九州大学 1989年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) 積分区間の上限に変数が含まれる定積分で表された関数(積分方程式)は、両辺を $x$ で微分して微分方程式に帰着させるのが定石である。また、積分区間の上端と下端が一致するような値を代入し、初期条件を求めることも忘れないようにする。
(2) (1)で求めた関数について第2次導関数を計算し、凹凸を調べる。第2次導関数の計算には、(1)で得た微分方程式 $f'(x) = f(x)(f(x)-1)$ を両辺 $x$ で微分して利用すると計算量が抑えられる。漸近線や $y$ 軸との交点も調べてグラフの概形を決定する。
解法1
(1)
与えられた等式
$$f(x) = \int_0^x f(t)(f(t)-1)dt + \frac{1}{3}$$
の両辺に $x=0$ を代入すると、
$$f(0) = \frac{1}{3}$$
である。また、与式の両辺を $x$ で微分すると、
$$f'(x) = f(x)(f(x)-1)$$
となる。$f(0) = \frac{1}{3}$ であり、定数関数 $f(x)=0$ および $f(x)=1$ はこの方程式と初期条件を満たさないため、$f(x) \neq 0$ かつ $f(x) \neq 1$ としてよい。両辺を $f(x)(f(x)-1)$ で割り、変数分離法を用いて解く。
$$\frac{f'(x)}{f(x)(f(x)-1)} = 1$$
部分分数分解を行って積分すると、
$$\int \left( \frac{1}{f(x)-1} - \frac{1}{f(x)} \right) f'(x) dx = \int 1 dx$$
$$\log |f(x)-1| - \log |f(x)| = x + C \quad (C \text{ は積分定数})$$
$$\log \left| \frac{f(x)-1}{f(x)} \right| = x + C$$
$$\left| \frac{f(x)-1}{f(x)} \right| = e^{x+C}$$
絶対値をはずして定数 $\pm e^C$ を $A$ ($A \neq 0$) とおくと、
$$\frac{f(x)-1}{f(x)} = A e^x$$
$x=0$ のとき $f(0) = \frac{1}{3}$ であるから、
$$\frac{\frac{1}{3}-1}{\frac{1}{3}} = A e^0$$
これより $A = -2$ となる。したがって、
$$\frac{f(x)-1}{f(x)} = -2e^x$$
$$1 - \frac{1}{f(x)} = -2e^x$$
$$\frac{1}{f(x)} = 2e^x + 1$$
よって、求める関数 $f(x)$ は、
$$f(x) = \frac{1}{2e^x + 1}$$
(2)
(1)の微分方程式 $f'(x) = f(x)^2 - f(x)$ の両辺をさらに $x$ で微分すると、
$$\begin{aligned} f''(x) &= 2f(x)f'(x) - f'(x) \\ &= f'(x)(2f(x)-1) \end{aligned}$$
(1)の結果から、$e^x > 0$ より常に $2e^x + 1 > 1$ であるため、$0 < f(x) < 1$ である。 したがって、$f(x)-1 < 0$ となり、$f'(x) = f(x)(f(x)-1) < 0$ であるから、$f(x)$ は単調に減少する。
$f'(x) < 0$ より、$f''(x)$ の符号は $-(2f(x)-1)$ の符号と一致する。 $f''(x) = 0$ となるのは、$f(x) = \frac{1}{2}$ のときである。
$$\frac{1}{2e^x + 1} = \frac{1}{2}$$
これを解くと、$2e^x = 1$ より $e^x = \frac{1}{2}$、すなわち $x = -\log 2$ である。
(i) $x < -\log 2$ のとき $0 < e^x < \frac{1}{2}$ より $1 < 2e^x + 1 < 2$ となり、$\frac{1}{2} < f(x) < 1$ である。 このとき $2f(x)-1 > 0$ であり、$f'(x) < 0$ であるから $f''(x) < 0$ となる。 よって、曲線は上に凸である。
(ii) $x > -\log 2$ のとき $e^x > \frac{1}{2}$ より $2e^x + 1 > 2$ となり、$0 < f(x) < \frac{1}{2}$ である。 このとき $2f(x)-1 < 0$ であり、$f'(x) < 0$ であるから $f''(x) > 0$ となる。 よって、曲線は下に凸である。
変曲点は $x = -\log 2$ のときであり、その座標は $\left(-\log 2, \frac{1}{2}\right)$ である。
また、極限を調べると、
$$\lim_{x \to \infty} f(x) = \lim_{x \to \infty} \frac{1}{2e^x + 1} = 0$$
$$\lim_{x \to -\infty} f(x) = \lim_{x \to -\infty} \frac{1}{2e^x + 1} = 1$$
となるため、直線 $y=0$ および $y=1$ が漸近線となる。 $y$ 軸との交点は $\left(0, \frac{1}{3}\right)$ である。
解説
定積分を含む関数方程式から微分方程式を導き出す典型問題である。(1)で得られる微分方程式はロジスティック方程式と呼ばれる有名な形をしている。 (2)において第2次導関数 $f''(x)$ を直接 $f(x) = \frac{1}{2e^x+1}$ を微分して求めてもよいが、$f'(x) = f(x)^2 - f(x)$ の関係式を利用することで計算ミスを減らし、見通しよく符号の判定を行うことができる。
答え
(1)
$$f(x) = \frac{1}{2e^x + 1}$$
(2)
- 区間 $x < -\log 2$ で上に凸
- 区間 $x > -\log 2$ で下に凸
- 変曲点は $\left(-\log 2, \frac{1}{2}\right)$
概形は、$y$ 切片が $\left(0, \frac{1}{3}\right)$、漸近線が $y=0$ および $y=1$ であり、単調減少して変曲点 $\left(-\log 2, \frac{1}{2}\right)$ を境に上に凸から下に凸へと変わる曲線となる。
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