東京大学 1995年 文系 第3問 解説

方針・初手
曲線の式から導関数を求め、点 $P$ における接線の方程式を立式して $y$ 切片である点 $Q$ の座標を求める。 次に、原点 $O$ における接線の方程式と、直線 $OP$ の方程式を求める。 「原点における接線が $\angle QOP$ を二等分する」という図形的な条件を数式に翻訳するために、点と直線の距離の性質を利用するか、あるいは直線のなす角に着目して正接($\tan$)の加法定理を用いるのが定石である。 得られた等式から点 $P$ の $x$ 座標を $a$ を用いて表し、面積 $S(a)$ の式を導出してから、相加平均と相乗平均の大小関係などを利用して最小値を求める。
解法1
曲線の方程式を $f(x) = -x^3 + ax$ とおくと、導関数は $f'(x) = -3x^2 + a$ である。 点 $P$ の $x$ 座標を $p$ ($p > 0$) とおくと、$P(p, -p^3 + ap)$ となる。 点 $P$ における接線の方程式は、
$$ y - (-p^3 + ap) = (-3p^2 + a)(x - p) $$
これを整理して、
$$ y = (-3p^2 + a)x + 2p^3 $$
これと $y$ 軸との交点 $Q$ の座標は $(0, 2p^3)$ である。 $p > 0$ より $2p^3 > 0$ であるから、点 $Q$ は $y$ 軸の正の部分にある。
原点 $O$ における接線 $l_0$ の方程式は、$f'(0) = a$ より、
$$ y = ax $$
また、直線 $OP$ の方程式は、傾きが $\frac{-p^3 + ap}{p} = a - p^2$ であるから、
$$ y = (a - p^2)x $$
すなわち、
$$ (a - p^2)x - y = 0 $$
ここで、$l_0$ の傾きは $a$、直線 $OP$ の傾きは $a - p^2$ であり、$p^2 > 0$ より $a > a - p^2$ である。 したがって、第1象限において直線 $l_0$ は直線 $OP$ よりも $y$ 軸に近い位置にある。 $l_0$ が $\angle QOP$ を二等分することから、角の二等分線の性質により、$l_0$ 上の任意の点から $y$ 軸 ($x=0$) までの距離と、直線 $OP$ までの距離は等しくなる。
$l_0$ 上の点 $(1, a)$ をとる。 点 $(1, a)$ と $y$ 軸 ($x=0$) との距離は $1$ である。 点 $(1, a)$ と直線 $OP$ との距離 $d$ は、点と直線の距離の公式より、
$$ d = \frac{|(a - p^2) \cdot 1 - a|}{\sqrt{(a - p^2)^2 + (-1)^2}} = \frac{|-p^2|}{\sqrt{(a - p^2)^2 + 1}} = \frac{p^2}{\sqrt{(a - p^2)^2 + 1}} $$
これらが等しいから、
$$ 1 = \frac{p^2}{\sqrt{(a - p^2)^2 + 1}} $$
両辺は正であるから2乗して分母を払うと、
$$ (a - p^2)^2 + 1 = p^4 $$
$$ a^2 - 2ap^2 + p^4 + 1 = p^4 $$
$$ 2ap^2 = a^2 + 1 $$
$a > 0$ より、
$$ p^2 = \frac{a^2 + 1}{2a} $$
を得る。
次に、$\triangle QOP$ の面積 $S(a)$ を求める。 底辺を $OQ$ とみると、その長さは $2p^3$ であり、高さは点 $P$ の $x$ 座標 $p$ である。
$$ S(a) = \frac{1}{2} \cdot 2p^3 \cdot p = p^4 $$
先ほど求めた $p^2$ を代入して、
$$ S(a) = \left( \frac{a^2 + 1}{2a} \right)^2 $$
ここで、括弧の中を変形すると、
$$ \frac{a^2 + 1}{2a} = \frac{1}{2} \left( a + \frac{1}{a} \right) $$
$a > 0$、$1/a > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$ a + \frac{1}{a} \ge 2\sqrt{a \cdot \frac{1}{a}} = 2 $$
よって、
$$ \frac{1}{2} \left( a + \frac{1}{a} \right) \ge 1 $$
となり、$p^2 \ge 1$ がわかる。 したがって、
$$ S(a) = (p^2)^2 \ge 1^2 = 1 $$
等号が成立するのは、$a = 1/a$ かつ $a > 0$、すなわち $a = 1$ のときである。
解法2
座標の設定と、各直線の方程式の導出までは解法1と同様とする。 原点 $O$ における接線 $l_0: y = ax$ と、直線 $OP: y = (a - p^2)x$ について考える。
$l_0$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\alpha$、直線 $OP$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\beta$ とおく。 $a > 0$ より $0 < \alpha < \pi/2$ であり、$\tan \alpha = a$ である。 また、直線 $OP$ の傾きより $\tan \beta = a - p^2$ である。 $y$ 軸の正の部分と $x$ 軸の正の向きとのなす角は $\pi/2$ であり、$l_0$ は $\angle QOP$ を二等分し、かつ $a > a - p^2$ より $l_0$ は直線 $OP$ より $y$ 軸側にあるため、
$$ \frac{\pi}{2} - \alpha = \alpha - \beta $$
が成り立つ。これを整理すると、
$$ \beta = 2\alpha - \frac{\pi}{2} $$
(i)
$a = 1$ のとき $\tan \alpha = 1$ より $\alpha = \pi/4$ である。 このとき $\beta = 2 \cdot \frac{\pi}{4} - \frac{\pi}{2} = 0$ となり、$\tan \beta = 0$ となる。 したがって $a - p^2 = 0$ に $a = 1$ を代入して $1 - p^2 = 0$ より $p^2 = 1$ を得る。
(ii)
$a \neq 1$ のとき $\alpha \neq \pi/4$ であり、$2\alpha \neq \pi/2$ となるから $\tan 2\alpha$ が定義できる。
$$ \tan \beta = \tan \left( 2\alpha - \frac{\pi}{2} \right) = -\frac{1}{\tan 2\alpha} $$
正接の2倍角の公式より、
$$ \tan 2\alpha = \frac{2\tan \alpha}{1 - \tan^2 \alpha} = \frac{2a}{1 - a^2} $$
したがって、
$$ \tan \beta = -\frac{1 - a^2}{2a} = \frac{a^2 - 1}{2a} $$
$\tan \beta = a - p^2$ であるから、
$$ a - p^2 = \frac{a^2 - 1}{2a} $$
$$ p^2 = a - \frac{a^2 - 1}{2a} = \frac{a^2 + 1}{2a} $$
この式は $a = 1$ のとき $p^2 = 1$ となり、(i) の結果も満たしているため、すべての $a > 0$ について成立する。
$\triangle QOP$ の面積は、
$$ S(a) = \frac{1}{2} \cdot OQ \cdot (\text{点} P \text{の} x \text{座標}) = \frac{1}{2} \cdot 2p^3 \cdot p = p^4 $$
$$ S(a) = \left( \frac{a^2 + 1}{2a} \right)^2 = \frac{1}{4} \left( a + \frac{1}{a} \right)^2 $$
$a > 0$ より相加平均と相乗平均の大小関係を用いると、
$$ a + \frac{1}{a} \ge 2\sqrt{a \cdot \frac{1}{a}} = 2 $$
等号成立は $a = 1/a$ すなわち $a = 1$ のときである。 したがって、
$$ S(a) \ge \frac{1}{4} \cdot 2^2 = 1 $$
となり、$S(a)$ の最小値は $1$、そのときの $a$ の値は $a = 1$ である。
解説
「直線のなす角を二等分する」という図形的条件をどのように処理するかが問われる問題である。 解法1のように「角の二等分線上の点は、2辺からの距離が等しい」という性質を利用して点と直線の距離の公式に持ち込むと、場合分けが発生せず計算が非常にスムーズに進む。 解法2のように直線の傾きから $\tan$ の加法定理を利用するのも基本方針であるが、その場合は分母が $0$ になるケース(本問では $a=1$ のとき)を丁寧に見落とさず場合分けする論理的慎重さが求められる。 面積の最小値を求める最後のプロセスでは、相加平均と相乗平均の大小関係が綺麗に機能する。
答え
$S(a)$ の最小値は $1$、それを与える $a$ の値は $a = 1$
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