用いて $r = \frac{b+c-a}{2}$ で求められるため、

$$ \begin{aligned} r &= \frac{\sqrt{2}+\frac{\sqrt{2}}{7}-\frac{10}{7}}{2} \\ &= \frac{\frac{8\sqrt{2}-10}{7}}{2} \\ &= \frac{4\sqrt{2}-5}{7} \end{aligned} $$

内心 $I$ は、直角の頂点 $\text{A}$ から辺 $\text{AB}$ と辺 $\text{AC}$ の方向にそれぞれ距離 $r$ だけ進んだ位置にある。すなわち、$\vec{AB}$ と $\vec{AC}$ と同じ向きの単位ベクトルを足し合わせ、それに $r$ を掛けたものを頂点 $\text{A}$ の位置ベクトルに加えればよい。

$$ \vec{I} = \vec{A} + r \left( \frac{\vec{AB}}{|\vec{AB}|} + \frac{\vec{AC}}{|\vec{AC}|} \right) $$

$\vec{AB} = \left(\frac{1}{7}, \frac{1}{7}\right)$, $|\vec{AB}| = \frac{\sqrt{2}}{7}$ より $\frac{\vec{AB}}{|\vec{AB}|} = \frac{7}{\sqrt{2}}\left(\frac{1}{7}, \frac{1}{7}\right) = \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$。 $\vec{AC} = (-1, 1)$, $|\vec{AC}| = \sqrt{2}$ より $\frac{\vec{AC}}{|\vec{AC}|} = \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$。

これらを代入する。

$$ \begin{aligned} \vec{I} &= (0, 1) + \frac{4\sqrt{2}-5}{7} \left\{ \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right) + \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right) \right\} \\ &= (0, 1) + \frac{4\sqrt{2}-5}{7} \left(0, \sqrt{2}\right) \\ &= \left(0, 1 + \frac{8-5\sqrt{2}}{7}\right) \\ &= \left(0, \frac{15-5\sqrt{2}}{7}\right) \end{aligned} $$

よって、内心の座標は $\left(0, \frac{15-5\sqrt{2}}{7}\right)$、内接円の半径は $\frac{4\sqrt{2}-5}{7}$ と求まる。

解説

代数的に点と直線の距離の公式を押し通す解法1が最も汎用的である。その際、内心が三角形の内部にあることを利用して、各直線に対する領域の符号を判定し、絶対値を正しく外すプロセスが重要になる。適当に $\pm$ をつけて解いてしまうと、内心ではなく傍心を求めてしまう可能性があるため注意が必要である。

一方で、本問は $x+y-1=0$ と $x-y+1=0$ の傾きの積が $-1$ であることから、直角三角形であることが容易に見抜ける。これを利用したのが解法2である。直角三角形においては、内接円の半径が $r = \frac{b+c-a}{2}$ (または面積を利用して $\frac{1}{2}r(a+b+c) = \frac{1}{2}bc$)で簡単に求まるうえ、内心の位置ベクトルも直角の頂点を基準にすると平易な計算で済む。図形の性質に気づくことで、計算量を大幅に削減できる好例である。

答え

内心の座標: $\left(0, \frac{15-5\sqrt{2}}{7}\right)$ 内接円の半径: $\frac{4\sqrt{2}-5}{7}$

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