東京大学 1995年 文系 第4問 解説

方針・初手
水がこぼれ始める瞬間の水の体積を $\theta$ を用いて表すことが第一歩である。 こぼれ始める瞬間とは、水面が器の縁の最も低い点に達したときである。このときの水面の高さを幾何学的に求め、水が満たされている部分(球欠)の体積を積分によって計算する。その後、入れた水の総量と等置して $\theta$ についての方程式を解く。
解法1
半径 $1$ の球の中心を $O$ とする。器は半球であるから、その縁は中心 $O$、半径 $1$ の円である。この縁の円を含む平面を $\alpha$ とする。 器が水平から角 $\theta$ だけ傾いているとき、平面 $\alpha$ と水平面がなす角は $\theta$ である。
水が器に満たされていき、こぼれ始めるときの水面は、縁の円の最も低い点 $P$ に達している。 このとき、線分 $OP$ は平面 $\alpha$ 上で最も急な勾配をもつ方向を向く半径であるから、水平面となす角は $\theta$ となる。 したがって、点 $P$ は中心 $O$ から鉛直下方に深さ $1 \cdot \sin\theta = \sin\theta$ の位置にある。
点 $P$ を通る水平面が水面であり、水はこれより下の領域に満たされている。 この領域において、器の壁はすべて球面上にあり、縁の平面 $\alpha$ によって欠けることはない。 よって、水が満たされている部分の形状は、半径 $1$ の球を、中心から深さ $\sin\theta$ の水平面で切り取った底の部分(球欠)に等しい。
中心 $O$ を原点とし、鉛直下向きを $x$ 軸の正の向きにとる。 水面は $x = \sin\theta$ で表され、水が存在する範囲は $\sin\theta \le x \le 1$ である。 平面 $x = t$ ($\sin\theta \le t \le 1$)で球 $x^2+y^2+z^2 \le 1$ を切った断面積 $S(t)$ は、
$$ S(t) = \pi(1-t^2) $$
であるから、こぼれ始める瞬間の水の体積 $V$ は次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} V &= \int_{\sin\theta}^{1} \pi(1-t^2) dt \\ &= \pi \left[ t - \frac{t^3}{3} \right]_{\sin\theta}^{1} \\ &= \pi \left\{ \left( 1 - \frac{1}{3} \right) - \left( \sin\theta - \frac{\sin^3\theta}{3} \right) \right\} \\ &= \frac{\pi}{3} (2 - 3\sin\theta + \sin^3\theta) \end{aligned} $$
一方、器には毎秒 $\frac{\pi}{18}\text{cm}^3$ の割合で水を入れるため、入れはじめてから $3+\cos^2\theta$ 秒後の水の体積は
$$ \frac{\pi}{18}(3+\cos^2\theta) $$
である。これが体積 $V$ と等しいので、次の方程式が成り立つ。
$$ \frac{\pi}{3} (2 - 3\sin\theta + \sin^3\theta) = \frac{\pi}{18} (3+\cos^2\theta) $$
両辺に $\frac{18}{\pi}$ を掛けて整理する。
$$ 6(2 - 3\sin\theta + \sin^3\theta) = 3 + \cos^2\theta $$
$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta$ を用いて方程式を $\sin\theta$ だけで表す。
$$ 12 - 18\sin\theta + 6\sin^3\theta = 4 - \sin^2\theta $$
$$ 6\sin^3\theta + \sin^2\theta - 18\sin\theta + 8 = 0 $$
ここで、$\sin\theta = t$ とおく。 条件 $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ より、$0 < t < 1$ である。 方程式は $t$ についての3次方程式となる。
$$ 6t^3 + t^2 - 18t + 8 = 0 $$
左辺に $t = \frac{1}{2}$ を代入すると、
$$ 6\left(\frac{1}{8}\right) + \frac{1}{4} - 18\left(\frac{1}{2}\right) + 8 = \frac{3}{4} + \frac{1}{4} - 9 + 8 = 0 $$
となるため、左辺は $2t - 1$ を因数にもつ。因数分解を進めると、
$$ (2t - 1)(3t^2 + 2t - 8) = 0 $$
$$ (2t - 1)(3t - 4)(t + 2) = 0 $$
したがって、$t = \frac{1}{2}, \frac{4}{3}, -2$ となる。 $0 < t < 1$ を満たすのは $t = \frac{1}{2}$ のみであるから、
$$ \sin\theta = \frac{1}{2} $$
$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ より、求める $\theta$ の値は $\theta = \frac{\pi}{6}$ である。
解説
立体図形の体積を求める典型的な問題である。「水がこぼれる瞬間」という物理的な状況を、「水面が器の縁の最低点に一致する」という幾何学的な条件に正しく翻訳できるかがポイントとなる。 傾いた半球の最低点の深さを求める際、空間座標を導入して厳密に求めることもできるが、本解法のように球の中心から縁までの半径(最大傾斜線)に注目すると、計算を大幅に省略でき見通しが良くなる。 後半は定積分による球欠の体積計算と、三角関数の3次方程式の処理であり、いずれも正確な計算力が求められる。
答え
$$ \theta = \frac{\pi}{6} $$
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