北海道大学 2006年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) は三角関数の積の積分です。積和の公式を用いて和の形に直してから積分を実行します。このとき、公式の分母に現れる文字式の値が $0$ になるかならないかで場合分けが必要になります。
(2) は (1) の結果を利用する問題です。被積分関数の $(\sum \cdots)^2$ を展開し、積分と和の順序を交換することで、(1) で求めた積分 $I_{m,n}$ の形を作り出します。
解法1
(1) 積和の公式より、
$$ \cos mx \cos nx = \frac{1}{2} \{ \cos(m+n)x + \cos(m-n)x \} $$
が成り立つ。積分 $I_{m,n}$ を計算するにあたり、$m+n$ および $m-n$ が $0$ になるかどうかで場合分けを行う。
(i) $|m| \neq |n|$ のとき
$m+n \neq 0$ かつ $m-n \neq 0$ であるから、
$$ \begin{aligned} I_{m,n} &= \frac{1}{2} \int_0^{2\pi} \{ \cos(m+n)x + \cos(m-n)x \} dx \\ &= \frac{1}{2} \left[ \frac{\sin(m+n)x}{m+n} + \frac{\sin(m-n)x}{m-n} \right]_0^{2\pi} \\ &= 0 \end{aligned} $$
となる。($m+n, m-n$ は整数であるため、$\sin 2(m+n)\pi = 0, \sin 2(m-n)\pi = 0$ となる)
(ii) $|m| = |n| \neq 0$ のとき
$m = n$ または $m = -n$ である。$\cos$ は偶関数なので、いずれの場合も $\cos mx \cos nx = \cos^2 mx$ となる。 半角の公式より、
$$ \begin{aligned} I_{m,n} &= \int_0^{2\pi} \cos^2 mx dx \\ &= \int_0^{2\pi} \frac{1 + \cos 2mx}{2} dx \\ &= \frac{1}{2} \left[ x + \frac{\sin 2mx}{2m} \right]_0^{2\pi} \\ &= \pi \end{aligned} $$
となる。
(iii) $m = n = 0$ のとき
$\cos 0 = 1$ より、
$$ \begin{aligned} I_{0,0} &= \int_0^{2\pi} 1 \cdot 1 dx \\ &= \left[ x \right]_0^{2\pi} \\ &= 2\pi \end{aligned} $$
となる。
(2) 被積分関数を展開すると、
$$ \left( \sum_{k=1}^n \sqrt{k} \cos kx \right)^2 = \sum_{k=1}^n (\sqrt{k} \cos kx)^2 + 2 \sum_{1 \leqq k < l \leqq n} (\sqrt{k} \cos kx)(\sqrt{l} \cos lx) $$
$$ = \sum_{k=1}^n k \cos^2 kx + 2 \sum_{1 \leqq k < l \leqq n} \sqrt{kl} \cos kx \cos lx $$
となる。両辺を $x$ について $0$ から $2\pi$ まで積分すると、和と積分の順序を交換して、
$$ J_n = \sum_{k=1}^n k \int_0^{2\pi} \cos^2 kx dx + 2 \sum_{1 \leqq k < l \leqq n} \sqrt{kl} \int_0^{2\pi} \cos kx \cos lx dx $$
$$ = \sum_{k=1}^n k I_{k,k} + 2 \sum_{1 \leqq k < l \leqq n} \sqrt{kl} I_{k,l} $$
と表せる。 ここで、$k, l$ は自然数であるから、$k \neq 0$ であり、(1) の (ii) より $I_{k,k} = \pi$ である。 また、$1 \leqq k < l \leqq n$ のとき、$k$ と $l$ は異なる自然数であるため $|k| \neq |l|$ であり、(1) の (i) より $I_{k,l} = 0$ である。
したがって、第2項はすべて $0$ となり、
$$ \begin{aligned} J_n &= \sum_{k=1}^n k \cdot \pi + 2 \sum_{1 \leqq k < l \leqq n} \sqrt{kl} \cdot 0 \\ &= \pi \sum_{k=1}^n k \\ &= \pi \cdot \frac{1}{2} n(n+1) \\ &= \frac{1}{2} n(n+1)\pi \end{aligned} $$
と求まる。
解説
(1) は「関数の直交性」と呼ばれる性質を確認する有名な積分計算です。文字定数を含む三角関数の積分では、分母が $0$ になるケースを見落とさないように注意が必要です。今回は $m$ と $n$ が「整数」とされているため、$m=n=0$ の場合も独立して考える必要があります。
(2) は $(\sum)^2$ の展開式を利用します。和の記号 $\Sigma$ を用いた展開に不慣れな場合は、$(A+B+C)^2 = A^2+B^2+C^2+2AB+2BC+2CA$ のように、二乗の項と異なる2つの項の積に分けて整理すると見通しが良くなります。(1) の結果を利用することで、異なる項の積の積分がすべて $0$ になる(クロネッカーのデルタの性質に類似)ため、計算が劇的に簡単になります。
答え
(1) $|m| \neq |n|$ のとき $0$ $|m| = |n| \neq 0$ のとき $\pi$ $m = n = 0$ のとき $2\pi$
(2) $J_n = \frac{1}{2} n(n+1)\pi$
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