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東京大学 1976年 文系 第2問 解説

数学C/平面ベクトル数学2/図形と式テーマ/軌跡・領域テーマ/速度・距離テーマ/場合分け
東京大学 1976年 文系 第2問 解説

方針・初手

動点 $P$ は一定の速さ $2$ で直進し、直角に左折することから、進行方向は初期方向を含めて $4$ 種類に限られることに着目する。各方向に進む時間の合計を変数として設定し、総移動時間が $1$ であること、および「1回以上左折する」という条件から各変数の取り得る範囲を立式し、到達点 $Q$ の存在範囲を求める。

解法1

$t=0$ における $P$ の速度ベクトルを $\vec{v}_0 = (1, \sqrt{3})$ とおく。このとき、速さは $|\vec{v}_0| = \sqrt{1^2 + (\sqrt{3})^2} = 2$ であり、条件と一致する。

$P$ が直角に左折するごとに、速度ベクトルは反時計回りに $\frac{\pi}{2}$ 回転する。 左折を繰り返したときの速度ベクトルを順に $\vec{v}_1, \vec{v}_2, \vec{v}_3$ とおくと、以下のようになる。

$$ \begin{aligned} \vec{v}_1 &= (-\sqrt{3}, 1) \\ \vec{v}_2 &= (-1, -\sqrt{3}) = -\vec{v}_0 \\ \vec{v}_3 &= (\sqrt{3}, -1) = -\vec{v}_1 \end{aligned} $$

さらに左折すると $\vec{v}_4 = \vec{v}_0$ となり、以降はこれら $4$ つのベクトルのいずれかとなる。 $0 \leqq t \leqq 1$ の間において、$P$ が速度 $\vec{v}_k$ $(k=0, 1, 2, 3)$ で進む時間の合計をそれぞれ $t_k$ とおく。 総移動時間は $1$ であるから、次が成り立つ。

$$ t_0 + t_1 + t_2 + t_3 = 1 $$

また、$P$ は「1回以上有限回」左折するため、最初に出発したのち必ず1回は左折して次の方向へ進む。したがって、$\vec{v}_0$ および $\vec{v}_1$ の方向には必ず正の時間だけ進むため、次が成り立つ。

$$ t_0 > 0, \quad t_1 > 0 $$

一方、$\vec{v}_2, \vec{v}_3$ の方向については進まない(左折回数が1回や2回で終了する)可能性もあるため、次が成り立つ。

$$ t_2 \geqq 0, \quad t_3 \geqq 0 $$

時刻 $t=1$ における $P$ の到達点 $Q$ の位置ベクトル $\vec{OQ}$ は、各方向への変位の和として次のように表される。

$$ \begin{aligned} \vec{OQ} &= t_0\vec{v}_0 + t_1\vec{v}_1 + t_2\vec{v}_2 + t_3\vec{v}_3 \\ &= t_0\vec{v}_0 + t_1\vec{v}_1 - t_2\vec{v}_0 - t_3\vec{v}_1 \\ &= (t_0 - t_2)\vec{v}_0 + (t_1 - t_3)\vec{v}_1 \end{aligned} $$

ここで、$X = t_0 - t_2$、$Y = t_1 - t_3$ とおくと、$\vec{OQ} = X\vec{v}_0 + Y\vec{v}_1$ となる。 $X, Y$ の取り得る値の範囲を考える。絶対値の三角不等式および $t_k \geqq 0$ より、次が成り立つ。

$$ \begin{aligned} |X| + |Y| &= |t_0 - t_2| + |t_1 - t_3| \\ &\leqq (t_0 + t_2) + (t_1 + t_3) \\ &= t_0 + t_1 + t_2 + t_3 \\ &= 1 \end{aligned} $$

等号が成立するのは、$|t_0 - t_2| = t_0 + t_2$ かつ $|t_1 - t_3| = t_1 + t_3$ のときである。 $t_0 > 0, t_1 > 0$ であるから、等号成立条件は $t_2 = 0$ かつ $t_3 = 0$ となる。 このとき、$X = t_0 > 0$、$Y = t_1 > 0$ であり、$X + Y = 1$ となる。

逆に、$|X| + |Y| < 1$ を満たす任意の $(X, Y)$ について、 $s = |X| + \frac{1 - |X| - |Y|}{2}$、$u = |Y| + \frac{1 - |X| - |Y|}{2}$ とおけば、$s > |X|$、$u > |Y|$、$s + u = 1$ を満たす。 このとき、$t_0 = \frac{s + X}{2}$、$t_2 = \frac{s - X}{2}$、$t_1 = \frac{u + Y}{2}$、$t_3 = \frac{u - Y}{2}$ と定めれば、すべての $t_k$ は正となり、$t_0 + t_1 + t_2 + t_3 = 1$ を満たす。つまり、このような $(X, Y)$ は3回の左折(有限回)によって到達可能である。

以上より、$(X, Y)$ の存在範囲は以下の2つの条件のいずれかを満たす領域となる。

(i)

$|X| + |Y| < 1$ (ii)

$X + Y = 1$ かつ $X > 0, Y > 0$

この領域は、$XY$ 平面上で $(1,0), (0,1), (-1,0), (0,-1)$ を頂点とする正方形の内部、および第1象限にある境界上の開線分である。

$\vec{OQ} = X\vec{v}_0 + Y\vec{v}_1$ であり、$\vec{v}_0 \cdot \vec{v}_1 = 0$、$|\vec{v}_0| = |\vec{v}_1| = 2$ であるから、点 $Q$ の存在範囲は、上記の $XY$ 平面上の領域を斜交座標(この場合は直交かつ等スケールなので単なる回転と拡大)で $xy$ 平面に写した図形となる。 各頂点に対応する点は、以下の $4$ 点である。

$$ \begin{aligned} A(1, \sqrt{3}) \quad &\text{($X=1, Y=0$ に対応)} \\ B(-\sqrt{3}, 1) \quad &\text{($X=0, Y=1$ に対応)} \\ C(-1, -\sqrt{3}) \quad &\text{($X=-1, Y=0$ に対応)} \\ D(\sqrt{3}, -1) \quad &\text{($X=0, Y=-1$ に対応)} \end{aligned} $$

求める領域は、この $4$ 点を頂点とする正方形 $ABCD$ の内部、および辺 $AB$ 上(両端点 $A, B$ は除く)となる。

解説

マンハッタン距離や定速での直角移動を扱う問題の典型的なアプローチである「各方向に進んだ時間の合計(または距離の合計)を変数として置く」手法が非常に有効である。 「1回以上」という条件が $t_1 > 0$ を生み、それが境界線の一部だけを含める(または除く)という絶妙な役割を果たしている点に注意したい。条件を満たすように時刻 $t_k$ を逆算して構成できることを確認しておくことで、論理の飛躍を防ぐことができる。

答え

$4$ 点 $A(1, \sqrt{3})$、$B(-\sqrt{3}, 1)$、$C(-1, -\sqrt{3})$、$D(\sqrt{3}, -1)$ をとる。 点 $Q$ の存在しうる範囲を図示すると、正方形 $ABCD$ の内部、および辺 $AB$ 上となる。 ただし、正方形の周上のうち、辺 $AB$ 上の点(両端点 $A, B$ を除く)のみ範囲に含まれ、それ以外の境界上の点はすべて含まれない。

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