北海道大学 1979年 文系 第4問 解説

方針・初手
点 $P, Q$ は正方形の周上を一定の速さで周回するため、それぞれの位置座標を時刻 $t$ の周期関数として設定し、数式化して処理します。 まともに距離の平方を求めて場合分けの積分を行うと計算量が膨大になるため、関数の周期性と、半周期(2秒)ずらしたときの対称性を活用して、積分値をまとめて計算する方針をとります。
解法1
座標平面上に正方形 $ABCD$ を配置し、頂点の座標を $A(0,0), B(1,0), C(1,1), D(0,1)$ とします。 時刻 $t$ ($t \ge 0$) における動点 $P$ の座標を $(x(t), y(t))$ とおきます。 $P$ は $A$ を出発し、周長 $4$ の正方形の周上を反時計回りに速さ $1$ で動くため、$x(t), y(t)$ はすべての実数 $t$ に対して周期 $4$ の関数として定義できます。
$0 \le t < 4$ における $P$ の位置は以下のようになります。
- $0 \le t < 1$ (辺 $AB$ 上): $x(t) = t, \ y(t) = 0$
- $1 \le t < 2$ (辺 $BC$ 上): $x(t) = 1, \ y(t) = t - 1$
- $2 \le t < 3$ (辺 $CD$ 上): $x(t) = 3 - t, \ y(t) = 1$
- $3 \le t < 4$ (辺 $DA$ 上): $x(t) = 0, \ y(t) = 4 - t$
これらの式から、任意の $t$ について以下の性質が成り立つことが確認できます。
(i) $y(t) = x(t-1)$ (理由:$0 \le t < 1$ のとき、周期性より $x(t-1) = x(t-1+4) = x(t+3) = 0$ となり $y(t)$ に一致します。他の区間も同様に確かめられます。)
(ii) $x(t+2) = 1 - x(t)$ (理由:$0 \le t < 1$ のとき $x(t+2) = 3-(t+2) = 1-t = 1-x(t)$ となり一致します。$1 \le t < 2$ のときは $x(t+2) = 0 = 1-x(t)$ となり一致します。周期性よりすべての $t$ で成り立ちます。)
動点 $Q$ は辺 $AB$ 上の点から出発するため、初期位置の $A$ からの距離を $a$ ($0 < a < 1$) とおきます。 $Q$ は $P$ と同時に出発し、時計回りに速さ $1$ で動くため、時刻 $t$ における $Q$ は「$A$ から反時計回りに測った道のりが $a - t$ の位置」にいるとみなせます。 したがって、時刻 $t$ における $Q$ の座標は $(x(a-t), y(a-t))$ と表せます。
求める定積分は、
$$ \int_0^4 f(t) dt = \int_0^4 \left\{ (x(t) - x(a-t))^2 + (y(t) - y(a-t))^2 \right\} dt $$
被積分関数を展開すると、以下のようになります。
$$ x(t)^2 + x(a-t)^2 - 2x(t)x(a-t) + y(t)^2 + y(a-t)^2 - 2y(t)y(a-t) $$
まず、定積分 $\int_0^4 x(t) dt$ および $\int_0^4 x(t)^2 dt$ を計算します。
$$ \begin{aligned} \int_0^4 x(t) dt &= \int_0^1 t dt + \int_1^2 1 dt + \int_2^3 (3-t) dt + \int_3^4 0 dt \\ &= \left[ \frac{t^2}{2} \right]_0^1 + 1 + \left[ -\frac{(3-t)^2}{2} \right]_2^3 \\ &= \frac{1}{2} + 1 + \frac{1}{2} = 2 \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} \int_0^4 x(t)^2 dt &= \int_0^1 t^2 dt + \int_1^2 1^2 dt + \int_2^3 (3-t)^2 dt + \int_3^4 0^2 dt \\ &= \left[ \frac{t^3}{3} \right]_0^1 + 1 + \left[ -\frac{(3-t)^3}{3} \right]_2^3 \\ &= \frac{1}{3} + 1 + \frac{1}{3} = \frac{5}{3} \end{aligned} $$
性質 (i) と被積分関数が周期 $4$ をもつことから、他の項の積分も求まります。
$$ \int_0^4 y(t)^2 dt = \int_0^4 x(t-1)^2 dt = \int_{-1}^3 x(u)^2 du = \int_0^4 x(t)^2 dt = \frac{5}{3} $$
$x(a-t)^2$、$y(a-t)^2$ の積分についても、変数変換 $u = a-t$ を行い、積分区間の長さが $4$ であることを用いれば、同様に $\frac{5}{3}$ となります。
次に、交差項の積分 $J = \int_0^4 \{ x(t)x(a-t) + y(t)y(a-t) \} dt$ を計算します。 性質 (i) より、
$$ J = \int_0^4 x(t)x(a-t) dt + \int_0^4 x(t-1)x(a-t-1) dt $$
第2項において $u = t-1$ と置換し、周期性を利用すると、
$$ \int_0^4 x(t-1)x(a-t-1) dt = \int_{-1}^3 x(u)x(a-u-2) du = \int_0^4 x(u)x(a-u-2) du $$
性質 (ii) より $x(a-u-2) = x(a-u+2) = 1 - x(a-u)$ であるから、
$$ \begin{aligned} \int_0^4 x(u)x(a-u-2) du &= \int_0^4 x(u) \{ 1 - x(a-u) \} du \\ &= \int_0^4 x(u) du - \int_0^4 x(u)x(a-u) du \end{aligned} $$
これを $J$ の式に代入すると、
$$ \begin{aligned} J &= \int_0^4 x(t)x(a-t) dt + \int_0^4 x(t) dt - \int_0^4 x(t)x(a-t) dt \\ &= \int_0^4 x(t) dt = 2 \end{aligned} $$
以上をまとめると、求める定積分は以下のようになります。
$$ \int_0^4 f(t) dt = \frac{5}{3} + \frac{5}{3} + \frac{5}{3} + \frac{5}{3} - 2 \times 2 = \frac{20}{3} - 4 = \frac{8}{3} $$
解法2
正方形の中心を原点 $O(0,0)$ にとる座標系を設定します。 4つの頂点は $\left(-\frac{1}{2}, -\frac{1}{2}\right), \left(\frac{1}{2}, -\frac{1}{2}\right), \left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right), \left(-\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ となります。 時刻 $t$ における $P$ の位置ベクトルを $\vec{P}(t) = (X(t), Y(t))$ とします。 $X(t), Y(t)$ は解法1の $x(t), y(t)$ を用いて $X(t) = x(t) - \frac{1}{2}$、$Y(t) = y(t) - \frac{1}{2}$ と表せます。
解法1と同様の議論により、$X(t), Y(t)$ は周期 $4$ の関数であり、以下の性質を満たします。
(i') $Y(t) = X(t-1)$
(ii') $X(t+2) = -X(t)$ (理由:$X(t+2) = x(t+2) - \frac{1}{2} = 1 - x(t) - \frac{1}{2} = \frac{1}{2} - x(t) = -X(t)$)
$Q$ は $A$ から距離 $a$ の初期位置から逆回りに進むため、その位置ベクトルは $\vec{Q}(t) = (X(a-t), Y(a-t))$ となります。 距離の平方 $f(t) = |\vec{P}(t) - \vec{Q}(t)|^2$ を展開して $0$ から $4$ まで積分します。
$$ \int_0^4 f(t) dt = \int_0^4 |\vec{P}(t)|^2 dt + \int_0^4 |\vec{Q}(t)|^2 dt - 2 \int_0^4 \vec{P}(t) \cdot \vec{Q}(t) dt $$
$\vec{P}(t)$ の大きさの平方の積分は、性質 (i') を用いて計算できます。
$$ \begin{aligned} \int_0^4 |\vec{P}(t)|^2 dt &= \int_0^4 \{ X(t)^2 + Y(t)^2 \} dt \\ &= 2 \int_0^4 X(t)^2 dt \\ &= 2 \int_0^4 \left( x(t) - \frac{1}{2} \right)^2 dt \\ &= 2 \int_0^4 \left( x(t)^2 - x(t) + \frac{1}{4} \right) dt \\ &= 2 \left( \frac{5}{3} - 2 + \frac{1}{4} \times 4 \right) = \frac{4}{3} \end{aligned} $$
$Q$ の軌道も同じ正方形の周上であるため、同様に $\int_0^4 |\vec{Q}(t)|^2 dt = \frac{4}{3}$ となります。
内積 $\vec{P}(t) \cdot \vec{Q}(t)$ の積分は、
$$ \int_0^4 \vec{P}(t) \cdot \vec{Q}(t) dt = \int_0^4 X(t)X(a-t) dt + \int_0^4 X(t-1)X(a-t-1) dt $$
第2項で $u = t-1$ とし、周期性と性質 (ii') である $X(a-u-2) = -X(a-u)$ を用いると、
$$ \int_{-1}^3 X(u)X(a-u-2) du = \int_0^4 X(u) \{ -X(a-u) \} du = - \int_0^4 X(u)X(a-u) du $$
したがって、第1項と相殺されて内積の積分は $0$ になります。 ゆえに、
$$ \int_0^4 f(t) dt = \frac{4}{3} + \frac{4}{3} - 0 = \frac{8}{3} $$
解説
動点が正方形の周上を回る問題において、位置座標を定式化して「周期関数」として扱うと見通しが格段に良くなります。 初期位置のパラメータ $a$ に依存した複雑な場合分け積分を強行することも可能ですが、時間がかかり計算ミスのリスクも高まります。 解法1のように周期関数の平行移動や対称性(半周期ずらすと値がどう変化するか)を活用する定積分のテクニックは、難関大でしばしば要求される重要な視点です。さらに解法2のように、正方形の中心を原点にとることで関数が奇関数のような対称性を持ち、交差項が完全に相殺される様子は非常に鮮やかです。
答え
$$ \frac{8}{3} $$
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