九州大学 1980年 理系 第5問 解説

方針・初手
$P$と$Q$の位置を時刻 $t$ の関数として設定し、それぞれの速度に関する条件から、$P$と$Q$の距離 $f(t)$ についての微分方程式を立式する。 立式された $f(t)$ の関係式が1階線形常微分方程式となるため、これを解いて $f(t)$ の具体的な式を求めることが基本方針となる。
解法1
時刻 $t$ における点 $P, Q$ の座標をそれぞれ $x_P(t), x_Q(t)$ とする。 $P$ が先行し、$Q$ が後続であるから、$P, Q$ 間の距離 $f(t)$ は
$$f(t) = x_P(t) - x_Q(t)$$
と表される。また、初期状態において $P$ は $Q$ より先行しているため、$f(0) > 0$ である。
問題の条件より、各点の速度について以下が成り立つ。
$$\begin{aligned} \frac{dx_P}{dt} &= k \\ \frac{dx_Q}{dt} &= \lambda f(t) \end{aligned}$$
これらを辺々引くと
$$\frac{dx_P}{dt} - \frac{dx_Q}{dt} = k - \lambda f(t)$$
すなわち、$f(t)$ に関する微分方程式として
$$f'(t) = k - \lambda f(t)$$
が得られる。
(1)
上記の微分方程式を変形すると
$$f'(t) + \lambda f(t) = k$$
両辺に $e^{\lambda t}$ を掛けると
$$\begin{aligned} e^{\lambda t} f'(t) + \lambda e^{\lambda t} f(t) &= k e^{\lambda t} \\ \{ e^{\lambda t} f(t) \}' &= k e^{\lambda t} \end{aligned}$$
両辺を $t$ について積分すると
$$\begin{aligned} e^{\lambda t} f(t) &= \frac{k}{\lambda} e^{\lambda t} + C \quad (C \text{は積分定数}) \\ f(t) &= \frac{k}{\lambda} + C e^{-\lambda t} \end{aligned}$$
$t=0$ を代入すると、$f(0) = \frac{k}{\lambda} + C$ より $C = f(0) - \frac{k}{\lambda}$ となる。これを代入して整理すると
$$\begin{aligned} f(t) &= \frac{k}{\lambda} + \left( f(0) - \frac{k}{\lambda} \right) e^{-\lambda t} \\ &= \frac{k}{\lambda} (1 - e^{-\lambda t}) + f(0) e^{-\lambda t} \end{aligned}$$
ここで、$k > 0, \lambda > 0$ であり、$t \ge 0$ においては $0 < e^{-\lambda t} \le 1$ より $1 - e^{-\lambda t} \ge 0$ である。 また、$e^{-\lambda t} > 0$ かつ $f(0) > 0$ であるから、
$$\frac{k}{\lambda} (1 - e^{-\lambda t}) \ge 0, \quad f(0) e^{-\lambda t} > 0$$
よって、$t \ge 0$ において常に $f(t) > 0$ が成り立つ。 $f(t) > 0$ であることは、先行する $P$ を後続の $Q$ が追い抜く(または追いつく)ことがないことを意味する。 したがって、$Q$ は決して $P$ に追いつかない。
(2)
(1)の過程において、$f(0) = a$ とすると、積分定数 $C$ は
$$C = a - \frac{k}{\lambda}$$
となる。これを $f(t) = \frac{k}{\lambda} + C e^{-\lambda t}$ に代入すると
$$f(t) = \frac{k}{\lambda} + \left( a - \frac{k}{\lambda} \right) e^{-\lambda t}$$
解法2
(1)の別解(背理法による証明)
$Q$ が $P$ に追いつくことがあると仮定する。 すなわち、ある時刻 $t_1 > 0$ で初めて $f(t_1) = 0$ になるとする。 このとき、$0 \le t < t_1$ においては $f(t) > 0$ であり、$f(t)$ は $t=t_1$ において減少して $0$ に到達するため、
$$f'(t_1) \le 0$$
でなければならない。
一方で、$f(t)$ が満たす微分方程式
$$f'(t) = k - \lambda f(t)$$
に対して $t = t_1$ を代入すると
$$f'(t_1) = k - \lambda f(t_1) = k - \lambda \cdot 0 = k$$
問題の条件より $k > 0$ であるから
$$f'(t_1) > 0$$
となり、これは $f'(t_1) \le 0$ に矛盾する。 したがって、仮定は誤りであり、$Q$ は決して $P$ に追いつかない。
※ (2)の解法は解法1と同様であるため省略する。
解説
本問は、物理的な運動を微分方程式に翻訳して解く、微積分・微分方程式における標準的な問題である。 「速度は位置の時間微分である」という基本関係を用いて、$P, Q$間の距離 $f(t)$ が満たす微分方程式 $f'(t) + \lambda f(t) = k$ を正しく導けるかがポイントとなる。
この形の微分方程式(1階線形常微分方程式)は、両辺に積分因子 $e^{\lambda t}$ を掛けて積の微分の逆演算を利用し、$\{e^{\lambda t}f(t)\}'$ の形を作るのが定石である。 また、(1)において $Q$ が $P$ に追いつかないことの証明は、解法1のように関数 $f(t)$ を具体的に求めてから常に $f(t) > 0$ となることを示すのが素直な手順だが、解法2のように微分方程式の性質と微分の図形的な意味(減少するなら導関数は0以下)を利用して直接的に背理法で示すこともでき、数学的に簡潔で強力なアプローチである。
答え
(1) $t \ge 0$ において常に $f(t) > 0$ であることが示されたため、$Q$ は決して $P$ に追いつかない。(証明終)
(2)
$$f(t) = \frac{k}{\lambda} + \left( a - \frac{k}{\lambda} \right) e^{-\lambda t}$$
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