九州大学 1961年 文系 第6問 解説

方針・初手
三角形の内角の条件 $A+B+C=\pi$ を用いて、変数を2つに減らすことから始めます。
具体的には、$C = \pi - (A+B)$ を用いて $\sin\frac{C}{2}$ を $A$ と $B$ の式で表します。残る $\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}$ には積和の公式を適用し、式全体を和や差の形に展開します。最終的に、式を1つの変数(たとえば $\cos\frac{A+B}{2}$)の2次関数と見なして平方完成し、取り得る値の上限を評価して $\frac{1}{4}$ 未満になることを示します。
解法1
$A, B, C$ は三角形の内角であるから、$A+B+C=\pi$ かつ $A>0, B>0, C>0$ である。
まず、$C = \pi - (A+B)$ であるから、$\sin\frac{C}{2}$ は次のように変形できる。
$$\begin{aligned} \sin\frac{C}{2} &= \sin\left(\frac{\pi - (A+B)}{2}\right) \\ &= \sin\left(\frac{\pi}{2} - \frac{A+B}{2}\right) \\ &= \cos\frac{A+B}{2} \end{aligned}$$
また、積和の公式を用いると、
$$\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2} = -\frac{1}{2}\left(\cos\frac{A+B}{2} - \cos\frac{A-B}{2}\right)$$
となる。これらを証明したい不等式の左辺に代入すると、
$$\begin{aligned} \sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2} &= -\frac{1}{2}\left(\cos\frac{A+B}{2} - \cos\frac{A-B}{2}\right)\cos\frac{A+B}{2} \end{aligned}$$
ここで、$t = \cos\frac{A+B}{2}$ とおく。
$A>0, B>0$ であり、$A+B < \pi$ であるから、$0 < \frac{A+B}{2} < \frac{\pi}{2}$ となる。したがって、$t$ の取り得る値の範囲は $0 < t < 1$ である。
与式を $t$ の関数として整理し、平方完成を行う。
$$\begin{aligned} -\frac{1}{2}\left(t - \cos\frac{A-B}{2}\right)t &= -\frac{1}{2}t^2 + \frac{1}{2}t\cos\frac{A-B}{2} \\ &= -\frac{1}{2}\left( t^2 - t\cos\frac{A-B}{2} \right) \\ &= -\frac{1}{2}\left( t - \frac{1}{2}\cos\frac{A-B}{2} \right)^2 + \frac{1}{8}\cos^2\frac{A-B}{2} \end{aligned}$$
すべての実数において平方式は $0$ 以上であるため、$-\frac{1}{2}\left( t - \frac{1}{2}\cos\frac{A-B}{2} \right)^2 \leqq 0$ が成り立つ。
また、余弦の値の範囲は $-1 \leqq \cos\frac{A-B}{2} \leqq 1$ であるから、$\cos^2\frac{A-B}{2} \leqq 1$ が成り立つ。
これらの不等式を用いると、次のように上から評価できる。
$$-\frac{1}{2}\left( t - \frac{1}{2}\cos\frac{A-B}{2} \right)^2 + \frac{1}{8}\cos^2\frac{A-B}{2} \leqq 0 + \frac{1}{8} \cdot 1 = \frac{1}{8}$$
したがって、左辺の最大値は高々 $\frac{1}{8}$ であり、$\frac{1}{8} < \frac{1}{4}$ であるから、
$$\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2} \leqq \frac{1}{8} < \frac{1}{4}$$
が成り立つことが示された。
解法2
関数 $f(x) = \log(\sin x)$ を考える。定義域を $0 < x < \frac{\pi}{2}$ とする。
$f(x)$ の導関数を計算する。
$$f'(x) = \frac{\cos x}{\sin x}$$
さらに微分して第2次導関数を求める。
$$\begin{aligned} f''(x) &= \frac{(-\sin x)\sin x - \cos x(\cos x)}{\sin^2 x} \\ &= -\frac{\sin^2 x + \cos^2 x}{\sin^2 x} \\ &= -\frac{1}{\sin^2 x} \end{aligned}$$
$0 < x < \frac{\pi}{2}$ において $f''(x) < 0$ であるから、$f(x)$ はこの区間で上に凸な関数である。
$A, B, C$ は三角形の内角であるから、$A+B+C=\pi$ を満たし、$\frac{A}{2}, \frac{B}{2}, \frac{C}{2}$ はすべて $0$ から $\frac{\pi}{2}$ の範囲にある。
上に凸な関数に対するイェンセンの不等式より、次が成り立つ。
$$\frac{f\left(\frac{A}{2}\right) + f\left(\frac{B}{2}\right) + f\left(\frac{C}{2}\right)}{3} \leqq f\left(\frac{\frac{A}{2} + \frac{B}{2} + \frac{C}{2}}{3}\right)$$
$\frac{A}{2} + \frac{B}{2} + \frac{C}{2} = \frac{\pi}{2}$ であるから、右辺の引数は $\frac{\pi}{6}$ となる。不等式を書き換えると、
$$\frac{1}{3} \left( \log\left(\sin\frac{A}{2}\right) + \log\left(\sin\frac{B}{2}\right) + \log\left(\sin\frac{C}{2}\right) \right) \leqq \log\left(\sin\frac{\pi}{6}\right)$$
対数の性質を用いてまとめる。
$$\log\left(\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2}\right) \leqq 3\log\frac{1}{2} = \log\frac{1}{8}$$
対数関数の底 $e$ は $1$ より大きく単調増加であるため、真数同士の大小関係はそのまま保たれる。
$$\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2} \leqq \frac{1}{8}$$
$\frac{1}{8} < \frac{1}{4}$ であるから、
$$\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2} < \frac{1}{4}$$
が示された。
解説
三角関数の不等式を証明する典型問題です。 三角形の内角の和が $\pi$ になるという条件を使って変数を減らし、積和の公式で式を展開して2次関数の最大値問題に帰着させるアプローチ(解法1)が最も標準的で汎用性があります。平方完成をした後は、「2乗の部分は $0$ 以上」「$\cos$ の部分は $1$ 以下」という基本事項を用いて上から評価すれば十分です。
また、解法2のように、関数の凸性(上に凸であること)を利用するイェンセンの不等式を用いるアプローチも強力です。積の形のままでは凸性が使いにくいため、対数をとって和の形に直すのがポイントです。
答え
題意の不等式 $\sin\frac{A}{2}\sin\frac{B}{2}\sin\frac{C}{2} < \frac{1}{4}$ が成立することが示された。
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