北海道大学 2017年 理系 第5問 解説

方針・初手
$AP^2 + BP^2 + CP^2$ のような「距離の2乗の和」が現れる問題では、点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおいて直接計算するか、$\triangle ABC$ の重心を導入して式を整理するのが定石である。 本問は各頂点の座標が具体的に与えられているため、座標変数を設定して式を展開し、平方完成することで領域 $D$ の形状(円)と中心・半径を特定する方針を採る。 領域の包含関係については、図形的な距離の最大・最小を考えることで解決する。
解法1
点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおく。 各頂点の座標は $A(1, 0)$、$B(3, 1)$、$C(2, 2)$ であるから、それぞれの距離の2乗は以下のようになる。
$$ AP^2 = (x-1)^2 + y^2 $$
$$ BP^2 = (x-3)^2 + (y-1)^2 $$
$$ CP^2 = (x-2)^2 + (y-2)^2 $$
これらの和を計算し、式を整理する。
$$ AP^2 + BP^2 + CP^2 = \{(x-1)^2 + (x-3)^2 + (x-2)^2\} + \{y^2 + (y-1)^2 + (y-2)^2\} $$
$$ = (3x^2 - 12x + 14) + (3y^2 - 6y + 5) $$
$$ = 3(x^2 - 4x) + 3(y^2 - 2y) + 19 $$
$$ = 3(x-2)^2 - 12 + 3(y-1)^2 - 3 + 19 $$
$$ = 3(x-2)^2 + 3(y-1)^2 + 4 $$
したがって、条件 $AP^2 + BP^2 + CP^2 \leqq a$ は次のように変形できる。
$$ 3(x-2)^2 + 3(y-1)^2 + 4 \leqq a $$
$$ (x-2)^2 + (y-1)^2 \leqq \frac{a-4}{3} \cdots \text{①} $$
この式から、領域 $D$ の中心となる点 $G(2, 1)$ を見出すことができる。点 $G$ は $\triangle ABC$ の重心に一致する。
(1)
領域 $D$ は不等式①を満たす点 $(x, y)$ の集合である。 $D$ が少なくとも1つの点を含むための条件は、①を満たす実数の組 $(x, y)$ が存在することである。 すべての実数 $x, y$ に対して $(x-2)^2 \geqq 0$、$ (y-1)^2 \geqq 0$ であるから、左辺の最小値は $0$ となる。 したがって、不等式が解をもつための条件は、右辺が $0$ 以上となることである。
$$ \frac{a-4}{3} \geqq 0 $$
これを解いて、
$$ a \geqq 4 $$
(2)
$D$ が $T$ を含む条件は、$T$ 内のすべての点 $(x, y)$ が不等式①を満たすことである。 すなわち、$T$ 内における $(x-2)^2 + (y-1)^2$ の最大値が $\frac{a-4}{3}$ 以下であればよい。
$(x-2)^2 + (y-1)^2$ は、点 $(x, y)$ と定点 $G(2, 1)$ との距離の2乗を表す。 多角形 $T$(内部および境界)内の点と、内部の定点 $G$ との距離が最大となるのは、多角形の頂点のいずれかのときである。 各頂点と点 $G$ との距離の2乗をそれぞれ計算する。
$$ AG^2 = (1-2)^2 + (0-1)^2 = 1 + 1 = 2 $$
$$ BG^2 = (3-2)^2 + (1-1)^2 = 1 + 0 = 1 $$
$$ CG^2 = (2-2)^2 + (2-1)^2 = 0 + 1 = 1 $$
これらのうち最大の値は $2$ である。 したがって、$T$ 内のすべての点で不等式が成り立つための条件は、以下のようになる。
$$ 2 \leqq \frac{a-4}{3} $$
$$ 6 \leqq a-4 $$
これを解いて、
$$ a \geqq 10 $$
(3)
(1)の条件より $a \geqq 4$ であり、このとき $D$ は中心 $G(2, 1)$、半径 $\sqrt{\frac{a-4}{3}}$ の円の内部および境界を表す($a=4$ のときは点 $G$ のみであり、これは $T$ に含まれる)。
$D$ が $T$ に含まれるための条件は、この円が $\triangle ABC$ の内部および境界からはみ出さないことである。 重心 $G$ から $\triangle ABC$ の各辺に下ろした垂線の足はすべて各線分上に存在するため、中心 $G$ から3つの直線 $AB, BC, CA$ までの距離を求め、その最小値が円の半径以上であればよい。
直線 $AB$ の方程式は $A(1, 0), B(3, 1)$ より、
$$ y - 0 = \frac{1-0}{3-1}(x-1) \iff x - 2y - 1 = 0 $$
点 $G(2, 1)$ と直線 $AB$ の距離 $d_1$ は、
$$ d_1 = \frac{|2 - 2 \cdot 1 - 1|}{\sqrt{1^2 + (-2)^2}} = \frac{1}{\sqrt{5}} $$
直線 $BC$ の方程式は $B(3, 1), C(2, 2)$ より、
$$ y - 1 = \frac{2-1}{2-3}(x-3) \iff x + y - 4 = 0 $$
点 $G(2, 1)$ と直線 $BC$ の距離 $d_2$ は、
$$ d_2 = \frac{|2 + 1 - 4|}{\sqrt{1^2 + 1^2}} = \frac{1}{\sqrt{2}} $$
直線 $CA$ の方程式は $C(2, 2), A(1, 0)$ より、
$$ y - 0 = \frac{2-0}{2-1}(x-1) \iff 2x - y - 2 = 0 $$
点 $G(2, 1)$ と直線 $CA$ の距離 $d_3$ は、
$$ d_3 = \frac{|2 \cdot 2 - 1 - 2|}{\sqrt{2^2 + (-1)^2}} = \frac{1}{\sqrt{5}} $$
これら3つの距離の2乗を比較すると、$d_1^2 = \frac{1}{5}$, $d_2^2 = \frac{1}{2}$, $d_3^2 = \frac{1}{5}$ となり、最小値の2乗は $\frac{1}{5}$ である。 円 $D$ が $\triangle ABC$ に含まれるためには、円の半径の2乗がこれ以下であればよい。
$$ \frac{a-4}{3} \leqq \frac{1}{5} $$
$$ 5(a-4) \leqq 3 $$
$$ 5a \leqq 23 \iff a \leqq \frac{23}{5} $$
(1) のもとで考えるため $a \geqq 4$ と合わせて、求める $a$ の範囲は以下のようになる。
$$ 4 \leqq a \leqq \frac{23}{5} $$
解説
「距離の2乗の和」を扱う典型的な軌跡・領域の問題である。 一般に、複数の定点 $A_1, A_2, \dots, A_n$ に対する $\sum PA_k^2$ は、これらの点の重心 $G$ を用いると $n PG^2 + \sum GA_k^2$ に分解でき、計算を簡略化できる性質がある。今回は直接座標計算を行っても同様の式に容易に到達する。 (2) と (3) では、「ある領域が別の領域を含む / 含まれる」という条件を図形上の距離に翻訳して解く。凸多角形と円の包含関係においては、多角形が円を含む場合は「中心と多角形の各辺との距離の最小値」、多角形が円に含まれる場合は「中心と多角形の各頂点との距離の最大値」に着目するのが基本的なアプローチとなる。
答え
(1) $$ a \geqq 4 $$
(2) $$ a \geqq 10 $$
(3) $$ 4 \leqq a \leqq \frac{23}{5} $$
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