北海道大学 2006年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) 三角形の辺の長さから余弦定理を用いる方法と、ベクトルの内積を用いる方法の2通りが考えられる。座標が与えられているため、成分計算が容易なベクトルを用いるのが簡明である。
(2) (1)で求めた $\cos \theta$ の式から、$\theta$ を最大化する $a$ を求める。$a>0$ の範囲において $\cos \theta > 0$ であることから $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ とわかり、$\theta$ が最大のとき $\cos \theta$ は最小となる。変数を $a^2$ の塊として扱い、相加平均と相乗平均の大小関係を利用して最小値を求めるのが有効である。 別のアプローチとして、直角三角形の角の差に注目し、正接の加法定理を用いて $\tan \theta$ の最大化に帰着させる手法も典型的である。
解法1
(1)
$\vec{PA}$ と $\vec{PB}$ の成分をそれぞれ求める。$A(0, 1)$、$B(0, 2)$、$P(a, 0)$ より、
$$ \vec{PA} = (0 - a, 1 - 0) = (-a, 1) $$
$$ \vec{PB} = (0 - a, 2 - 0) = (-a, 2) $$
である。これらのベクトルの大きさはそれぞれ、
$$ |\vec{PA}| = \sqrt{(-a)^2 + 1^2} = \sqrt{a^2 + 1} $$
$$ |\vec{PB}| = \sqrt{(-a)^2 + 2^2} = \sqrt{a^2 + 4} $$
となる。また、内積 $\vec{PA} \cdot \vec{PB}$ は、
$$ \vec{PA} \cdot \vec{PB} = (-a) \cdot (-a) + 1 \cdot 2 = a^2 + 2 $$
と計算できる。したがって、内積の定義 $\vec{PA} \cdot \vec{PB} = |\vec{PA}||\vec{PB}|\cos \theta$ より、
$$ \cos \theta = \frac{\vec{PA} \cdot \vec{PB}}{|\vec{PA}||\vec{PB}|} = \frac{a^2 + 2}{\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}} $$
(2)
$a > 0$ であるから、分子 $a^2 + 2 > 0$ であり、$\cos \theta > 0$ である。ゆえに $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ である。
この範囲において、$\theta$ が最大となるのは $\cos \theta$ が最小となるときである。 $\cos \theta > 0$ より、$\cos \theta$ が最小のとき $\cos^2 \theta$ も最小となる。
$$ \cos^2 \theta = \frac{(a^2 + 2)^2}{(a^2 + 1)(a^2 + 4)} = \frac{a^4 + 4a^2 + 4}{a^4 + 5a^2 + 4} $$
ここで、分子と分母の次数を下げるために変形を行う。
$$ \cos^2 \theta = \frac{(a^4 + 5a^2 + 4) - a^2}{a^4 + 5a^2 + 4} = 1 - \frac{a^2}{a^4 + 5a^2 + 4} $$
$a > 0$ より $a^2 > 0$ であるから、分母と分子を $a^2$ で割ると、
$$ \cos^2 \theta = 1 - \frac{1}{a^2 + \frac{4}{a^2} + 5} $$
$\cos^2 \theta$ が最小となるのは、引く数である $\frac{1}{a^2 + \frac{4}{a^2} + 5}$ が最大となるとき、すなわち分母の $a^2 + \frac{4}{a^2} + 5$ が最小となるときである。
$a^2 > 0$, $\frac{4}{a^2} > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$ a^2 + \frac{4}{a^2} \geqq 2\sqrt{a^2 \cdot \frac{4}{a^2}} = 2\sqrt{4} = 4 $$
が成り立つ。等号が成立するのは $a^2 = \frac{4}{a^2}$、すなわち $a^4 = 4$ のときである。 $a > 0$ より $a^2 = 2$ となり、$a = \sqrt{2}$ のときに等号が成立する。
以上より、$a^2 + \frac{4}{a^2}$ は $a = \sqrt{2}$ のとき最小となり、このとき $\cos^2 \theta$ および $\cos \theta$ は最小となる。 したがって、$\theta$ が最大になる $a$ の値は $\sqrt{2}$ である。
解法2
(1)
$\triangle APB$ において、点間の距離を求める。 $AP^2 = a^2 + 1^2 = a^2 + 1$ $BP^2 = a^2 + 2^2 = a^2 + 4$ $AB^2 = (0 - 0)^2 + (2 - 1)^2 = 1$
$\triangle APB$ に余弦定理を適用すると、
$$ AB^2 = AP^2 + BP^2 - 2 \cdot AP \cdot BP \cos \theta $$
値を代入して整理すると、
$$ 1 = (a^2 + 1) + (a^2 + 4) - 2\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}\cos \theta $$
$$ 2\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}\cos \theta = 2a^2 + 4 $$
$$ \cos \theta = \frac{2a^2 + 4}{2\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}} = \frac{a^2 + 2}{\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}} $$
(2)
$\angle OPA = \alpha$、$\angle OPB = \beta$ とおくと、$\theta = \beta - \alpha$ である。 直角三角形 $OPA$ と $OPB$ に注目すると、
$$ \tan \alpha = \frac{1}{a}, \quad \tan \beta = \frac{2}{a} $$
である。$a > 0$ より $0 < \alpha < \beta < \frac{\pi}{2}$ であるため、$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ となる。
この範囲では、$\theta$ が最大となるとき $\tan \theta$ も最大となるため、$\tan \theta$ の最大値を考える。 正接の加法定理を用いると、
$$ \tan \theta = \tan(\beta - \alpha) = \frac{\tan \beta - \tan \alpha}{1 + \tan \beta \tan \alpha} $$
これに求めた $\tan \alpha$, $\tan \beta$ を代入すると、
$$ \tan \theta = \frac{\frac{2}{a} - \frac{1}{a}}{1 + \frac{2}{a} \cdot \frac{1}{a}} = \frac{\frac{1}{a}}{1 + \frac{2}{a^2}} $$
分母分子に $a$ を掛けると、
$$ \tan \theta = \frac{1}{a + \frac{2}{a}} $$
$\tan \theta$ が最大となるのは、分母 $a + \frac{2}{a}$ が最小となるときである。 $a > 0$, $\frac{2}{a} > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$ a + \frac{2}{a} \geqq 2\sqrt{a \cdot \frac{2}{a}} = 2\sqrt{2} $$
が成り立つ。等号が成立するのは $a = \frac{2}{a}$、すなわち $a^2 = 2$ のときである。 $a > 0$ より、$a = \sqrt{2}$ のときに等号が成立する。
したがって、分母は $a = \sqrt{2}$ のとき最小値 $2\sqrt{2}$ をとり、このとき $\tan \theta$ および $\theta$ は最大となる。 よって、求める $a$ の値は $\sqrt{2}$ である。
解説
2点を見込む角の最大化問題は、大学入試における頻出のテーマの一つである(「見込む角の最大化」と呼ばれることが多い)。
(1) はベクトルの内積を用いるか、余弦定理を用いることでスムーズに導出できる。成分が明確に与えられている場合は、ベクトルの内積を利用する方が計算ミスを減らしやすい。
(2) は(1)で求めた式を直接評価するアプローチ(解法1)と、$\tan \theta$ に帰着させるアプローチ(解法2)のいずれも重要である。 (1)の誘導に乗って $\cos \theta$ を用いる場合、そのまま微分するのは計算量が大きく煩雑である。平方して根号を外し、分子の次数を下げて変数を分母に集め、相加平均と相乗平均の大小関係を用いるのが典型的な計算の工夫である。 一方、直角三角形を背景とする設定に着目し、正接の加法定理を用いると、計算が格段に簡略化される。この手法は汎用性が高いため、解法の一つとして定着させておくと見通しが良くなる。
答え
(1) $\cos \theta = \frac{a^2 + 2}{\sqrt{a^2 + 1}\sqrt{a^2 + 4}}$
(2) $a = \sqrt{2}$
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