北海道大学 2001年 理系 第4問 解説

方針・初手
- (1)は有理関数の積分であり、分母が因数分解できるため、部分分数分解を行って積分する。
- (2)は右辺のシグマの各項が $\int_0^a x^{2k} dx$ と表せることに着目し、和と積分の順序を入れ替えて等比数列の和の公式を利用する。
- (3)は(2)で得られた等式において、$n \to \infty$ としたときの極限を考える。左辺の積分が $0$ に収束することを、不等式で評価してはさみうちの原理を用いて示す。
解法1
(1) 被積分関数を部分分数分解する。
$$ \frac{1}{1-x^2} = \frac{1}{(1-x)(1+x)} = \frac{1}{2}\left( \frac{1}{1+x} + \frac{1}{1-x} \right) $$
これを用いて積分を計算する。
$$ \begin{aligned} \int_0^a \frac{1}{1-x^2} dx &= \frac{1}{2} \int_0^a \left( \frac{1}{1+x} + \frac{1}{1-x} \right) dx \\ &= \frac{1}{2} \left[ \log|1+x| - \log|1-x| \right]_0^a \\ &= \frac{1}{2} \left[ \log \left| \frac{1+x}{1-x} \right| \right]_0^a \\ &= \frac{1}{2} \log \left| \frac{1+a}{1-a} \right| \end{aligned} $$
条件より $-1 < a < 1$ であるから、$1+a > 0$ かつ $1-a > 0$ となり、$\frac{1+a}{1-a} > 0$ である。 したがって、絶対値記号を外すことができ、次の結果を得る。
$$ \int_0^a \frac{1}{1-x^2} dx = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a} $$
(2) 等式右辺のシグマを含む部分について、各項が $\frac{a^{2k+1}}{2k+1} = \int_0^a x^{2k} dx$ と表せることに着目する。 有限和であるため、和と積分の順序を交換できる。
$$ \begin{aligned} \sum_{k=0}^n \frac{a^{2k+1}}{2k+1} &= \sum_{k=0}^n \int_0^a x^{2k} dx \\ &= \int_0^a \left( \sum_{k=0}^n x^{2k} \right) dx \end{aligned} $$
被積分関数は初項 $1$、公比 $x^2$、項数 $n+1$ の等比数列の和である。 積分区間において $-1 < a < 1$ より $x^2 \neq 1$ であるから、次のように変形できる。
$$ \sum_{k=0}^n x^{2k} = \frac{1 - (x^2)^{n+1}}{1-x^2} = \frac{1 - x^{2n+2}}{1-x^2} $$
これを積分に代入する。
$$ \int_0^a \left( \sum_{k=0}^n x^{2k} \right) dx = \int_0^a \frac{1 - x^{2n+2}}{1-x^2} dx = \int_0^a \frac{1}{1-x^2} dx - \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx $$
ここで、(1)の結果より $\int_0^a \frac{1}{1-x^2} dx = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a}$ であるから、次が成り立つ。
$$ \sum_{k=0}^n \frac{a^{2k+1}}{2k+1} = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a} - \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx $$
この等式を移項して整理することで、目的の等式が得られる。
$$ \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a} - \sum_{k=0}^n \frac{a^{2k+1}}{2k+1} $$
(3) (2)で示した等式において、$n \to \infty$ の極限をとることを考える。 左辺の積分 $\int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx$ の評価を行う。
積分区間($x$ は $0$ から $a$ または $a$ から $0$ まで動く)において、$|x| \le |a|$ が成り立つ。 条件 $-1 < a < 1$ より $|a| < 1$ であるから、$0 \le x^2 \le a^2 < 1$ であり、したがって $0 < 1 - a^2 \le 1 - x^2$ となる。 両辺の正の逆数をとると、次が成り立つ。
$$ 0 < \frac{1}{1-x^2} \le \frac{1}{1-a^2} $$
$x^{2n+2} \ge 0$ であるから、この不等式の各辺に $x^{2n+2}$ を掛けると次のようになる。
$$ 0 \le \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} \le \frac{x^{2n+2}}{1-a^2} $$
これにより、積分値の絶対値を次のように評価できる。
$$ \begin{aligned} \left| \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx \right| &\le \left| \int_0^a \left| \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} \right| dx \right| \\ &\le \left| \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-a^2} dx \right| \\ &= \frac{1}{1-a^2} \left| \left[ \frac{x^{2n+3}}{2n+3} \right]_0^a \right| \\ &= \frac{|a|^{2n+3}}{(1-a^2)(2n+3)} \end{aligned} $$
ここで、$n \to \infty$ のとき、$-1 < a < 1$ より $|a|^{2n+3} \to 0$ であり、かつ $2n+3 \to \infty$ であるから、次が成り立つ。
$$ \lim_{n \to \infty} \frac{|a|^{2n+3}}{(1-a^2)(2n+3)} = 0 $$
はさみうちの原理より、次の極限が得られる。
$$ \lim_{n \to \infty} \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2} dx = 0 $$
したがって、(2)の等式において $n \to \infty$ とすると、
$$ 0 = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a} - \sum_{k=0}^\infty \frac{a^{2k+1}}{2k+1} $$
これを整理して両辺を2倍することで、目的の等式が得られる。
$$ \log\frac{1+a}{1-a} = 2\sum_{k=0}^\infty \frac{a^{2k+1}}{2k+1} $$
解説
- (1)は積分計算の基本である部分分数分解を用いる典型的な問題である。
- (2)では、和 $\sum$ と積分 $\int$ の順序交換を行うことで、等比数列の和の公式に帰着させるのがポイントである。この変形は対数関数のテイラー展開(メルカトル級数)の導出などで頻出する。
- (3)では、極限 $\lim_{n \to \infty} \int_0^a f_n(x) dx = 0$ を示すために、被積分関数 $f_n(x)$ の分母を $x$ を含まない定数(ここでは $1-a^2$)で定数化して評価し、はさみうちの原理を用いるという、積分と極限の融合問題における定石を用いている。$a$ が負の場合も考慮し、絶対値をつけて評価することで記述の漏れを防げる。
答え
(1) $\frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a}$
(2) $$ \int_0^a \frac{x^{2n+2}}{1-x^2}\,dx = \frac{1}{2}\log\frac{1+a}{1-a} - \sum_{k=0}^{n}\frac{a^{2k+1}}{2k+1} $$
(3) $$ \log\frac{1+a}{1-a} = 2\sum_{k=0}^{\infty}\frac{a^{2k+1}}{2k+1} $$
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