北海道大学 1993年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) は点 $A, B, C$ の座標から直接 $BC$ の中点を求め、それが線分 $OA$ 上にあることをベクトルなどで示すと見通しが良い。
(2) は 1次変換が「線分の内分点を内分点に移す」という性質(線形性)を利用する。(1)より $\overrightarrow{OD} = \frac{1}{4}\overrightarrow{OA}$ であるため、像についても $\overrightarrow{OS} = \frac{1}{4}\overrightarrow{OP}$ などが成り立つことに着目し、正三角形の面積を $x$ 軸が2等分する条件と照らし合わせる。
(3) は (2) で得られた $A, B, C$ の像の座標から、行列の決定問題を解く。
(1)
解法1
$BC$ の中点を $M$ とすると、$M$ の座標は
$$ \left( \frac{3 + (-2)}{2}, \frac{1 + 0}{2} \right) = \left( \frac{1}{2}, \frac{1}{2} \right) $$
である。
一方、点 $A$ の座標は $(2, 2)$ であるから、原点 $O$ について
$$ \overrightarrow{OM} = \left( \frac{1}{2}, \frac{1}{2} \right) = \frac{1}{4} (2, 2) = \frac{1}{4} \overrightarrow{OA} $$
が成り立つ。
これは、点 $M$ が線分 $OA$ 上($OA$ を $1 : 3$ に内分する位置)にあることを意味する。
よって、線分 $OA$ と辺 $BC$ の交点 $D$ は点 $M$ と一致する。ゆえに、$D$ は $BC$ の中点である。
(2)
解法1
1次変換 $f$ によって、点 $A, B, C$ がそれぞれ点 $A', B', C'$ に移るとする。
1次変換は原点を原点に移し、線分の中点および内分点比を保つ性質がある。
(1)より $D$ は $BC$ の中点であるから、その像 $S$ は $B'C'$ の中点である。
また、$\overrightarrow{OD} = \frac{1}{4}\overrightarrow{OA}$ より、これらの像についても
$$ \overrightarrow{OS} = \frac{1}{4}\overrightarrow{OA'} $$
が成り立つ。
条件 (i), (ii) より、$\triangle A'B'C'$ は $x$ 軸を対称軸とする正三角形である。
なぜなら、正三角形の面積を直線が2等分するとき、その直線が頂点を通るならば、必ず対辺の垂直二等分線(対称軸)となるからである。このとき、1つの頂点である $P(4, 0)$ は $x$ 軸上にあるため、$x$ 軸は $P$ を通り、残り2頂点の中点を通る直線となる。
ここで、$P$ が $B'$ または $C'$ であると仮定して矛盾を導く。
対称性から $B' = P(4, 0)$ と仮定する。$x$ 軸は $A'C'$ の垂直二等分線となるため、$A'$ と $C'$ は $x$ 軸に関して対称である。
$A'(s, t), C'(s, -t)$ とおくと、$B'C'$ の中点 $S$ は
$$ S\left( \frac{4+s}{2}, -\frac{t}{2} \right) $$
となる。$\overrightarrow{OS} = \frac{1}{4}\overrightarrow{OA'} = \left(\frac{s}{4}, \frac{t}{4}\right)$ であるから、
$$ \begin{cases} \frac{4+s}{2} = \frac{s}{4} \\ -\frac{t}{2} = \frac{t}{4} \end{cases} $$
これを解くと $s = -8, t = 0$ となり、$A'(-8, 0), C'(-8, 0)$ となって2点が一致してしまう。これは $\triangle A'B'C'$ が正三角形であることに矛盾する。
したがって、$B'$ も $C'$ も $P$ ではなく、$A'$ が $P(4, 0)$ に移る。ゆえに、$f$ は $A$ を $P$ に移す。
このとき、$A'(4, 0)$ であるから、
$$ \overrightarrow{OS} = \frac{1}{4} (4, 0) = (1, 0) $$
となり、$S$ の座標は $(1, 0)$ である。
(3)
解法1
$f$ を表す行列を $X$ とする。
(2)より、$S(1, 0)$ は辺 $B'C'$ の中点であり、$x$ 軸は $\triangle A'B'C'$ の対称軸であるから、$B', C'$ の $x$ 座標は $S$ の $x$ 座標と等しく $1$ である。
$\triangle A'B'C'$ の高さは $A'S = 3$ であり、正三角形の辺の長さを $l$ とすると $\frac{\sqrt{3}}{2}l = 3$ より $l = 2\sqrt{3}$ である。
したがって、$S$ から $y$ 軸方向に $\pm \sqrt{3}$ 進んだ点が $B', C'$ となるため、その座標は $(1, \sqrt{3}), (1, -\sqrt{3})$ のいずれかである。
よって、$f$ による $B, C$ の像の組み合わせは次の2通り考えられる。
(i) $f(B) = (1, \sqrt{3}), f(C) = (1, -\sqrt{3})$ のとき
$$ X \begin{pmatrix} 3 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 \\ \sqrt{3} \end{pmatrix}, \quad X \begin{pmatrix} -2 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 \\ -\sqrt{3} \end{pmatrix} $$
これをまとめて行列で表すと、
$$ X \begin{pmatrix} 3 & -2 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ \sqrt{3} & -\sqrt{3} \end{pmatrix} $$
$\begin{pmatrix} 3 & -2 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}$ の逆行列は $\frac{1}{2} \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ -1 & 3 \end{pmatrix}$ であるから、
$$ \begin{aligned} X &= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ \sqrt{3} & -\sqrt{3} \end{pmatrix} \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ -1 & 3 \end{pmatrix} \\ &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} -1 & 5 \\ \sqrt{3} & - \sqrt{3} \end{pmatrix} \end{aligned} $$
(ii) $f(B) = (1, -\sqrt{3}), f(C) = (1, \sqrt{3})$ のとき
同様にして、
$$ X \begin{pmatrix} 3 & -2 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -\sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix} $$
$$ \begin{aligned} X &= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -\sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix} \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ -1 & 3 \end{pmatrix} \\ &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} -1 & 5 \\ -\sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix} \end{aligned} $$
いずれの場合も、条件を満たす。
解説
1次変換における「線形性」がテーマの問題である。「一直線上にある3点の比率」や「中点」が変換後も保たれることを活用すると、座標計算の負担を大幅に減らすことができる。
(2) において「$x$ 軸によって面積が2等分される正三角形」の図形的性質を正確に把握できるかが最大の関門である。正三角形の面積を2等分する直線が頂点を通る場合、それは必ず対称軸となる性質を論理的に導く必要がある。
(3) では、求めたい行列 $X$ に対し $X \vec{p} = \vec{p}', X \vec{q} = \vec{q}'$ が分かれば $X (\vec{p} \quad \vec{q}) = (\vec{p}' \quad \vec{q}')$ として逆行列から一括で求める手法が基本かつ強力である。
答え
(1) $BC$ の中点の位置ベクトルが $\overrightarrow{OM} = \frac{1}{4} \overrightarrow{OA}$ を満たすことから、中点が線分 $OA$ 上に存在することを示した。
(2) $P$ が $A'$ 以外であると仮定すると正三角形が成立しないことから、$f$ が $A$ を $P$ に移すことを示した。$S$ の座標は $(1, 0)$。
(3) $X = \frac{1}{2} \begin{pmatrix} -1 & 5 \\ \sqrt{3} & -\sqrt{3} \end{pmatrix}, \frac{1}{2} \begin{pmatrix} -1 & 5 \\ -\sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix}$
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