北海道大学 2013年 理系 第3問 解説

方針・初手
与えられた式 $z = \frac{w-1}{w+1}$ を $w$ について解き、$z = x+yi$ を代入して実部 $s$ と虚部 $t$ を $x, y$ の式で表す。 得られた $s, t$ の式を条件 $0 \leqq s \leqq 1$ および $0 \leqq t \leqq 1$ に代入し、$x, y$ が満たす不等式を導出する。 その不等式が表す領域 $D$ を座標平面上に図示し、領域内における直線 $y = 5x + k$ の $y$ 切片 $k$ の最小値を考える。
解法1
(1)
$z = \frac{w-1}{w+1}$ について、分母を払うと
$$ z(w+1) = w-1 $$
$$ (z-1)w = -z-1 $$
$z=1$ とすると $0 = -2$ となり矛盾するため、$z \neq 1$ である。 両辺を $z-1$ で割ると
$$ w = \frac{-(z+1)}{z-1} = \frac{z+1}{1-z} $$
これに $z = x+yi$ を代入する。
$$ \begin{aligned} w &= \frac{1+x+yi}{1-x-yi} \\ &= \frac{(1+x+yi)(1-x+yi)}{(1-x-yi)(1-x+yi)} \\ &= \frac{(1+x)(1-x) + yi(1-x) + yi(1+x) + (yi)^2}{(1-x)^2+y^2} \\ &= \frac{1-x^2-y^2 + 2yi}{(1-x)^2+y^2} \end{aligned} $$
$w = s+ti$ であり、$x, y, s, t$ は実数であるから、実部と虚部を比較して
$$ s = \frac{1-x^2-y^2}{(1-x)^2+y^2}, \quad t = \frac{2y}{(1-x)^2+y^2} $$
(2)
$z \neq 1$ より $(x, y) \neq (1, 0)$ であり、$(1-x)^2+y^2 > 0$ である。 $0 \leqq s \leqq 1$ より
$$ 0 \leqq \frac{1-x^2-y^2}{(1-x)^2+y^2} \leqq 1 $$
各辺に正の値である $(1-x)^2+y^2$ を掛けて
$$ 0 \leqq 1-x^2-y^2 \leqq (1-x)^2+y^2 $$
左側の不等式から
$$ x^2+y^2 \leqq 1 \quad \cdots \text{①} $$
右側の不等式から $1-x^2-y^2 \leqq 1-2x+x^2+y^2$ より
$$ 2x^2-2x+2y^2 \geqq 0 \iff \left(x-\frac{1}{2}\right)^2+y^2 \geqq \frac{1}{4} \quad \cdots \text{②} $$
次に $0 \leqq t \leqq 1$ より
$$ 0 \leqq \frac{2y}{(1-x)^2+y^2} \leqq 1 $$
各辺に $(1-x)^2+y^2$ を掛けて
$$ 0 \leqq 2y \leqq (1-x)^2+y^2 $$
左側の不等式から
$$ y \geqq 0 \quad \cdots \text{③} $$
右側の不等式から $2y \leqq 1-2x+x^2+y^2$ より
$$ (x-1)^2+(y-1)^2 \geqq 1 \quad \cdots \text{④} $$
領域 $D$ は、不等式①〜④をすべて満たす $(x, y)$ の集合である。 各境界となる円を $C_1: x^2+y^2=1$, $C_2: \left(x-\frac{1}{2}\right)^2+y^2=\frac{1}{4}$, $C_3: (x-1)^2+(y-1)^2=1$ とする。 これらの交点を求める。 $C_2$ と $C_3$ について、$x^2+y^2-x=0$ と $x^2+y^2-2x-2y+1=0$ の辺々を引くと $x+2y-1=0 \implies x=1-2y$。 これを $C_2$ の式に代入して整理すると $y(5y-2)=0$ となり、$y=0, \frac{2}{5}$。 $y=\frac{2}{5}$ のとき $x=\frac{1}{5}$ であり、交点 $\left(\frac{1}{5}, \frac{2}{5}\right)$ を得る。 点 $\left(\frac{1}{5}, \frac{2}{5}\right)$ は $x^2+y^2 = \frac{1}{25}+\frac{4}{25} = \frac{1}{5} \leqq 1$ を満たし、円 $C_1$ の内部にある。
第1象限($x \geqq 0, y \geqq 0$)において、①〜④を満たす領域は、 $0 \leqq x \leqq \frac{1}{5}$ の範囲で、$C_2$ の上側の弧 $y = \sqrt{x-x^2}$ と $C_3$ の下側の弧 $y = 1-\sqrt{2x-x^2}$ に囲まれた部分となる。 第2象限($x \leqq 0, y \geqq 0$)においては、②と④は常に満たされるため、①と③を満たす四分円となる。 したがって、領域 $D$ は以下の境界線で囲まれた図形である。(図示はこれを座標平面に描く)
・ $x \leqq 0$ における $x^2+y^2 \leqq 1$ かつ $y \geqq 0$ の部分(四分円) ・ $0 \leqq x \leqq \frac{1}{5}$ における $\sqrt{x-x^2} \leqq y \leqq 1-\sqrt{2x-x^2}$ の部分 (境界線を含む。点 $(1,0)$ は領域外であるため含まない)
(3)
$k = -5x+y$ とおくと、$y = 5x+k$ である。 これは傾き $5$、 $y$ 切片 $k$ の直線を表す。点 $P(x, y)$ が領域 $D$ を動くときの $k$ の最小値を求める。
$x \leqq 0$ の範囲では、$-5x \geqq 0$ かつ $y \geqq 0$ より $k \geqq 0$ である。 $x > 0$ の範囲($0 < x \leqq \frac{1}{5}$)においては、領域 $D$ の点 $(x, y)$ は $y \geqq \sqrt{x-x^2}$ を満たす。 したがって、
$$ k = -5x+y \geqq -5x+\sqrt{x-x^2} $$
が成り立つ。ここで $f(x) = -5x+\sqrt{x-x^2}$ とおく。 関数 $g(x) = \sqrt{x-x^2}$ のグラフは上に凸であるため、一次関数との和である $f(x)$ の区間 $\left[0, \frac{1}{5}\right]$ における最小値は、必ず区間の両端点のいずれかでとる。 端点の値を比較すると、
$$ f(0) = 0 $$
$$ f\left(\frac{1}{5}\right) = -5\left(\frac{1}{5}\right) + \sqrt{\frac{1}{5}-\frac{1}{25}} = -1 + \frac{2}{5} = -\frac{3}{5} $$
よって、区間 $\left[0, \frac{1}{5}\right]$ において $f(x) \geqq -\frac{3}{5}$ が成り立つ。 領域全体を通じて最小値は $-\frac{3}{5}$ であり、これは直線 $y = 5x+k$ が点 $\left(\frac{1}{5}, \frac{2}{5}\right)$ を通るときに最小となることを示している。
解説
複素数平面の変換と領域を図示する典型的な問題である。 (1)では $z \neq 1$ であることの確認を忘れないようにする。(2)で得られる不等式は円を表すものが多く、交点を正確に求めることが領域の形を決定する上で重要になる。特に第1象限における境界がどの円弧から構成されるかの判断が鍵となる。 (3)は線形計画法の問題に帰着されるが、境界となる曲線が上に凸であることを利用すると、最小値を与える点が端点に絞られるため、微分の計算を回避して簡潔に記述できる。
答え
(1)
$$ w = \frac{z+1}{1-z} $$
$$ s = \frac{1-x^2-y^2}{(1-x)^2+y^2}, \quad t = \frac{2y}{(1-x)^2+y^2} $$
(2) 境界線を含む以下の領域(点 $(1,0)$ は除く)。 ・ $x \leqq 0$ における $x^2+y^2 \leqq 1$ かつ $y \geqq 0$ を満たす部分 ・ $0 \leqq x \leqq \frac{1}{5}$ における $\sqrt{x-x^2} \leqq y \leqq 1-\sqrt{2x-x^2}$ を満たす部分
(3)
$$ -\frac{3}{5} $$
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