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東京大学 2005年 理系 第2問 解説

数学C/複素数平面テーマ/軌跡・領域テーマ/最大・最小
東京大学 2005年 理系 第2問 解説

方針・初手

与えられた条件 $w = z^2 - 2z$ は、平方完成により $w + 1 = (z - 1)^2$ と変形できる。$w$ を固定したとき、この $z$ についての2次方程式の解は $z = 1 \pm \alpha$(ただし $\alpha^2 = w + 1$)と表せる。 集合 $T$ の条件は、この2つの解がどちらも $|z| \leqq \frac{5}{4}$ を満たすことであると言い換えられる。この条件を $\alpha$ についての不等式に翻訳し、$|w| = |\alpha^2 - 1|$ の最大値を考える。絶対値の積の性質を利用すると簡潔に解くことができる。

解法1

$w = z^2 - 2z$ を変形すると、$w + 1 = (z - 1)^2$ となる。 $w$ を固定したとき、$\alpha^2 = w + 1$ を満たす複素数 $\alpha$ を一つ定めると、対応する $z$ の値は $z = 1 + \alpha, 1 - \alpha$ の2つ存在する($\alpha = 0$ のときは重解)。 集合 $T$ の定義より、$w \in T$ であるための条件は、これら2つの $z$ がともに $|z| \leqq \frac{5}{4}$ を満たすことである。 すなわち、

$$ |1 + \alpha| \leqq \frac{5}{4} \quad \text{かつ} \quad |1 - \alpha| \leqq \frac{5}{4} $$

が成り立つことである。

ここで、$w$ の絶対値 $|w|$ を考える。 $w = \alpha^2 - 1 = (\alpha - 1)(\alpha + 1)$ であるから、複素数の絶対値の性質より、

$$ |w| = |\alpha - 1||\alpha + 1| $$

が成り立つ。 さらに、$|\alpha - 1| = |1 - \alpha|$、$|\alpha + 1| = |1 + \alpha|$ であるため、

$$ |w| = |1 - \alpha||1 + \alpha| $$

となる。 前提条件より $|1 - \alpha| \leqq \frac{5}{4}$ および $|1 + \alpha| \leqq \frac{5}{4}$ であるから、これらの辺々を掛けて、

$$ |w| \leqq \frac{5}{4} \cdot \frac{5}{4} = \frac{25}{16} $$

を得る。

この等号が成立するのは、$|1 - \alpha| = \frac{5}{4}$ かつ $|1 + \alpha| = \frac{5}{4}$ を満たす $\alpha$ が存在するときである。 これは複素数平面上で、点 $\alpha$ が点 $1$ と点 $-1$ の両方から距離 $\frac{5}{4}$ の位置にあることを意味する。 点 $1$ と点 $-1$ から等距離にある点は虚軸上に存在するため、$\alpha = yi$ ($y$ は実数) とおける。 $|1 + yi| = \frac{5}{4}$ より、

$$ 1^2 + y^2 = \frac{25}{16} $$

$$ y^2 = \frac{9}{16} $$

$$ y = \pm \frac{3}{4} $$

したがって、$\alpha = \pm \frac{3}{4}i$ のとき等号が成立する。 このとき、$w$ の値は、

$$ w = \alpha^2 - 1 = \left(\pm \frac{3}{4}i\right)^2 - 1 = -\frac{9}{16} - 1 = -\frac{25}{16} $$

となり、確かに等号を満たす $w$ が存在する。 ゆえに、$|w|$ が最大になるような $w$ の値は $-\frac{25}{16}$ である。

解法2

(解法1と同様にして、$w \in T$ の条件が $|1 + \alpha| \leqq \frac{5}{4}$ かつ $|1 - \alpha| \leqq \frac{5}{4}$ であることを導く)

$\alpha = x + yi$ ($x, y$ は実数) とおく。条件は以下の2つの不等式を満たすことである。

$$ (x+1)^2 + y^2 \leqq \frac{25}{16} $$

$$ (x-1)^2 + y^2 \leqq \frac{25}{16} $$

この領域は $x$ 軸および $y$ 軸に関して対称であるため、最大値を考えるうえでは $x \geqq 0, y \geqq 0$ の範囲で考えても一般性を失わない。 $x \geqq 0, y \geqq 0$ においては、$(x+1)^2 + y^2 \leqq \frac{25}{16}$ の方が厳しい条件となるため、

$$ y^2 \leqq \frac{25}{16} - (x+1)^2 = \frac{9}{16} - 2x - x^2 $$

を満たす。また $y^2 \geqq 0$ より $x \geqq 0$ と合わせて $0 \leqq x \leqq \frac{1}{4}$ である。

このとき、$w = \alpha^2 - 1 = (x^2 - y^2 - 1) + 2xyi$ であるから、$|w|^2$ は次のように表される。

$$ |w|^2 = (x^2 - y^2 - 1)^2 + (2xy)^2 = (x^2 + y^2)^2 - 2(x^2 - y^2) + 1 $$

$x$ を固定して考えると、$|w|^2$ は $y^2$ について単調増加である。したがって、$|w|^2$ は境界線 $y^2 = \frac{9}{16} - 2x - x^2$ 上で最大となる。 これを代入すると、

$$ x^2 + y^2 = \frac{9}{16} - 2x $$

$$ x^2 - y^2 = x^2 - \left(\frac{9}{16} - 2x - x^2\right) = 2x^2 + 2x - \frac{9}{16} $$

となるので、$|w|^2$ を $x$ のみの式で表すと、

$$ \begin{aligned} |w|^2 &= \left(\frac{9}{16} - 2x\right)^2 - 2\left(2x^2 + 2x - \frac{9}{16}\right) + 1 \\ &= \left(4x^2 - \frac{9}{4}x + \frac{81}{256}\right) - 4x^2 - 4x + \frac{9}{8} + 1 \\ &= -\frac{25}{4}x + \frac{625}{256} \end{aligned} $$

$0 \leqq x \leqq \frac{1}{4}$ において、この式は $x = 0$ のとき最大値 $\frac{625}{256}$ をとる。 $x = 0$ のとき、境界線の式より $y^2 = \frac{9}{16}$ であり、$y \geqq 0$ より $y = \frac{3}{4}$ である。すなわち $\alpha = \frac{3}{4}i$ となる。 対称性を含めると $\alpha = \pm \frac{3}{4}i$ のときであり、対応する $w$ は、

$$ w = \left(\pm \frac{3}{4}i\right)^2 - 1 = -\frac{25}{16} $$

よって、最大となる $w$ の値は $-\frac{25}{16}$ である。

解説

複素数の軌跡や領域の問題では、条件式をそのまま $z = x + yi$ と置いて計算すると次数が高くなり泥沼に陥りやすくなる。本問のように $w = (z - 1)^2 - 1$ と平方完成できる場合は、$z - 1$ を一つの塊($\alpha$)として捉えることで見通しが格段に良くなる。 解法1は、$|ab| = |a||b|$ という絶対値の積の性質を利用し、式を要素ごとに分解して不等式を適用する鮮やかな解法である。解法2のように実部と虚部に分けて領域における2変数関数の最大・最小問題に帰着させる手法も、図形的な条件を数式で確実に処理できるため強力である。

答え

$$ w = -\frac{25}{16} $$

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