トップ 東京大学 1994年 理系 第6問

東京大学 1994年 理系 第6問 解説

数学2/図形と式テーマ/軌跡・領域テーマ/場合分けテーマ/存在証明
東京大学 1994年 理系 第6問 解説

方針・初手

与えられた距離 $d(P, Q)$ は、各座標の差の絶対値の和で定義される、いわゆる「マンハッタン距離」である。 (1) は定義に従って立式し、$x, y$ それぞれの絶対値を外すために正負や大小で場合分けを行う。 (2) も同様に立式する。方程式 $d(O,P) = d(P,Q)$ を満たす $a \geqq 0$ の存在条件を考える際、$f(a) = d(P,Q)$ が連続関数であり $a \to \infty$ で $f(a) \to \infty$ となることに着目し、「$f(a) \leqq d(O,P)$ を満たす $a \geqq 0$ が存在する」という同値な条件に言い換えて処理する。

解法1

(1)

点 $P(x,y)$ に対し、$d(O, P) = |x| + |y|$、$d(P, A) = |x - 1| + |y - 1|$ である。 条件 $d(O, P) = d(P, A)$ より、次の方程式を得る。

$$ |x| + |y| = |x - 1| + |y - 1| $$

これを $x$ と $y$ について分離し、次のように変形する。

$$ |x| - |x - 1| = |y - 1| - |y| $$

左辺を $f(x)$、右辺を $g(y)$ とおく。それぞれの関数は絶対値の中身の正負によって次のように表される。

$$ f(x) = \begin{cases} -1 & (x < 0) \\ 2x - 1 & (0 \leqq x \leqq 1) \\ 1 & (x > 1) \end{cases} $$

$$ g(y) = \begin{cases} 1 & (y < 0) \\ -2y + 1 & (0 \leqq y \leqq 1) \\ -1 & (y > 1) \end{cases} $$

方程式 $f(x) = g(y)$ を満たす $(x, y)$ の範囲は、以下の3つの場合に分けて求められる。

(i)

$f(x) = -1$ かつ $g(y) = -1$ のとき $x < 0$ かつ $y > 1$ である。(境界の接続を考慮すると $x \leqq 0$ かつ $y \geqq 1$ としても等式を満たす)

(ii)

$f(x) = 1$ かつ $g(y) = 1$ のとき $x > 1$ かつ $y < 0$ である。(境界の接続を考慮すると $x \geqq 1$ かつ $y \leqq 0$ としても等式を満たす)

(iii)

$-1 \leqq f(x) \leqq 1$ かつ $-1 \leqq g(y) \leqq 1$ のとき $0 \leqq x \leqq 1$ かつ $0 \leqq y \leqq 1$ である。このとき $2x - 1 = -2y + 1$ より $x + y = 1$ となる。

したがって、求める点 $P(x,y)$ の範囲は、領域 $x \leqq 0$ かつ $y \geqq 1$、領域 $x \geqq 1$ かつ $y \leqq 0$、およびそれらを結ぶ線分 $x + y = 1 \ (0 \leqq x \leqq 1)$ の和集合である。

(2)

条件 $(\ast)$ より、点 $P(x,y)$ は次を満たす。

$$ |x| + |y| = |x - a| + |y - (a^2 + 1)| $$

関数 $f(a) = |x - a| + |y - a^2 - 1|$ を考える。$f(a)$ は $a \geqq 0$ において連続であり、$\lim_{a \to \infty} f(a) = \infty$ である。 したがって、中間値の定理より、$f(a) = |x| + |y|$ を満たす $a \geqq 0$ が存在する条件は、次のように言い換えられる。

$$ \text{「} f(a) \leqq |x| + |y| \text{ を満たす } a \geqq 0 \text{ が存在する」} $$

すなわち、不等式 $|x - a| - |x| + |y - a^2 - 1| - |y| \leqq 0$ を満たす $a \geqq 0$ の存在条件を求めればよい。これを $x, y$ の符号で場合分けする。

(I)

$x \leqq 0$ かつ $y \leqq 0$ のとき $|x| = -x$、$|y| = -y$ であり、$a \geqq 0$ に対して $|x - a| = a - x$、$|y - a^2 - 1| = a^2 + 1 - y$ となる。 不等式の左辺は $(a - x) - (-x) + (a^2 + 1 - y) - (-y) = a^2 + a + 1$ となる。 $a \geqq 0$ において常に $a^2 + a + 1 > 0$ であるため、条件を満たす $a$ は存在しない。

(II)

$x \leqq 0$ かつ $y > 0$ のとき $|x - a| - |x| = a$ である。不等式は $a + |y - a^2 - 1| - y \leqq 0$ となる。 $y \geqq 1$ のとき、$a=0$ とすると $0 + |y - 1| - y = -1 \leqq 0$ となり成立する。 $0 < y < 1$ のとき、$a^2 + 1 > y$ より絶対値が外れ、$a + a^2 + 1 - y - y \leqq 0$ より $a^2 + a + 1 - 2y \leqq 0$ となる。 $a \geqq 0$ における左辺の最小値は $a=0$ のとき $1 - 2y$ であるから、$1 - 2y \leqq 0$ すなわち $y \geqq \frac{1}{2}$ のとき条件を満たす $a$ が存在する。 以上より、この範囲の条件は $y \geqq \frac{1}{2}$ である。

(III)

$x > 0$ かつ $y \leqq 0$ のとき $|y - a^2 - 1| - |y| = a^2 + 1$ である。不等式は $|x - a| - x + a^2 + 1 \leqq 0$ となる。 $0 \leqq a \leqq x$ のとき、左辺は $a^2 - a + 1 = (a - \frac{1}{2})^2 + \frac{3}{4} > 0$ となり不適。 $a > x$ のとき、左辺は $a^2 + a + 1 - 2x$ となり、$a > x \geqq 0$ で単調増加するため、下限は $x^2 - x + 1 > 0$ となり不適。 よって、条件を満たす $a$ は存在しない。

(IV)

$x > 0$ かつ $y > 0$ のとき 不等式は $|x - a| - x + |y - a^2 - 1| - y \leqq 0$ となる。 $y \geqq 1$ のとき、$a=0$ とすると $x - x + y - 1 - y = -1 \leqq 0$ となり成立する。 $0 < y < 1$ のとき、$a^2 + 1 > y$ より絶対値が外れ、次のように関数 $h(a)$ を定義して $h(a) \leqq 0$ となる $a \geqq 0$ を探す。

$$ h(a) = |x - a| - x + a^2 + 1 - 2y = \begin{cases} a^2 - a + 1 - 2y & (0 \leqq a \leqq x) \\ a^2 + a + 1 - 2x - 2y & (a > x) \end{cases} $$

$a \geqq 0$ における $h(a)$ の最小値が $0$ 以下になればよい。 $0 < x \leqq \frac{1}{2}$ のとき、$h(a)$ は $a=x$ で最小値 $x^2 - x + 1 - 2y$ をとる。条件は $2y \geqq x^2 - x + 1$ より $y \geqq \frac{1}{2}(x^2 - x + 1)$ である。 $x > \frac{1}{2}$ のとき、$h(a)$ は $a=\frac{1}{2}$ で最小値 $\frac{3}{4} - 2y$ をとる。条件は $2y \geqq \frac{3}{4}$ より $y \geqq \frac{3}{8}$ である。

以上 (I) 〜 (IV) より、各区間における境界は連続して繋がる。

解説

マンハッタン距離に関する軌跡・領域問題である。 (1) では、方程式から絶対値を外す際、関数として分離することで視覚的にも論理的にも整理しやすくなる。通常のユークリッド距離とは異なり、等距離領域が「線分」だけでなく「面積を持った領域」として広がる点に注意が必要である。 (2) は、方程式を満たすパラメータの存在条件を問う難問である。そのまま絶対値を外そうとすると場合分けが膨大になるが、距離の関数が連続であり無限大に発散することから、中間値の定理を用いて「最小値が等辺の長さ以下になる」または「不等式を満たす点が存在する」という条件に言い換えるのが最も有効なアプローチである。

答え

(1)

点 $P(x,y)$ の範囲は、以下の3つの部分の和集合である(境界を含む)。

(2)

点 $P(x,y)$ の範囲は、以下の不等式で表される領域である(境界を含む)。

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。