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名古屋大学 1980年 理系 第4問 解説

数学2/指数対数数学3/微分法テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1980年 理系 第4問 解説

方針・初手

比較する2つの数はともに正であるから、両辺の商をとって $1$ と比較することを考える。

具体的には、$(0.99)^{99} > 0$、$(1.01)^{-101} > 0$ であるため、両者の比である $(0.99)^{99} (1.01)^{101}$ と $1$ の大小関係を調べればよい。

これを関数に一般化して微分を用いて調べる方法と、二項定理に関連する不等式を用いて下から評価する方法が考えられる。

解法1

自然対数を $\log x$ と表す。 $0 \le x < 1$ において、関数 $f(x)$ を次のように定める。

$$ f(x) = (1-x)\log(1-x) + (1+x)\log(1+x) $$

$f(x)$ を $x$ について微分すると、

$$ \begin{aligned} f'(x) &= -1 \cdot \log(1-x) + (1-x) \cdot \frac{-1}{1-x} + 1 \cdot \log(1+x) + (1+x) \cdot \frac{1}{1+x} \\ &= -\log(1-x) - 1 + \log(1+x) + 1 \\ &= \log(1+x) - \log(1-x) \\ &= \log \frac{1+x}{1-x} \end{aligned} $$

$0 < x < 1$ のとき、常に $1+x > 1-x > 0$ であるから $\frac{1+x}{1-x} > 1$ が成り立つ。

したがって、$f'(x) > \log 1 = 0$ となり、$f(x)$ は $0 \le x < 1$ において単調に増加する。

$f(0) = 1 \log 1 + 1 \log 1 = 0$ であるから、$0 < x < 1$ のとき $f(x) > 0$ である。 $x = 0.01$ を代入すると $f(0.01) > 0$ となるので、

$$ 0.99 \log 0.99 + 1.01 \log 1.01 > 0 $$

両辺を $100$ 倍すると、

$$ 99 \log 0.99 + 101 \log 1.01 > 0 $$

対数の性質より、

$$ \log \left( (0.99)^{99} (1.01)^{101} \right) > 0 $$

底 $e$ は $e > 1$ であるから、真数の大小を比較して、

$$ (0.99)^{99} (1.01)^{101} > 1 $$

両辺に正の数 $(1.01)^{-101}$ を掛けることで、次の大小関係を得る。

$$ (0.99)^{99} > (1.01)^{-101} $$

解法2

比較する2数はともに正であるため、$(0.99)^{99}$ と $(1.01)^{-101}$ の大小関係は、両辺に正の数 $(1.01)^{101}$ を掛けた積 $(0.99)^{99} (1.01)^{101}$ と $1$ の大小関係と一致する。

積を以下のように変形する。

$$ \begin{aligned} (0.99)^{99} (1.01)^{101} &= (0.99)^{99} (1.01)^{99} (1.01)^2 \\ &= (0.99 \times 1.01)^{99} \times 1.01^2 \\ &= (1 - 0.01^2)^{99} \times 1.0201 \\ &= (1 - 0.0001)^{99} \times 1.0201 \end{aligned} $$

ここで、実数 $t \ge -1$ と $2$ 以上の自然数 $n$ に対して、不等式 $(1+t)^n \ge 1+nt$ が成り立つ(ベルヌーイの不等式、等号成立は $t=0$ のとき)。

証明: $g(t) = (1+t)^n - (1+nt)$ とおくと、$g'(t) = n(1+t)^{n-1} - n$ $-1 \le t < 0$ のとき $g'(t) < 0$、$t > 0$ のとき $g'(t) > 0$ であるから、$g(t)$ は $t=0$ で最小値 $g(0) = 0$ をとる。 よって、$t \neq 0$ ならば $g(t) > 0$ すなわち $(1+t)^n > 1+nt$ が示される。

この不等式において $t = -0.0001$、$n = 99$ とすると、

$$ (1 - 0.0001)^{99} > 1 - 99 \times 0.0001 = 1 - 0.0099 = 0.9901 $$

この評価式を用いて積を下から評価する。

$$ \begin{aligned} (1 - 0.0001)^{99} \times 1.0201 &> 0.9901 \times 1.0201 \\ &= 0.9901 \times (1 + 0.0201) \\ &= 0.9901 + 0.01990101 \\ &= 1.01000101 \\ &> 1 \end{aligned} $$

したがって、$(0.99)^{99} (1.01)^{101} > 1$ が成り立つ。

両辺に正の数 $(1.01)^{-101}$ を掛けることで、次の結果を得る。

$$ (0.99)^{99} > (1.01)^{-101} $$

解説

底も指数も異なる2つの累乗の数の大小比較である。そのままでは比較が難しいため、比をとって $1$ と比較する、すなわち積 $(0.99)^{99}(1.01)^{101}$ と $1$ の大小関係に持ち込むのが最大のポイントである。

解法1のように、指数部分と底の構造から関数 $f(x) = (1-x)\log(1-x) + (1+x)\log(1+x)$ を定義して微分に持ち込む方法は、汎用性が高く確実なアプローチである。

解法2のように、指数法則を利用して共通の指数でまとめ、ベルヌーイの不等式 $(1+t)^n \ge 1+nt$ を用いて下から評価する方法は、計算量が少なく鮮やかである。近似値の評価手法として非常に実戦的なテクニックであるため、習得しておきたい。

答え

$$ (0.99)^{99} > (1.01)^{-101} $$

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