東京大学 2003年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) 点 $A, B, P$ に対応する複素数を用いて、$\frac{z_B - z_P}{z_A - z_P}$ の値を計算し、その偏角を調べることで $\angle APB$ を求める。 (2) 線分 $OP$ の長さは、点 $P$ を表す複素数 $z$ の絶対値 $|z|$ である。これを直接 $t$ の関数と見て微分法で最大値を求める方法と、(1) の結果から点 $P$ の軌跡が円弧であることを利用し、図形的に最大となる位置を特定する方法の2通りが考えられる。
解法1
(1) 点 $A, B, P$ を表す複素数をそれぞれ $z_A, z_B, z_P$ とする。 問題の条件より、$z_A = 6, z_B = 7+7i$ であり、
$$ z_P = \frac{14(t-3)}{(1-i)t-7} $$
である。このとき、$z_B - z_P$ および $z_A - z_P$ をそれぞれ計算する。
分子 $z_B - z_P$ について
$$ z_B - z_P = 7+7i - \frac{14(t-3)}{(1-i)t-7} = \frac{(7+7i)\{(1-i)t-7\} - 14(t-3)}{(1-i)t-7} $$
ここで、$(7+7i)(1-i) = 7(1+i)(1-i) = 14$ であるから、分子の分子は次のように整理できる。
$$ 14t - 7(7+7i) - 14t + 42 = -49 - 49i + 42 = -7 - 49i = -7(1+7i) $$
分母 $z_A - z_P$ について
$$ z_A - z_P = 6 - \frac{14(t-3)}{(1-i)t-7} = \frac{6\{(1-i)t-7\} - 14(t-3)}{(1-i)t-7} $$
同様に分子を整理すると、
$$ 6(1-i)t - 42 - 14t + 42 = (6 - 6i - 14)t = (-8 - 6i)t = -2t(4+3i) $$
したがって、これらの比をとると分母の $(1-i)t-7$ が約分され、次のようになる。
$$ \frac{z_B - z_P}{z_A - z_P} = \frac{-7(1+7i)}{-2t(4+3i)} = \frac{7}{2t} \cdot \frac{1+7i}{4+3i} $$
ここで、$\frac{1+7i}{4+3i}$ の分母を実数化する。
$$ \frac{1+7i}{4+3i} = \frac{(1+7i)(4-3i)}{4^2 + 3^2} = \frac{4 - 3i + 28i - 21i^2}{25} = \frac{25+25i}{25} = 1+i $$
よって、次を得る。
$$ \frac{z_B - z_P}{z_A - z_P} = \frac{7}{2t}(1+i) $$
$t$ は正の実数であるから $\frac{7}{2t} > 0$ である。ゆえに、
$$ \arg\left(\frac{z_B - z_P}{z_A - z_P}\right) = \arg(1+i) = \frac{\pi}{4} $$
これより、$\angle APB = \frac{\pi}{4}$ である。
(2) 線分 $OP$ の長さの2乗 $|z_P|^2$ を考える。
$$ |z_P|^2 = \left| \frac{14(t-3)}{(t-7)-it} \right|^2 = \frac{196(t-3)^2}{(t-7)^2 + (-t)^2} = \frac{196(t^2-6t+9)}{2t^2-14t+49} $$
$f(t) = \frac{t^2-6t+9}{2t^2-14t+49}$ とおき、$t>0$ における $f(t)$ の最大値を求める。商の微分法より、
$$ \begin{aligned} f'(t) &= \frac{(t^2-6t+9)'(2t^2-14t+49) - (t^2-6t+9)(2t^2-14t+49)'}{(2t^2-14t+49)^2} \\ &= \frac{(2t-6)(2t^2-14t+49) - (t^2-6t+9)(4t-14)}{(2t^2-14t+49)^2} \\ &= \frac{2(t-3)(2t^2-14t+49) - 2(t-3)^2(2t-7)}{(2t^2-14t+49)^2} \end{aligned} $$
分子を共通因数 $2(t-3)$ でくくって整理する。
$$ \begin{aligned} \text{分子} &= 2(t-3) \{ (2t^2-14t+49) - (t-3)(2t-7) \} \\ &= 2(t-3) \{ (2t^2-14t+49) - (2t^2-13t+21) \} \\ &= 2(t-3)(-t+28) \end{aligned} $$
したがって、$f'(t) = 0$ となるのは $t=3, 28$ のときである。$t>0$ における増減表は以下のようになる。
| $t$ | $(0)$ | $\cdots$ | $3$ | $\cdots$ | $28$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(t)$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
| $f(t)$ | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
増減表より、$f(t)$ は $t=28$ で最大値をとる。 $|z_P|^2$ が最大となるとき、$|z_P|$ すなわち線分 $OP$ の長さも最大となるため、求める $t$ の値は $28$ である。
解法2
(2) の別解 (1) より、$\arg\left(\frac{z_B - z_P}{z_A - z_P}\right) = \frac{\pi}{4}$ であるから、点 $P$ は線分 $AB$ を見込む角が $\frac{\pi}{4}$ となる円周上にある。この円を $C$、その中心を表す複素数を $c$ とおく。
円周角の定理により、中心角は円周角の2倍の $\frac{\pi}{2}$ である。また、偏角が正の $\frac{\pi}{4}$ であることから、点 $P$ から見て $A$ から $B$ へ反時計回りに $\frac{\pi}{4}$ 回転する位置関係にある。よって、中心 $C$ から見ても $A$ から $B$ へ反時計回りに $\frac{\pi}{2}$ 回転することになる。 したがって、$z_B - c = e^{i\frac{\pi}{2}}(z_A - c) = i(z_A - c)$ が成り立つ。
これに $z_A = 6, z_B = 7+7i$ を代入して $c$ について解く。
$$ 7+7i - c = i(6-c) $$
$$ (1-i)c = -7-7i+6i = -7-i $$
$$ c = \frac{-7-i}{1-i} = \frac{(-7-i)(1+i)}{1^2+(-1)^2} = \frac{-7-7i-i+1}{2} = \frac{-6-8i}{2} = -3-4i $$
中心 $C$ は $-3-4i$ ではなく、計算ミスを修正する。 正しくは、 $7+7i - c = i(6-c)$ $c(i-1) = 6i - 7 - 7i = -7 - i$
$$ c = \frac{-7-i}{-1+i} = \frac{7+i}{1-i} = \frac{(7+i)(1+i)}{1^2+(-1)^2} = \frac{7+7i+i-1}{2} = \frac{6+8i}{2} = 3+4i $$
中心 $C$ は $3+4i$ であり、半径 $r$ は $r = |z_A - c| = |6 - (3+4i)| = |3-4i| = 5$ である。 したがって、点 $P$ は円 $|z - (3+4i)| = 5$ の周上を動く。 円の中心 $3+4i$ と原点 $O$ との距離は $|3+4i| = 5$ であるため、この円は原点を通る。
点 $P$ がこの円周上を動くとき、線分 $OP$ の長さが最大となるのは、原点 $O$、中心 $C$、点 $P$ がこの順に一直線上に並ぶときであり、そのときの点 $P$ を表す複素数は
$$ z_P = 2(3+4i) = 6+8i $$
である。最後に、この $z_P$ を与える正の実数 $t$ が存在するかを確認する。
$$ z_P = \frac{14(t-3)}{(1-i)t-7} $$
を $t$ について解く。
$$ z_P \{ (1-i)t - 7 \} = 14t - 42 $$
$$ t \{ (1-i)z_P - 14 \} = 7z_P - 42 $$
$$ t = \frac{7(z_P-6)}{(1-i)z_P - 14} $$
$z_P = 6+8i$ を代入する。
$$ \begin{aligned} t &= \frac{7(6+8i - 6)}{(1-i)(6+8i) - 14} \\ &= \frac{56i}{6+8i-6i+8-14} \\ &= \frac{56i}{2i} = 28 \end{aligned} $$
$t=28$ は正の実数であり、条件を満たす。 よって、線分 $OP$ の長さが最大になる $t$ は $28$ である。
解説
(1)では式の形から複素数の絶対値と偏角を求める定石の計算が求められる。分母・分子をそれぞれ計算してから割り算を行うと計算ミスを防ぎやすい。 (2)は(1)の「円周角が一定である」という結果から、点 $P$ の軌跡が円弧になることを見抜く図形的解法(解法2)が作問者の意図に近い美しいアプローチである。しかし、軌跡の考察に自信がない場合は、実数関数に落とし込んで微分する解析的解法(解法1)も非常に有力かつ確実な手段となる。
答え
(1)
$$ \frac{\pi}{4} $$
(2)
$$ t = 28 $$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。
/04072302.png)
/04072303.png)
/04102118.png)
/05031501.png)
/14041201.png)
/16091801.png)





