九州大学 1987年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) 与えられた1次変換の定義に従って変換後の座標を式に代入し、それがもとの曲線 $C$ の方程式を満たすことを直接確認する。
(2) $x$ と $y$ についての対称式であることに着目する。座標軸を $\frac{\pi}{4}$ または $-\frac{\pi}{4}$ 回転させて $xy$ の項を消去することで、楕円の標準形を導く。
(3) 2つのアプローチが考えられる。(1)の変換が面積を保存することを利用し、領域の移動先を追跡することで対称性から面積を求める方法と、曲線の方程式を陽関数表示して $y$ (または $x$) について定積分を計算する方法である。
解法1
(1)
点 $P(x,y)$ が曲線 $C$ 上の点であるから、
$$x^2 + xy + y^2 = k^2$$
が成り立つ。点 $P$ の1次変換 $f$ による像 $Q(X,Y)$ は、
$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -y \\ x + y \end{pmatrix}$$
より、$X = -y, Y = x+y$ である。これらを用いて $X^2 + XY + Y^2$ を計算すると、
$$\begin{aligned} X^2 + XY + Y^2 &= (-y)^2 + (-y)(x+y) + (x+y)^2 \\ &= y^2 - xy - y^2 + x^2 + 2xy + y^2 \\ &= x^2 + xy + y^2 \end{aligned}$$
となる。仮定より $x^2 + xy + y^2 = k^2$ であるため、
$$X^2 + XY + Y^2 = k^2$$
が成り立つ。したがって、点 $Q(X,Y)$ も曲線 $C$ 上の点であることが示された。
(2)
曲線 $C$ 上の点 $(x,y)$ を、原点を中心に角 $\theta = \frac{\pi}{4}$ だけ回転させた点を $(X,Y)$ とする。このとき、
$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\frac{\pi}{4} & -\sin\frac{\pi}{4} \\ \sin\frac{\pi}{4} & \cos\frac{\pi}{4} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$$
であり、逆変換を考えると
$$\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\frac{\pi}{4} & \sin\frac{\pi}{4} \\ -\sin\frac{\pi}{4} & \cos\frac{\pi}{4} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{X+Y}{\sqrt{2}} \\ \frac{-X+Y}{\sqrt{2}} \end{pmatrix}$$
となる。これを $C$ の方程式 $x^2 + xy + y^2 = k^2$ に代入すると、
$$\left( \frac{X+Y}{\sqrt{2}} \right)^2 + \frac{X+Y}{\sqrt{2}} \frac{-X+Y}{\sqrt{2}} + \left( \frac{-X+Y}{\sqrt{2}} \right)^2 = k^2$$
$$\frac{X^2 + 2XY + Y^2}{2} + \frac{-X^2 + Y^2}{2} + \frac{X^2 - 2XY + Y^2}{2} = k^2$$
$$\frac{X^2 + 3Y^2}{2} = k^2$$
整理すると、
$$\frac{X^2}{2k^2} + \frac{Y^2}{\frac{2}{3}k^2} = 1$$
$k>0$ より $2k^2 > 0$ かつ $\frac{2}{3}k^2 > 0$ であるから、これは楕円を表す。 したがって、$C$ を $\frac{\pi}{4}$ だけ回転させた図形は楕円であるため、元の曲線 $C$ もだ円であることが示された。
(3)
(2) の結果より、曲線 $C$ はだ円であり、その内部の面積を $S_{\text{all}}$ とすると、回転によって面積は変わらないため、
$$S_{\text{all}} = \pi \times \sqrt{2k^2} \times \sqrt{\frac{2}{3}k^2} = \frac{2\sqrt{3}}{3}\pi k^2$$
である。
(1) の1次変換 $f$ の表現行列を $A = \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$ とする。 行列式は $\det A = 0 \cdot 1 - (-1) \cdot 1 = 1$ であるから、変換 $f$ は図形の面積を保存する。 また、(1) より曲線 $C$ は $f$ によって不変である。
$C$ の内部のうち、第1象限 ($x \ge 0, y \ge 0$) の部分の領域を $D_1$ とし、その面積を $S$ とする。 $D_1$ 内の点 $(x,y)$ は、$f$ によって $X = -y \le 0, Y = x+y \ge 0$ に移る。 さらに $Y - (-X) = x+y - y = x \ge 0$ より $Y \ge -X$ であるから、領域 $D_1$ は $f$ によって第2象限内の領域 $D_2$: $X \le 0, Y \ge -X$ に移る。$f$ は面積を保存するため、$D_2$ の面積も $S$ である。
次に、この領域 $D_2$ 内の点 $(x,y)$ (すなわち $x \le 0, y \ge -x$) を $f$ で変換した点を $(X,Y)$ とすると、
$$X = -y \le x \le 0$$
$$Y = x+y \ge 0$$
$$Y - (-X) = x+y - y = x \le 0 \implies Y \le -X$$
となり、第2象限内の領域 $D_3$: $X \le 0, 0 \le Y \le -X$ に移る。同様に $D_3$ の面積も $S$ である。
第2象限は $D_2$ と $D_3$ によって過不足なく分割されるため、$C$ の第2象限の部分の面積は $S + S = 2S$ となる。 さらに、曲線 $C$ の方程式 $x^2 + xy + y^2 = k^2$ は、$x$ と $y$ をそれぞれ $-x, -y$ に置き換えても同値であるから、原点対称である。 したがって、第3象限の面積は第1象限と同じ $S$、第4象限の面積は第2象限と同じ $2S$ となる。 $C$ の内部の面積の合計は、
$$S + 2S + S + 2S = 6S$$
これが $S_{\text{all}}$ に等しいので、
$$6S = \frac{2\sqrt{3}}{3}\pi k^2$$
$$S = \frac{\sqrt{3}}{9}\pi k^2$$
よって、求める面積は $\frac{\sqrt{3}}{9}\pi k^2$ である。
解法2
(3)の別解
$C$ の第1象限の部分の面積 $S$ を、定積分を用いて直接求める。 方程式 $x^2 + xy + y^2 - k^2 = 0$ を $x$ について解くと、
$$x = \frac{-y \pm \sqrt{y^2 - 4(y^2 - k^2)}}{2} = \frac{-y \pm \sqrt{4k^2 - 3y^2}}{2}$$
第1象限においては $x \ge 0$ であるから、
$$\frac{-y \pm \sqrt{4k^2 - 3y^2}}{2} \ge 0 \implies \pm \sqrt{4k^2 - 3y^2} \ge y$$
$y \ge 0$ であるため、複号は正のみが適する。両辺を2乗して整理すると、
$$4k^2 - 3y^2 \ge y^2 \implies y^2 \le k^2$$
$k>0, y \ge 0$ より $0 \le y \le k$ となる。この範囲で曲線は $x = \frac{-y + \sqrt{4k^2 - 3y^2}}{2}$ と表されるため、求める面積 $S$ は
$$S = \int_0^k \frac{-y + \sqrt{4k^2 - 3y^2}}{2} dy = \left[ -\frac{y^2}{4} \right]_0^k + \frac{1}{2} \int_0^k \sqrt{4k^2 - 3y^2} dy$$
$$S = -\frac{k^2}{4} + \frac{1}{2} \int_0^k \sqrt{4k^2 - 3y^2} dy$$
ここで、後半の積分について $y = \frac{2k}{\sqrt{3}} \sin\theta$ と置換する。 $y$ が $0$ から $k$ まで変化するとき、$\theta$ は $0$ から $\frac{\pi}{3}$ まで変化する。また、$dy = \frac{2k}{\sqrt{3}} \cos\theta d\theta$ である。
$$\begin{aligned} \int_0^k \sqrt{4k^2 - 3y^2} dy &= \int_0^{\frac{\pi}{3}} \sqrt{4k^2 - 4k^2 \sin^2\theta} \cdot \frac{2k}{\sqrt{3}} \cos\theta d\theta \\ &= \frac{4k^2}{\sqrt{3}} \int_0^{\frac{\pi}{3}} \cos^2\theta d\theta \\ &= \frac{2k^2}{\sqrt{3}} \int_0^{\frac{\pi}{3}} (1 + \cos 2\theta) d\theta \\ &= \frac{2k^2}{\sqrt{3}} \left[ \theta + \frac{1}{2} \sin 2\theta \right]_0^{\frac{\pi}{3}} \\ &= \frac{2k^2}{\sqrt{3}} \left( \frac{\pi}{3} + \frac{\sqrt{3}}{4} \right) \\ &= \frac{2\sqrt{3}}{9}\pi k^2 + \frac{k^2}{2} \end{aligned}$$
これを元の式に代入して、
$$S = -\frac{k^2}{4} + \frac{1}{2} \left( \frac{2\sqrt{3}}{9}\pi k^2 + \frac{k^2}{2} \right) = \frac{\sqrt{3}}{9}\pi k^2$$
解説
- 本問は2次曲線の性質と1次変換がテーマとなっている。
- (1)の1次変換が「面積を保存する(行列式が1)」「周期6である($A^3=-E$)」という幾何学的な意味に気づくと、(3)で積分の計算を回避して図形的に面積を求めることができる(解法1)。これは出題者の意図とも合致していると思われる。
- 一方で、(3)を陽関数表示からの定積分で押し切ることも十分可能である(解法2)。積分区間の特定や置換積分の処理など、数学IIIの典型的な計算練習として優れたアプローチである。
答え
(1) 略(解説参照)
(2) 略(解説参照)
(3) $\frac{\sqrt{3}}{9}\pi k^2$
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