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東京大学 2000年 理系 第4問 解説

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東京大学 2000年 理系 第4問 解説

方針・初手

点 $P$ と線分 $QR$ がぶつかる(交点をもつ)とは、ある時刻 $t$ において、点 $P$ の座標と線分 $QR$ 上の点の座標が一致することである。 線分 $QR$ 上の点は、$x$ 座標が常に $1-vt$ であり、$y$ 座標は $\frac{\sqrt{3}}{2}$ 以上 $1$ 以下の範囲を動く。したがって、ぶつかる条件は $x$ 座標が等しく、かつ点 $P$ の $y$ 座標が線分 $QR$ の $y$ 座標の範囲に収まることとして立式できる。 $y$ 座標の条件から衝突しうる時刻 $t$ の範囲を絞り込んだ上で、$x$ 座標の条件式から定数 $v$ を分離し、関数の値域を調べる方針をとる。

解法1

点 $P$ が線分 $QR$ とぶつかるための条件は、時刻 $t$ において以下の連立方程式・不等式を満たすことである。

$$ \begin{cases} \cos t = 1 - vt \\ \frac{\sqrt{3}}{2} \leqq \sin t \leqq 1 \end{cases} $$

時刻は $0$ から $2\pi$ までの間であるから、$0 \leqq t \leqq 2\pi$ とする。 この範囲において、第2式の $y$ 座標の条件 $\frac{\sqrt{3}}{2} \leqq \sin t \leqq 1$ を満たす $t$ の範囲は以下のようになる。

$$ \frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3} $$

この区間において $t \neq 0$ であるから、第1式を変形して $v$ について解くことができる。

$$ v = \frac{1 - \cos t}{t} $$

ここで、関数 $f(t) = \frac{1 - \cos t}{t}$ とおき、区間 $\frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3}$ における $f(t)$ の増減を調べる。 $f(t)$ を $t$ で微分すると、

$$ f'(t) = \frac{\sin t \cdot t - (1 - \cos t) \cdot 1}{t^2} = \frac{t \sin t + \cos t - 1}{t^2} $$

となる。$f'(t)$ の符号を調べるために、分子を $g(t) = t \sin t + \cos t - 1$ とおいてさらに微分する。

$$ g'(t) = \sin t + t \cos t - \sin t = t \cos t $$

区間 $\frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3}$ において $t > 0$ であるから、$g'(t)$ の符号は $\cos t$ の符号と一致する。 したがって、 $\frac{\pi}{3} \leqq t < \frac{\pi}{2}$ のとき $\cos t > 0$ より $g'(t) > 0$ $t = \frac{\pi}{2}$ のとき $\cos t = 0$ より $g'(t) = 0$ $\frac{\pi}{2} < t \leqq \frac{2\pi}{3}$ のとき $\cos t < 0$ より $g'(t) < 0$ となるため、$g(t)$ は $t = \frac{\pi}{2}$ で最大となる。

$g(t)$ の最小値の候補は区間の両端である $t = \frac{\pi}{3}$ と $t = \frac{2\pi}{3}$ の値である。それぞれ計算すると、

$$ g\left(\frac{\pi}{3}\right) = \frac{\pi}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{1}{2} - 1 = \frac{\sqrt{3}\pi - 3}{6} $$

$$ g\left(\frac{2\pi}{3}\right) = \frac{2\pi}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{1}{2} - 1 = \frac{2\sqrt{3}\pi - 9}{6} $$

となる。ここで $\sqrt{3} > 1.7, \pi > 3.1$ であることから、$\sqrt{3}\pi > 5.27$ と評価できる。 これを用いると、 $\sqrt{3}\pi - 3 > 5.27 - 3 = 2.27 > 0$ $2\sqrt{3}\pi - 9 > 10.54 - 9 = 1.54 > 0$ となり、いずれも正である。 よって、区間 $\frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3}$ において常に $g(t) > 0$ であることが示された。

$g(t) > 0$ より、この区間において常に $f'(t) > 0$ となるため、$f(t)$ は単調増加関数である。 区間の両端における $f(t)$ の値は、

$$ f\left(\frac{\pi}{3}\right) = \frac{1 - \frac{1}{2}}{\frac{\pi}{3}} = \frac{3}{2\pi} $$

$$ f\left(\frac{2\pi}{3}\right) = \frac{1 - \left(-\frac{1}{2}\right)}{\frac{2\pi}{3}} = \frac{9}{4\pi} $$

したがって、関数 $f(t)$ の値域は $\frac{3}{2\pi} \leqq f(t) \leqq \frac{9}{4\pi}$ となる。

(1) 点 $P$ と線分 $QR$ がぶつからない条件は、方程式 $v = f(t)$ が区間 $\frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3}$ において解を持たないことである。 $v$ は正の定数であることに注意すると、求める範囲は

$$ 0 < v < \frac{3}{2\pi}, \quad v > \frac{9}{4\pi} $$

(2) 点 $P$ と線分 $QR$ がただ一度だけぶつかる条件は、方程式 $v = f(t)$ が区間 $\frac{\pi}{3} \leqq t \leqq \frac{2\pi}{3}$ においてただ $1$ つの解を持つことである。 $f(t)$ はこの区間で単調増加であるから、値域に含まれていればただ $1$ 回だけ交わる。 よって、求める範囲は

$$ \frac{3}{2\pi} \leqq v \leqq \frac{9}{4\pi} $$

解説

条件を数式に翻訳したあと、定数 $v$ を分離して $v = f(t)$ の形に持ち込む「定数分離」の典型的な問題である。 関数 $f(t)$ を微分した際に、導関数 $f'(t)$ の符号がすぐには判別できない形になる。その際、符号を決定する分子の部分だけを取り出して新しい関数 $g(t)$ とおき、さらにもう一度微分して $g(t)$ の増減や最小値を調べるという手法も、微分法の応用として頻出の処理である。 途中で $\sqrt{3}\pi$ と有理数の大小比較が現れるが、$\sqrt{3} \approx 1.732, \pi \approx 3.14$ といったおおよその値を用いて評価すれば十分に正であることが確認できる。

答え

(1)

$0 < v < \frac{3}{2\pi}$ または $\frac{9}{4\pi} < v$

(2)

$\frac{3}{2\pi} \leqq v \leqq \frac{9}{4\pi}$

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