北海道大学 2011年 文系 第3問 解説

方針・初手
- (1) 直線の方程式を $a$ について整理し、恒等式の考え方を用いて定点を見つける。
- (2) 3直線で三角形ができる条件は、「どの2直線も平行でない」かつ「3直線が1点で交わらない」ことである。直線の傾きと(1)で求めた定点を利用して条件を絞り込む。
- (3) 点が三角形の内部にある条件を考える。直線 $y=-x$ と $y=x$ の幾何学的な位置関係に気づけば、線分の内分の問題に帰着でき、計算量を大幅に減らすことができる。領域の不等式を用いる方法でも解決可能である。
解法1
(1)
直線 $l_1: ax + y = 2a + 2$ を $a$ について整理すると、
$$a(x - 2) + (y - 2) = 0$$
これが $a$ の値によらず常に成り立つための条件は、
$$x - 2 = 0 \quad \text{かつ} \quad y - 2 = 0$$
よって、$x = 2, y = 2$ となり、点 $P$ の座標は $(2, 2)$ である。
(2)
3直線 $l, l_1, l_2$ はそれぞれ以下のように表せる。
$$\begin{cases} l: y = -x \\ l_1: y = -ax + 2a + 2 \\ l_2: y = -bx + 2b + 2 \end{cases}$$
これら3直線によって三角形が作られる条件は、どの2直線も平行ではなく、かつ3直線が1点で交わらないことである。 まず、平行でない条件は、それぞれの傾きがすべて異なることである。したがって、
$$-1 \neq -a \quad \text{かつ} \quad -1 \neq -b \quad \text{かつ} \quad -a \neq -b$$
すなわち、
$$a \neq 1 \quad \text{かつ} \quad b \neq 1 \quad \text{かつ} \quad a \neq b$$
次に、3直線が1点で交わらない条件を確認する。(1)より $l_1$ は常に定点 $P(2, 2)$ を通る。$l_2$ の方程式は $l_1$ の $a$ を $b$ に置き換えたものなので、$l_2$ も常に定点 $P(2, 2)$ を通る。 したがって、$l_1$ と $l_2$ の交点は点 $P(2, 2)$ である。 もし3直線が1点で交わるとすれば、その交点は $P(2, 2)$ でなければならないが、点 $P(2, 2)$ の座標は直線 $l: x+y=0$ を満たさない($2+2 = 4 \neq 0$)。 よって、3直線が1点で交わることはない。 以上より、三角形が作られるための $a, b$ の条件は、
$$a \neq 1 \quad \text{かつ} \quad b \neq 1 \quad \text{かつ} \quad a \neq b$$
(3)
直線 $l: y=-x$ と 直線 $y=x$ は原点 $O(0,0)$ で直交する。 点 $P(2, 2)$ と与えられた点 $Q(1, 1)$ は、ともに直線 $y=x$ 上にあり、点 $Q$ は線分 $OP$ の中点である。 直線 $l$ と $l_1$ の交点を $B$、直線 $l$ と $l_2$ の交点を $C$ とする。点 $B, C$ はともに直線 $l: y=-x$ 上にあるため、三角形 $PBC$ の頂点 $P$ に対する底辺は直線 $l$ 上の線分 $BC$ となる。
点 $Q$ が三角形 $PBC$ の内部にあるための条件は、直線 $l$ 上にある点 $B, C$ が原点 $O$ を挟んで両側に位置すること、すなわち、点 $B$ と点 $C$ の $x$ 座標が異符号となることである。
点 $B$ の $x$ 座標を求める。$l$ と $l_1$ の方程式を連立して、
$$-x = -ax + 2a + 2$$
$$(a - 1)x = 2(a + 1)$$
(2)の条件より $a \neq 1$ であるから、$x = \frac{2(a+1)}{a-1}$。 同様に、点 $C$ の $x$ 座標は $x = \frac{2(b+1)}{b-1}$ である。 これらが異符号である条件は、
$$\frac{2(a+1)}{a-1} \cdot \frac{2(b+1)}{b-1} < 0$$
$$\iff \frac{(a+1)(b+1)}{(a-1)(b-1)} < 0$$
$$\iff (a+1)(a-1)(b+1)(b-1) < 0$$
$$\iff (a^2 - 1)(b^2 - 1) < 0$$
これより、以下の2つの場合が考えられる。
(i) $a^2 - 1 > 0$ かつ $b^2 - 1 < 0$ の場合 $a < -1$ または $1 < a$ であり、かつ $-1 < b < 1$
(ii) $a^2 - 1 < 0$ かつ $b^2 - 1 > 0$ の場合 $-1 < a < 1$ であり、かつ $b < -1$ または $1 < b$
なお、この領域内において $|a| \neq |b|$ が成り立つため、(2)の条件 $a \neq b$ は常に満たされる。 求める $a, b$ の範囲は、直線 $a = \pm 1$ と $b = \pm 1$ によって区切られる領域のうち、原点を含まない4つの区画(市松模様状)であり、境界線はすべて含まない。
解法2
(3)の別解(領域の不等式を用いる方法)
(2)の条件のもと、3直線で囲まれる領域を不等式で表現する。 直線 $l: x+y=0$, $l_1: ax+y-2a-2=0$, $l_2: bx+y-2b-2=0$ によって作られる三角形の頂点は $P(2,2)$, $B\left(\frac{2(a+1)}{a-1}, -\frac{2(a+1)}{a-1}\right)$, $C\left(\frac{2(b+1)}{b-1}, -\frac{2(b+1)}{b-1}\right)$ である。 点 $Q(1,1)$ がこの三角形の内部にある条件は、以下の3つが同時に成り立つことである。
(I) 直線 $l$ に関して、点 $Q$ と点 $P$ が同じ側にある。 (II) 直線 $l_1$ に関して、点 $Q$ と点 $C$ が同じ側にある。 (III) 直線 $l_2$ に関して、点 $Q$ と点 $B$ が同じ側にある。
(I) について、$f(x,y) = x+y$ とおくと、$f(1,1)=2>0$, $f(2,2)=4>0$ より、点 $Q$ と点 $P$ は常に同じ側にある。 (II) について、$g(x,y) = ax+y-2a-2$ とおく。
$$g(1,1) = a+1-2a-2 = -a-1$$
$$g(x_C, y_C) = a \cdot \frac{2(b+1)}{b-1} - \frac{2(b+1)}{b-1} - 2a - 2 = \frac{2(b+1)(a-1) - 2(a+1)(b-1)}{b-1} = \frac{4(a-b)}{b-1}$$
これらが同符号となる条件は、$g(1,1) \cdot g(x_C, y_C) > 0$ より
$$(-a-1) \cdot \frac{4(a-b)}{b-1} > 0 \iff \frac{(a+1)(a-b)}{b-1} < 0$$
(III) について、(II)の $a$ と $b$ を入れ替えた形になるため、条件は
$$\frac{(b+1)(b-a)}{a-1} < 0 \iff \frac{(b+1)(a-b)}{a-1} > 0$$
この2つの不等式を連立する。$(a-b)$ の符号で場合分けを行う。
(ア) $a > b$ のとき $a-b > 0$ であるから、2つの不等式はそれぞれ以下のように変形できる。
$$\frac{a+1}{b-1} < 0 \iff (a+1)(b-1) < 0$$
$$\frac{b+1}{a-1} > 0 \iff (b+1)(a-1) > 0$$
これらを同時に満たす領域は、$(a > 1 \text{ かつ } -1 < b < 1)$ または $(-1 < a < 1 \text{ かつ } b < -1)$ である。
(イ) $a < b$ のとき $a-b < 0$ であるから、不等式の向きが変わり、以下のようになる。
$$(a+1)(b-1) > 0$$
$$(b+1)(a-1) < 0$$
これらを同時に満たす領域は、$(b > 1 \text{ かつ } -1 < a < 1)$ または $(-1 < b < 1 \text{ かつ } a < -1)$ である。
(ア) と (イ) の領域を合わせると、$(a^2-1)(b^2-1) < 0$ とまとめられる。 この領域内では常に $a \neq b$ を満たすため、これが求める範囲となる。
解説
- 3直線が三角形を作る条件は頻出である。「3直線が三角形を作らない条件(どれか2つが平行、または3つが1点で交わる)」の否定として考えるのが定石である。
- 本問の核心は(3)における「点が三角形の内部にある条件」の処理にある。解法2のように、三角形の各辺となる直線に関して、着目する点と向かい合う頂点が同じ側にあることを立式するのが基本方針である。
- しかし解法1のように、図形的な対称性(直線 $y=x$ と $y=-x$)に注目すると、計算を劇的に簡略化できる。座標平面上の図形問題では、図を描いて位置関係を視覚的に把握することが有効である。
答え
- (1) $(2, 2)$
- (2) $a \neq 1$ かつ $b \neq 1$ かつ $a \neq b$
- (3) 求める範囲は、連立不等式 $(a^2 - 1)(b^2 - 1) < 0$ を満たす領域である。 すなわち、$(-1 < a < 1 \text{ かつ } b < -1, 1 < b)$ または $(a < -1, 1 < a \text{ かつ } -1 < b < 1)$。 これを $ab$ 平面上に図示すると、直線 $a=1, a=-1, b=1, b=-1$ を境界とする市松模様状の4つの領域となる(境界線はすべて含まない)。
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