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東京大学 1990年 文系 第4問 解説

数学1/立体図形数学2/積分法テーマ/面積・体積テーマ/最大・最小
東京大学 1990年 文系 第4問 解説

方針・初手

回転軸となる直線 $l$ を $x$ 軸に設定し、直角二等辺三角形の頂点を三角関数を用いて座標設定する。

直線 $l$ が直角二等辺三角形と「頂点または一辺のみを共有する」という条件から、三角形は $x$ 軸の片側($y \ge 0$ の領域)に含まれる。回転体の体積 $V$ を求めるにあたり、まともに円錐や円錐台の体積の和・差として計算すると場合分けが煩雑になるため、重心の $y$ 座標 $y_G$ と体積 $V$ の関係(パップス・ギュルダンの定理)を積分を用いて示してから利用し、$y_G$ の最大値と最小値を求める方針をとる。

解法1

図形 $T$ を $x$ 軸の周りに回転させてできる立体の体積 $V$ と、図形の重心について考える。

$T$ が $y \ge 0$ の領域にあり、面積が $S$ であるとする。$T$ を $x$ 軸に平行な直線 $y=t$ で切ったときの線分の長さを $w(t)$ とすると、面積 $S$ および重心の $y$ 座標 $y_G$ は次のように表される。

$$ S = \int w(t) dt, \quad y_G = \frac{1}{S} \int t w(t) dt $$

一方、$T$ を $x$ 軸の周りに回転させた立体の体積 $V$ は、円筒分割(バウムクーヘン積分)を用いると次のように表される。

$$ V = \int 2\pi t w(t) dt $$

上の2式を比較すると、以下の関係が成り立つ。

$$ V = 2\pi S y_G $$

本問における直角二等辺三角形 $T$ は、等辺の長さが $1$ であるから、その面積は $S = \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot 1 = \frac{1}{2}$ である。したがって、体積 $V$ は

$$ V = \pi y_G $$

となり、$V$ の最大値・最小値を求めることは、重心の $y$ 座標 $y_G$ の最大値・最小値を求めることに帰着する。三角形の重心の $y$ 座標は、3頂点の $y$ 座標の平均として求められる。

回転軸である直線 $l$ を $x$ 軸とし、$T$ を $y \ge 0$ の領域に配置する。「頂点または一辺のみを共有する」のは、共有する頂点が直角の頂点であるか、鋭角の頂点であるかの2つの場合である。

(i) 頂点C(直角の頂点)を共有する場合

頂点 $C$ を原点 $(0,0)$ にとる。$\angle C = \frac{\pi}{2}, CA=1, CB=1$ である。辺 $CA$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\theta$ とすると、頂点 $A$ の座標は $(\cos\theta, \sin\theta)$ となる。頂点 $B$ は辺 $CA$ を $\frac{\pi}{2}$ 回転した位置にあるため、その座標は $(-\sin\theta, \cos\theta)$ となる。

頂点 $A, B$ が $y \ge 0$ の領域にあるための条件は、$\sin\theta \ge 0$ かつ $\cos\theta \ge 0$ であり、これより $0 \le \theta \le \frac{\pi}{2}$ となる。

このとき、重心の $y$ 座標 $y_G$ は、

$$ y_G = \frac{0 + \sin\theta + \cos\theta}{3} = \frac{1}{3}(\sin\theta + \cos\theta) = \frac{\sqrt{2}}{3}\sin\left(\theta + \frac{\pi}{4}\right) $$

$0 \le \theta \le \frac{\pi}{2}$ より $\frac{\pi}{4} \le \theta + \frac{\pi}{4} \le \frac{3\pi}{4}$ であるから、$y_G$ は $\theta = \frac{\pi}{4}$ のとき最大値 $\frac{\sqrt{2}}{3}$ をとり、$\theta = 0, \frac{\pi}{2}$ のとき最小値 $\frac{1}{3}$ をとる。

(ii) 頂点A(鋭角の頂点)を共有する場合

頂点 $A$ を原点 $(0,0)$ にとる。$\angle A = \frac{\pi}{4}, AC=1, AB=\sqrt{2}$ である。辺 $AC$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\phi$ とすると、頂点 $C$ の座標は $(\cos\phi, \sin\phi)$ となる。図形の対称性から、頂点 $B$ は辺 $AC$ から反時計回りに $\frac{\pi}{4}$ 回転した方向にあるとして一般性を失わない。$AB = \sqrt{2}$ より、頂点 $B$ の座標は、

$$ \left( \sqrt{2}\cos\left(\phi + \frac{\pi}{4}\right), \sqrt{2}\sin\left(\phi + \frac{\pi}{4}\right) \right) = ( \cos\phi - \sin\phi, \cos\phi + \sin\phi ) $$

頂点 $C, B$ が $y \ge 0$ の領域にあるための条件は、$\sin\phi \ge 0$ かつ $\cos\phi + \sin\phi \ge 0$ である。$\sin\phi \ge 0$ より $0 \le \phi \le \pi$ であり、$\cos\phi + \sin\phi = \sqrt{2}\sin\left(\phi + \frac{\pi}{4}\right) \ge 0$ より $-\frac{\pi}{4} \le \phi \le \frac{3\pi}{4}$ である。共通範囲をとると $0 \le \phi \le \frac{3\pi}{4}$ となる。

このとき、重心の $y$ 座標 $y_G$ は、

$$ y_G = \frac{0 + \sin\phi + (\cos\phi + \sin\phi)}{3} = \frac{1}{3}(2\sin\phi + \cos\phi) $$

三角関数の合成を用いると、

$$ y_G = \frac{\sqrt{5}}{3}\sin(\phi + \alpha) \quad \left( \text{ただし、} \cos\alpha = \frac{2}{\sqrt{5}}, \sin\alpha = \frac{1}{\sqrt{5}} \right) $$

$\cos\alpha > 0, \sin\alpha > 0$ より $0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$ である。 $0 \le \phi \le \frac{3\pi}{4}$ の範囲において、$\phi = \frac{\pi}{2} - \alpha$ のとき $\phi + \alpha = \frac{\pi}{2}$ となり、$y_G$ は最大値 $\frac{\sqrt{5}}{3}$ をとる。 最小値は定義域の両端の値を比較して決める。

$$ \phi = 0 \text{ のとき } y_G = \frac{1}{3} $$

$$ \phi = \frac{3\pi}{4} \text{ のとき } y_G = \frac{1}{3} \left( 2 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} - \frac{1}{\sqrt{2}} \right) = \frac{\sqrt{2}}{6} $$

$\frac{\sqrt{2}}{6} < \frac{1}{3}$ であるから、$y_G$ の最小値は $\frac{\sqrt{2}}{6}$ である。 なお、もう一つの鋭角の頂点 $B$ を共有する場合も、図形の対称性から同じ結果となる。

以上の (i), (ii) より、$y_G$ 全体の取りうる範囲を考える。 最大値について、$\frac{\sqrt{2}}{3} = \frac{\sqrt{18}}{9}$ と $\frac{\sqrt{5}}{3} = \frac{\sqrt{45}}{9}$ を比較すると $\frac{\sqrt{5}}{3}$ の方が大きい。 最小値について、$\frac{1}{3} = \frac{2}{6}$ と $\frac{\sqrt{2}}{6}$ を比較すると $\frac{\sqrt{2}}{6}$ の方が小さい。

したがって、$y_G$ の最大値は $\frac{\sqrt{5}}{3}$、最小値は $\frac{\sqrt{2}}{6}$ である。 $V = \pi y_G$ より、体積 $V$ の最大値と最小値も定まる。

解説

回転体の体積を問う問題において、円錐や円柱の組み合わせ(直接積分)で計算しようとすると、特に鋭角の頂点を原点に置いた場合(本解法の(ii))に、頂点の $x$ 座標の大小関係によって複数の場合分けが発生し、計算量が膨大になる。

このような場合、「パップス・ギュルダンの定理(回転体の体積は、面積と重心の移動距離の積に等しい)」を利用すると非常に見通しが良くなる。ただし、高校数学の教科書において定理として明記されていないことが多いため、解法1のようにバウムクーヘン積分を用いて $V = 2\pi S y_G$ となることを数行で証明してから用いるのが、入試答案として最も安全かつエレガントな手法である。

答え

最大値 $\frac{\sqrt{5}}{3}\pi$, 最小値 $\frac{\sqrt{2}}{6}\pi$

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