東京大学 2005年 理系 第3問 解説

方針・初手
- (1)は関数 $f(x)$ を微分し、$f'(x)$ の上限と下限を評価する。上限については式の形から直ちにわかり、下限については $f'(x)$ の増減をさらに調べるために2次導関数を計算する。
- (2)は漸化式で定まる数列の極限の典型問題である。(1)の結果を利用して、平均値の定理から $|x_{n+1} - 1| \leqq r |x_n - 1|$ ($0 < r < 1$) の形を導く。(1)の条件を適用するために、すべての $n$ に対して $x_n > \frac{1}{2}$ であることを数学的帰納法で示す。
解法1
(1)
与えられた関数 $f(x)$ は以下のように変形できる。
$$ f(x) = \frac{1}{2}x + \frac{1}{2}xe^{-2(x-1)} $$
これを $x$ で微分する。
$$ \begin{aligned} f'(x) &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}e^{-2(x-1)} + \frac{1}{2}x \cdot (-2)e^{-2(x-1)} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}e^{-2(x-1)} - xe^{-2(x-1)} \\ &= \frac{1}{2} + \left( \frac{1}{2} - x \right) e^{-2(x-1)} \end{aligned} $$
$x > \frac{1}{2}$ のとき、$\frac{1}{2} - x < 0$ であり、$e^{-2(x-1)} > 0$ であるから、
$$ \left( \frac{1}{2} - x \right) e^{-2(x-1)} < 0 $$
が成り立つ。したがって、
$$ f'(x) < \frac{1}{2} $$
が示された。
次に、$f'(x) \geqq 0$ であることを示すために、$g(x) = f'(x)$ とおき、$g(x)$ の増減を調べる。
$$ \begin{aligned} g'(x) &= -e^{-2(x-1)} + \left( \frac{1}{2} - x \right) \cdot (-2)e^{-2(x-1)} \\ &= -e^{-2(x-1)} - (1 - 2x)e^{-2(x-1)} \\ &= (2x - 2)e^{-2(x-1)} \\ &= 2(x - 1)e^{-2(x-1)} \end{aligned} $$
$x > \frac{1}{2}$ において $g'(x) = 0$ となるのは $x = 1$ のときである。このときの増減表は以下のようになる。
| $x$ | $\left(\frac{1}{2}\right)$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|
| $g'(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ | |
| $g(x)$ | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ |
ここで、$x = 1$ のときの $g(x)$ の値は、
$$ g(1) = \frac{1}{2} + \left( \frac{1}{2} - 1 \right) e^{0} = \frac{1}{2} - \frac{1}{2} = 0 $$
となる。増減表より、$x > \frac{1}{2}$ において $g(x)$ は $x = 1$ で最小値 $0$ をとるため、常に $g(x) \geqq 0$ である。 すなわち、$f'(x) \geqq 0$ である。
以上より、$x > \frac{1}{2}$ ならば $0 \leqq f'(x) < \frac{1}{2}$ であることが示された。
(2)
まず、すべての自然数 $n \geqq 0$ に対して $x_n > \frac{1}{2}$ となることを数学的帰納法を用いて示す。
(i)
$n = 0$ のとき 与えられた条件より $x_0 > \frac{1}{2}$ であり、成り立つ。
(ii)
$n = k$($k \geqq 0$)のとき $x_k > \frac{1}{2}$ が成り立つと仮定する。 (1)より、$x > \frac{1}{2}$ において $f'(x) \geqq 0$ であるから、$f(x)$ はこの範囲で単調増加する。($f'(x) = 0$ となるのは $x = 1$ のみであるから、狭義単調増加である) したがって、$x_k > \frac{1}{2}$ より、
$$ f(x_k) > f\left(\frac{1}{2}\right) $$
となる。ここで、$f\left(\frac{1}{2}\right)$ の値を計算すると、
$$ f\left(\frac{1}{2}\right) = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2} \left\{ 1 + e^{-2\left(\frac{1}{2} - 1\right)} \right\} = \frac{1}{4}(1 + e) $$
自然対数の底 $e$ は $e > 1$ を満たすため、$\frac{1}{4}(1 + e) > \frac{2}{4} = \frac{1}{2}$ である。 よって、$x_{k+1} = f(x_k) > \frac{1}{2}$ となり、$n = k+1$ のときも成り立つ。
(i), (ii) より、すべての $n \geqq 0$ に対して $x_n > \frac{1}{2}$ である。
次に、$x_n$ の極限を求める。 $x_{n+1} - 1 = f(x_n) - f(1)$ と変形できることに着目する。実際、$f(1)$ の値は、
$$ f(1) = \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot (1 + e^0) = \frac{1}{2} \cdot 2 = 1 $$
である。
$x_n = 1$ のとき、 $x_{n+1} = f(1) = 1$ となり、$|x_{n+1} - 1| = 0$ となるため、
$$ |x_{n+1} - 1| \leqq \frac{1}{2} |x_n - 1| $$
は等号で成り立つ。
$x_n \neq 1$ のとき、 区間 $[x_n, 1]$ または $[1, x_n]$ において平均値の定理を用いると、
$$ \frac{f(x_n) - f(1)}{x_n - 1} = f'(c_n) $$
を満たす $c_n$ が $x_n$ と $1$ の間に存在する。 $x_n > \frac{1}{2}$ であり、$1 > \frac{1}{2}$ であるから、その間にある $c_n$ も $c_n > \frac{1}{2}$ を満たす。 (1)の結果より、$0 \leqq f'(c_n) < \frac{1}{2}$ が成り立つので、$|f'(c_n)| < \frac{1}{2}$ である。 したがって、
$$ \begin{aligned} |x_{n+1} - 1| &= |f(x_n) - f(1)| \\ &= |f'(c_n)| |x_n - 1| \\ &< \frac{1}{2} |x_n - 1| \end{aligned} $$
となる。
いずれの場合でも、すべての $n \geqq 0$ に対して以下の不等式が成り立つ。
$$ |x_{n+1} - 1| \leqq \frac{1}{2} |x_n - 1| $$
この不等式を繰り返し用いると、
$$ |x_n - 1| \leqq \frac{1}{2} |x_{n-1} - 1| \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^2 |x_{n-2} - 1| \leqq \cdots \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^n |x_0 - 1| $$
となる。
ここで、$n \to \infty$ のとき $\left(\frac{1}{2}\right)^n \to 0$ であるから、はさみうちの原理より、
$$ \lim_{n \to \infty} |x_n - 1| = 0 $$
すなわち、
$$ \lim_{n \to \infty} x_n = 1 $$
であることが示された。
解説
本問は、漸化式 $x_{n+1} = f(x_n)$ で定められる数列の極限を求める典型的な微分積分の問題である。
一般に、方程式 $x = f(x)$ の解を $\alpha$ としたとき、$|f'(x)| \leqq r < 1$ を満たす範囲に $x_n$ と $\alpha$ が存在すれば、平均値の定理を用いることで $|x_{n+1} - \alpha| \leqq r |x_n - \alpha|$ を導き、極限 $\lim_{n \to \infty} x_n = \alpha$ を示すことができる。
(1)はそのための準備であり、導関数 $f'(x)$ の取り得る値の範囲を評価している。上限と下限を評価するために、一度の微分だけでなく二階微分($f'(x)$ の微分)まで行う必要がある点に注意したい。
(2)では、平均値の定理を適用する区間において(1)の条件 $c_n > \frac{1}{2}$ を満たすことを保証するために、すべての $n$ で $x_n > \frac{1}{2}$ であることを数学的帰納法で示すステップが不可欠である。また、$x_n = 1$ となる場合の例外処理を記述しておくことで、より厳密な解答となる。
答え
(1)
$x>\frac{1}{2}$ のとき
$$ 0 \leqq f'(x) < \frac{1}{2} $$
(2)
$$ \lim_{n\to\infty}x_n=1 $$
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