北海道大学 2002年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) 与えられた連立不等式の表す領域を図示する。第3の不等式 $a(x-3)+b(y-2) \leqq 0$ は、境界線が定点 $(3, 2)$ を通る直線である。条件 $2b < 3a < 6b$ を用いてこの直線の傾きの範囲を求め、他の $2$ 直線 $x+3y=12, 3x+y=12$ との交点や位置関係を明らかにする。 (2) $x+y=k$ とおき、領域内で $k$(直線の $y$ 切片)が最大となる点を探す。線形計画法の定石通り、境界となる直線の傾きと直線 $x+y=k$ の傾きを比較し、$a, b$ の大小関係によって場合分けを行う。
解法1
(1)
与えられた連立不等式は次の通りである。
$$ \begin{cases} x + 3y \leqq 12 & \cdots \text{①} \\ 3x + y \leqq 12 & \cdots \text{②} \\ a(x - 3) + b(y - 2) \leqq 0 & \cdots \text{③} \\ x \geqq 0, y \geqq 0 & \cdots \text{④} \end{cases} $$
①の境界線を $l_1 : y = -\frac{1}{3}x + 4$、②の境界線を $l_2 : y = -3x + 12$ とする。 直線 $l_1$ と $l_2$ の交点は、連立方程式を解いて $(3, 3)$ である。
③の境界線を $l_3$ とする。$b > 0$ であるから、次のように変形できる。
$$ l_3 : y - 2 = -\frac{a}{b}(x - 3) $$
これは定点 $P(3, 2)$ を通り、傾きが $-\frac{a}{b}$ の直線である。 ここで、条件 $2b < 3a < 6b$ の各辺を $3b\ (>0)$ で割ると、次の関係が得られる。
$$ \frac{2}{3} < \frac{a}{b} < 2 $$
各辺に $-1$ を掛けて、直線 $l_3$ の傾きの範囲を求める。
$$ -2 < -\frac{a}{b} < -\frac{2}{3} $$
これより、直線 $l_3$ の傾き $-\frac{a}{b}$ は、直線 $l_2$ の傾き $(-3)$ より大きく、直線 $l_1$ の傾き $\left(-\frac{1}{3}\right)$ より小さいことがわかる。
さらに、点 $(3, 3)$ を③の左辺に代入すると、
$$ a(3 - 3) + b(3 - 2) = b > 0 $$
となるため、点 $(3, 3)$ は不等式③を満たさない(すなわち、直線 $l_3$ より上側にある)。 一方、点 $(0, 4)$ を代入すると、
$$ a(0 - 3) + b(4 - 2) = -3a + 2b < 0 \quad (\because 2b < 3a) $$
点 $(4, 0)$ を代入すると、
$$ a(4 - 3) + b(0 - 2) = a - 2b < 0 \quad (\because 3a < 6b \implies a < 2b) $$
となり、点 $(0, 4)$ および $(4, 0)$ は不等式③を満たす。
以上から、直線 $l_3$ は、直線 $l_1$ の線分 $(0, 4)-(3, 3)$ 上の点 $A$ と、直線 $l_2$ の線分 $(3, 3)-(4, 0)$ 上の点 $B$ で交わることがわかる。 点 $A$ の座標は、$l_1$ と $l_3$ の方程式を連立させて解くことにより求まる。
$$ A\left( \frac{9a - 6b}{3a - b}, \frac{9a - 2b}{3a - b} \right) $$
点 $B$ の座標は、$l_2$ と $l_3$ の方程式を連立させて解くことにより求まる。
$$ B\left( \frac{10b - 3a}{3b - a}, \frac{6b - 3a}{3b - a} \right) $$
よって、求める領域は、頂点 $(0, 0), (4, 0), B, A, (0, 4)$ を結ぶ五角形の周および内部である。
(2)
$x + y = k$ とおくと、$y = -x + k$ であり、これは傾き $-1$、$y$ 切片 $k$ の直線を表す。 $k$ が最大となるのは、この直線が領域の境界と接するか、いずれかの頂点を通るときである。領域の形状から、最大値の候補となるのは上側の頂点 $A$ または $B$ を通るときである。 領域の上側の境界線は、点 $(0,4)$ から $A$ までが傾き $-\frac{1}{3}$、線分 $AB$ が傾き $-\frac{a}{b}$、$B$ から $(4,0)$ までが傾き $-3$ となっている。 直線 $y = -x + k$ の傾き $-1$ と、線分 $AB$ の傾き $-\frac{a}{b}$ の大小によって、最大値をとる頂点が変わるため場合分けを行う。
(i) $-\frac{a}{b} < -1$、すなわち $a > b$ のとき
辺の傾きについて $-\frac{1}{3} > -1 > -\frac{a}{b}$ が成り立つ。 直線 $x + y = k$ は線分 $AB$ よりも傾きが急であるため、これを上方に平行移動させたとき、最後に点 $A$ を通る。よって $k$ は点 $A$ で最大となる。
$$ k = x_A + y_A = \frac{9a - 6b}{3a - b} + \frac{9a - 2b}{3a - b} = \frac{18a - 8b}{3a - b} $$
(ii) $-\frac{a}{b} > -1$、すなわち $a < b$ のとき
辺の傾きについて $-\frac{a}{b} > -1 > -3$ が成り立つ。 直線 $x + y = k$ は線分 $AB$ よりも傾きが緩やかであるため、これを上方に平行移動させたとき、最後に点 $B$ を通る。よって $k$ は点 $B$ で最大となる。
$$ k = x_B + y_B = \frac{10b - 3a}{3b - a} + \frac{6b - 3a}{3b - a} = \frac{16b - 6a}{3b - a} $$
(iii) $-\frac{a}{b} = -1$、すなわち $a = b$ のとき
直線 $x + y = k$ は線分 $AB$ と平行になるため、線分 $AB$ 上のすべての点で最大値をとる。 このときの最大値は、(i)または(ii)の結果に $a = b$ を代入して得られ、最大値は $5$ となる。
条件 $2b < 3a < 6b$ とこれらを踏まえると、$a, b$ の大小関係で場合分けして答えることができる。
解説
(1)の領域図示では、直線 $a(x-3)+b(y-2)=0$ が定点 $(3, 2)$ を通ることに気づくのがポイントである。問題で与えられた不等式 $2b < 3a < 6b$ を利用して直線の傾きの範囲を絞り込むことで、他の境界線との位置関係を確定できる。 (2)はいわゆる線形計画法の典型問題であるが、領域の境界線の傾きと、目的関数の表す直線の傾き($-1$)の大小関係に着目して場合分けを行う論理的思考力が問われる。計算量が多く交点の座標が複雑になるため、丁寧な計算が求められる。
答え
(1) 点 $(0, 0), (4, 0), \left( \frac{10b - 3a}{3b - a}, \frac{6b - 3a}{3b - a} \right), \left( \frac{9a - 6b}{3a - b}, \frac{9a - 2b}{3a - b} \right), (0, 4)$ を頂点とする五角形の周および内部。(図は省略)
(2)
- $\frac{2}{3}b < a \leqq b$ のとき、$\frac{16b - 6a}{3b - a}$
- $b < a < 2b$ のとき、$\frac{18a - 8b}{3a - b}$
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