九州大学 1972年 文系 第3問 解説

方針・初手
- (1) は二つの式の差をとり、それが $0$ 以上になることを完全平方式の和を作ることで示す。
- (2) は (1) の不等式を利用するために、$a = \log x - 1$, $b = \log y - 2$, $c = \log z - 3$ とおいて式を適用する。対数の性質 $\log x + \log y + \log z = \log(xyz)$ を用いて条件式を利用する。
解法1
(1)
$3(a^2+b^2+c^2)$ と $(a+b+c)^2$ の差をとると、
$$\begin{aligned} 3(a^2+b^2+c^2) - (a+b+c)^2 &= 3a^2+3b^2+3c^2 - (a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca) \\ &= 2a^2+2b^2+2c^2-2ab-2bc-2ca \\ &= (a^2-2ab+b^2) + (b^2-2bc+c^2) + (c^2-2ca+a^2) \\ &= (a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \end{aligned}$$
$a, b, c$ は実数であるから、$(a-b)^2 \geqq 0$, $(b-c)^2 \geqq 0$, $(c-a)^2 \geqq 0$ である。 したがって、
$$(a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \geqq 0$$
が成り立つ。よって、
$$3(a^2+b^2+c^2) \geqq (a+b+c)^2$$
等号が成立するのは、$a-b=0$ かつ $b-c=0$ かつ $c-a=0$、すなわち $a=b=c$ のときである。
(2)
(1)で示した不等式において、$a = \log x - 1$, $b = \log y - 2$, $c = \log z - 3$ とおく。$x>0, y>0, z>0$ より $a, b, c$ は実数となるため、(1)の結果を用いることができる。
$$3 \{ (\log x - 1)^2 + (\log y - 2)^2 + (\log z - 3)^2 \} \geqq \{ (\log x - 1) + (\log y - 2) + (\log z - 3) \}^2$$
ここで、右辺の括弧内を計算すると、対数の性質より、
$$\begin{aligned} (\log x - 1) + (\log y - 2) + (\log z - 3) &= \log x + \log y + \log z - 6 \\ &= \log(xyz) - 6 \end{aligned}$$
条件より $xyz = 1000 = 10^3$ であり、底は $10$(常用対数)であるから、
$$\log(xyz) = \log_{10} 10^3 = 3$$
したがって、
$$(\log x - 1) + (\log y - 2) + (\log z - 3) = 3 - 6 = -3$$
これを不等式に代入して、
$$3 \{ (\log x - 1)^2 + (\log y - 2)^2 + (\log z - 3)^2 \} \geqq (-3)^2 = 9$$
両辺を $3$ で割ると、
$$(\log x - 1)^2 + (\log y - 2)^2 + (\log z - 3)^2 \geqq 3$$
よって、求める式の最小値は $3$ となる可能性がある。 この等号が成立するのは、(1)より $a=b=c$ のときであるから、
$$\log x - 1 = \log y - 2 = \log z - 3$$
このとき、$a+b+c = -3$ かつ $a=b=c$ であるから、$3a = -3$ より $a = b = c = -1$ となる。
$$\log x - 1 = -1 \iff \log x = 0 \iff x = 10^0 = 1$$
$$\log y - 2 = -1 \iff \log y = 1 \iff y = 10^1 = 10$$
$$\log z - 3 = -1 \iff \log z = 2 \iff z = 10^2 = 100$$
これらの値は $x>0, y>0, z>0$ を満たし、さらに $xyz = 1 \cdot 10 \cdot 100 = 1000$ の条件も満たしているため、適する。
よって、最小値は $3$ であり、そのときの $x, y, z$ の値は $x=1, y=10, z=100$ である。
解法2
(1)
コーシー・シュワルツの不等式を用いて示すこともできる。 ベクトル $\vec{u} = (a, b, c)$ と $\vec{v} = (1, 1, 1)$ に対して、コーシー・シュワルツの不等式 $|\vec{u}|^2 |\vec{v}|^2 \geqq (\vec{u} \cdot \vec{v})^2$ を適用すると、
$$(a^2 + b^2 + c^2)(1^2 + 1^2 + 1^2) \geqq (a \cdot 1 + b \cdot 1 + c \cdot 1)^2$$
$$3(a^2 + b^2 + c^2) \geqq (a+b+c)^2$$
等号成立条件は、実数 $k$ を用いて $\vec{u} = k\vec{v}$ と表せること、つまり $a=b=c$ のときである。
(2)の解法は解法1と同様である。
解説
- (1) の不等式証明において、$2a^2+2b^2+2c^2-2ab-2bc-2ca = (a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2$ と変形する手法は、不等式証明や方程式の解の条件を求める際によく用いられる典型的な式変形である。
- (2) のように、誘導((1)の結果)を用いて複雑な式の最大・最小を求める問題では、元の式のどの部分が誘導のどの文字に対応するかを見抜くことが重要である。
- 等号成立条件を確認し、それが問題文の条件($x>0, y>0, z>0$ および $xyz=1000$)を実際に満たすことを答案に明記する必要がある。
答え
(1) $3(a^2+b^2+c^2) \geqq (a+b+c)^2$
(2) 最小値 $3$ (このとき $x=1, y=10, z=100$)
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