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東京大学 2008年 文系 第3問 解説

数学C/平面ベクトル数学2/図形と式テーマ/軌跡・領域テーマ/図形総合
東京大学 2008年 文系 第3問 解説

方針・初手

角が等しいという条件 $\angle APC = \angle BPC$ を数式で処理するため、ベクトルの内積を利用する。$0 < \angle APC < \pi$、$0 < \angle BPC < \pi$ の範囲において、角が等しいことと $\cos$ の値が等しいことは同値である。

したがって、$\cos\angle APC = \cos\angle BPC$ を座標 $(x,y)$ の式で表し、方程式を解く方針をとる。途中で式を2乗するため、同値性が崩れないよう最後に十分性の確認(逆の確認)を行うことが重要である。

解法1

点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおく。条件 $P \neq A, B, C$ より、$(x, y) \neq (1, 0), (-1, 0), (0, -1)$ である。

$\angle APC = \angle BPC \iff \cos\angle APC = \cos\angle BPC$ であるから、ベクトルの内積を用いて次のように立式できる。

$$ \frac{\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PC}}{|\overrightarrow{PA}| |\overrightarrow{PC}|} = \frac{\overrightarrow{PB} \cdot \overrightarrow{PC}}{|\overrightarrow{PB}| |\overrightarrow{PC}|} $$

$|\overrightarrow{PC}| \neq 0$ であるから、両辺に $|\overrightarrow{PC}|$ を掛けて分母を払うと、

$$ \frac{\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PC}}{|\overrightarrow{PA}|} = \frac{\overrightarrow{PB} \cdot \overrightarrow{PC}}{|\overrightarrow{PB}|} \cdots \text{①} $$

各ベクトルを成分で表すと以下のようになる。

$$ \begin{aligned} \overrightarrow{PA} &= (1-x, -y) \\ \overrightarrow{PB} &= (-1-x, -y) \\ \overrightarrow{PC} &= (-x, -1-y) \end{aligned} $$

これらを用いて内積と大きさを計算する。

$$ \begin{aligned} \overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PC} &= -x(1-x) - y(-1-y) = x^2 + y^2 - x + y \\ \overrightarrow{PB} \cdot \overrightarrow{PC} &= -x(-1-x) - y(-1-y) = x^2 + y^2 + x + y \\ |\overrightarrow{PA}| &= \sqrt{(x-1)^2 + y^2} \\ |\overrightarrow{PB}| &= \sqrt{(x+1)^2 + y^2} \end{aligned} $$

これらを①式に代入する。

$$ \frac{x^2 + y^2 - x + y}{\sqrt{(x-1)^2 + y^2}} = \frac{x^2 + y^2 + x + y}{\sqrt{(x+1)^2 + y^2}} \cdots \text{②} $$

②式の両辺を2乗して分母を払うと、以下の等式が得られる。

$$ (x^2 + y^2 - x + y)^2 \{(x+1)^2 + y^2\} = (x^2 + y^2 + x + y)^2 \{(x-1)^2 + y^2\} $$

そのまま展開すると計算が煩雑になるため、$u = x^2 + y^2 + y$、$v = x^2 + y^2 + 1$ とおいて整理する。

$$ \begin{aligned} (u - x)^2 (v + 2x) &= (u + x)^2 (v - 2x) \\ (u^2 - 2ux + x^2)(v + 2x) &= (u^2 + 2ux + x^2)(v - 2x) \end{aligned} $$

両辺を展開して整理すると、

$$ \begin{aligned} u^2 v + 2u^2 x - 2uvx - 4ux^2 + x^2 v + 2x^3 &= u^2 v - 2u^2 x + 2uvx - 4ux^2 + x^2 v - 2x^3 \\ 4u^2 x - 4uvx + 4x^3 &= 0 \\ 4x (u^2 - uv + x^2) &= 0 \end{aligned} $$

カッコの中を $u, v$ を元に戻して計算する。

$$ \begin{aligned} u^2 - uv + x^2 &= u(u - v) + x^2 \\ &= (x^2 + y^2 + y)(y - 1) + x^2 \\ &= y(x^2 + y^2 + y - 1) - (x^2 + y^2 + y) + x^2 \\ &= x^2 y + y^3 + y^2 - y - x^2 - y^2 - y + x^2 \quad \text{(※または $u-v = y-1$ より直ちに)} \\ &= y(x^2 + y^2 - 1) \end{aligned} $$

したがって、方程式は次のように因数分解される。

$$ 4xy (x^2 + y^2 - 1) = 0 $$

これより、$x = 0$ または $y = 0$ または $x^2 + y^2 = 1$ が必要条件となる。これらが2乗する前の元の等式②を満たすか(十分性)をそれぞれ確認する。

(i) $x = 0$ のとき

②式の左辺と右辺に $x=0$ を代入する。

$$ \text{左辺} = \frac{y^2 + y}{\sqrt{1 + y^2}}, \quad \text{右辺} = \frac{y^2 + y}{\sqrt{1 + y^2}} $$

両辺は常に等しくなる。点 $P \neq C$ より $y \neq -1$ であるから、$x = 0$ (ただし $y \neq -1$)は条件を満たす。

(ii) $y = 0$ のとき

②式の左辺と右辺に $y=0$ を代入する。

$$ \frac{x^2 - x}{\sqrt{(x-1)^2}} = \frac{x^2 + x}{\sqrt{(x+1)^2}} \iff \frac{x(x-1)}{|x-1|} = \frac{x(x+1)}{|x+1|} $$

$x \neq 0$ のとき、両辺を $x$ で割ると $\frac{x-1}{|x-1|} = \frac{x+1}{|x+1|}$ となる。 これが成り立つのは、$x-1$ と $x+1$ が同符号のとき、すなわち $x > 1$ または $x < -1$ のときである。 また、$x=0$ のときも両辺は $0$ となり成立するが、これは(i)に含まれる。 したがって、$y = 0$ の場合は $x < -1$ または $x > 1$ が条件を満たす。

(iii) $x^2 + y^2 = 1$ のとき

$x^2 + y^2 = 1 \iff x^2 = 1 - y^2$ を用いて②式を変形する。$P \neq A, B, C$ より $y \neq 0, -1$ である。

$$ \begin{aligned} \text{②の分子} &: x^2 + y^2 \mp x + y = 1 \mp x + y \\ \text{②の分母の根号内} &: (x \mp 1)^2 + y^2 = x^2 \mp 2x + 1 + y^2 = 2 \mp 2x = 2(1 \mp x) \end{aligned} $$

これを②式に代入すると、

$$ \frac{1 - x + y}{\sqrt{2(1-x)}} = \frac{1 + x + y}{\sqrt{2(1+x)}} $$

両辺に $\sqrt{2}$ を掛け、次のように変形する。

$$ \begin{aligned} \frac{1-x}{\sqrt{1-x}} + \frac{y}{\sqrt{1-x}} &= \frac{1+x}{\sqrt{1+x}} + \frac{y}{\sqrt{1+x}} \\ \sqrt{1-x} + \frac{y}{\sqrt{1-x}} &= \sqrt{1+x} + \frac{y}{\sqrt{1+x}} \\ y \left( \frac{1}{\sqrt{1-x}} - \frac{1}{\sqrt{1+x}} \right) &= \sqrt{1+x} - \sqrt{1-x} \\ y \cdot \frac{\sqrt{1+x} - \sqrt{1-x}}{\sqrt{1-x^2}} &= \sqrt{1+x} - \sqrt{1-x} \end{aligned} $$

ここで $x \neq 0$ のとき、$\sqrt{1+x} - \sqrt{1-x} \neq 0$ であるから両辺をこれで割ることができる。

$$ \frac{y}{\sqrt{1-x^2}} = 1 $$

$x^2 + y^2 = 1$ より $\sqrt{1-x^2} = \sqrt{y^2} = |y|$ であるから、

$$ \frac{y}{|y|} = 1 \iff y > 0 $$

したがって、円周上の点においては $y > 0$ の部分のみが条件を満たす。

以上、(i), (ii), (iii)より、求める軌跡は ・直線 $x=0$ (ただし $y \neq -1$) ・直線 $y=0$ の $x < -1$ または $x > 1$ の部分 ・円 $x^2 + y^2 = 1$ の $y > 0$ の部分 の和集合となる。

解法2

点 $A(1,0), B(-1,0), C(0,-1)$ は、原点 $O$ を中心とする半径1の円周上にある。この幾何学的な対称性からアプローチする。

(i) $y$ 軸上の点について 点 $P$ が $y$ 軸上にあるとき、点 $C$ も $y$ 軸上にあり、点 $A$ と点 $B$ は $y$ 軸に関して対称である。 したがって、$\triangle PAC$ と $\triangle PBC$ は $y$ 軸に関して対称な図形となり合同である。 よって常に $\angle APC = \angle BPC$ が成り立つ。ただし $P \neq C$ である。

(ii) $x$ 軸上の点について 点 $P$ が $x$ 軸上にあるとき、$P, A, B$ は同一直線上にある。 半直線 $PA$ と半直線 $PB$ が一致すれば $\angle APC = \angle BPC$ が成り立つ。これは点 $P$ が線分 $AB$ の外側にあるとき、すなわち $x < -1$ または $x > 1$ のときである。 逆に、点 $P$ が線分 $AB$ の内側($-1 < x < 1$)にあるときは、半直線 $PA$ と $PB$ は互いに逆向きとなり、$\angle APC + \angle BPC = 180^\circ$ となる。このとき $\angle APC = \angle BPC$ となるのは角が $90^\circ$ のときのみであり、これは $P$ が原点のとき(i)に含まれる。

(iii) 円 $x^2 + y^2 = 1$ 上の点について 点 $A, B, C$ を通る円周上の点 $P$ について考える。弦 $AC$ と弦 $BC$ の長さはともに $\sqrt{2}$ で等しい。 円周角の定理より、長さの等しい弦に対する円周角を考える。 点 $P$ が $y > 0$ の弧 $AB$ 上にあるとき、$\angle APC$ は弧 $AC$ に対する円周角、$\angle BPC$ は弧 $BC$ に対する円周角となる。どちらの弧も中心角は $90^\circ$ であるから、$\angle APC = \angle BPC = 45^\circ$ となり条件を満たす。

一方、点 $P$ が $y < 0$ の弧上にあるとき、例えば弧 $AC$ 上にあると、$A, P, C, B$ の順に並ぶ。このとき $\angle APC$ は弧 $ABC$ に対する円周角(鈍角、$135^\circ$)、$\angle BPC$ は弧 $BC$ に対する円周角(鋭角、$45^\circ$)となり、一致しない。 したがって、円周上では $y > 0$ の部分のみが条件を満たす。

代数的な計算(解法1)により、これら以外の軌跡が存在しないことが保証される。

解説

ベクトルの内積を用いて $\cos$ の値から立式する、軌跡の典型的な解法である。根号を含む分数方程式を解くことになるため、両辺を2乗したあとの「逆の確認(十分性の確認)」が極めて重要になる。

解法1の同値変形において、式が綺麗に因数分解できることに気づけるかが計算の山場である。変数を $u, v$ のように置き換えて見通しを良くするテクニックが有効だ。

また、解法2のように図形の対称性や円周角の定理を用いると、答えの「アタリ」をつけることができ、不適な領域(例えば円周上の $y < 0$ の部分など)を直感的に見抜く強力な助けとなる。

答え

求める点 $P$ の軌跡は、以下の3つの図形を合わせたものである。

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