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東京大学 1991年 理系 第5問 解説

数学2/図形と式数学A/整数問題テーマ/最大・最小テーマ/存在証明
東京大学 1991年 理系 第5問 解説

方針・初手

傾きが $\frac{2}{5}$ である任意の直線の方程式を設定し、格子点 $(m, n)$ と直線の距離を考える。 任意の直線が少なくとも1つの円と共有点をもつという条件は、任意の直線に対して、距離が $r$ 以下となる格子点が存在することと同値である。 格子点と直線の距離の式に現れる整数の1次結合の性質を利用して、$r$ の条件を導く。

解法1

傾きが $\frac{2}{5}$ である任意の直線を $l$ とし、その方程式を $y = \frac{2}{5}x + k$ ($k$ は実数)とおく。 これを変形すると、

$$ 2x - 5y + 5k = 0 $$

となる。

格子点 $(m, n)$ を中心とする半径 $r$ の円と、直線 $l$ が共有点をもつための条件は、点 $(m, n)$ と直線 $l$ の距離 $d$ が $r$ 以下となることである。 点と直線の距離の公式より、

$$ d = \frac{|2m - 5n + 5k|}{\sqrt{2^2 + (-5)^2}} = \frac{|2m - 5n + 5k|}{\sqrt{29}} $$

である。

問題の条件「任意の直線 $l$ がこれらの円のどれかと共有点をもつ」は、 「任意の実数 $k$ に対して、ある整数 $m, n$ が存在して $d \le r$ が成り立つ」 と言い換えられる。すなわち、

$$ \frac{|2m - 5n + 5k|}{\sqrt{29}} \le r $$

を満たす整数 $m, n$ が必ず存在することである。

ここで、$m, n$ がすべての整数を動くとき、$2m - 5n$ のとりうる値について考える。 $2$ と $-5$ は互いに素であるため、ベズーの等式より、$2m - 5n$ はすべての整数値をとりうる。 したがって、$2m - 5n = l$ ($l$ は整数)とおきかえることができる。

条件は、 「任意の実数 $k$ に対して、ある整数 $l$ が存在して $|l + 5k| \le \sqrt{29}r$ が成り立つ」 となる。 ここで、$5k$ は任意の実数をとりうるので、これを $X$ とおく。 条件はさらに、 「任意の実数 $X$ に対して、ある整数 $l$ が存在して $|X + l| \le \sqrt{29}r$ が成り立つ」 と言い換えられる。

$|X + l|$ は、実数 $-X$ と整数 $l$ との距離を表す。 任意の実数に対して、最も近い整数との距離は最大で $\frac{1}{2}$ である。 (例えば $-X = \frac{1}{2}$、すなわち $X = -\frac{1}{2}$ のとき、最も近い整数 $l$ は $0$ または $1$ であり、距離は $\frac{1}{2}$ となる。)

よって、任意の実数 $X$ に対して $|X + l| \le \sqrt{29}r$ を満たす整数 $l$ が常に存在するための条件は、

$$ \frac{1}{2} \le \sqrt{29}r $$

である。

これを $r$ について解くと、

$$ r \ge \frac{1}{2\sqrt{29}} = \frac{\sqrt{29}}{58} $$

となる。

解法2

傾きが $\frac{2}{5}$ である直線の方向ベクトルは $(5, 2)$ である。 格子点を通る、傾き $\frac{2}{5}$ の直線群について考える。 格子点 $(m, n)$ を通る直線の方程式は $2x - 5y = 2m - 5n$ である。 $2$ と $5$ は互いに素であるから、整数 $2m - 5n$ はすべての整数値をとりうる。 整数 $c$ に対して、直線 $l_c: 2x - 5y = c$ を考える。 これらの直線は、平面上に互いに平行に並んでいる。

隣り合う2直線 $l_c$ と $l_{c+1}$ の距離 $d$ を求める。 $l_c$ 上の点と直線 $l_{c+1}: 2x - 5y - (c+1) = 0$ との距離は、点と直線の距離の公式より、

$$ d = \frac{|c - (c+1)|}{\sqrt{2^2 + (-5)^2}} = \frac{1}{\sqrt{29}} $$

となる。

各格子点を中心に半径 $r$ の円を描いたとき、これらの円による被覆を傾き $\frac{2}{5}$ の直線の垂直方向に射影して考える。 直線 $l_c$ 上には等間隔に格子点が無限に並んでいるため、各格子点を中心とする円を直線 $l_c$ に沿って全体として見ると、直線 $l_c$ からの距離が $r$ 以下である領域の帯となる。

すべての傾き $\frac{2}{5}$ の任意の直線がこれらの円のいずれかと共有点をもつためには、 隣り合う格子点の直線 $l_c$ と $l_{c+1}$ から生じる幅 $2r$ の帯が、互いに隙間なく平面を覆う必要がある。

したがって、各帯の幅の半分 $r$ を両側から伸ばして、隣り合う直線間を完全に埋めるためには、

$$ 2r \ge d $$

でなければならない。

よって、

$$ 2r \ge \frac{1}{\sqrt{29}} $$

$$ r \ge \frac{1}{2\sqrt{29}} = \frac{\sqrt{29}}{58} $$

となる。

解説

図形的な直感と数式表現の両方からアプローチできる、整数と図形の融合問題である。 「任意の直線」という条件を、切片 $k$ を用いて数式化し、「どんな $k$ に対しても(ある整数が存在して)条件を満たす」という論理に帰着させるのが基本的な考え方である。 その際、「$2m - 5n$ がすべての整数をとりうる($2, -5$ が互いに素だから)」という整数の基本的な性質を用いることがポイントとなる。 また、図形的に「平行線群の隙間を埋める」という視点を持つと、見通しよく解くことができる。

答え

$$ \frac{\sqrt{29}}{58} $$

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