九州大学 1989年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) 与えられた関数 $f(x)$ に含まれる $\cos^2 x$、$\sin^2 x$、$\sin x \cos x$ の項は、それぞれ半角の公式および倍角の公式を用いることで、$\cos 2x$ と $\sin 2x$ の一次式へと次数下げを行うことができます。その後、三角関数の合成を用いることで $f(x)$ の最大値と最小値を $a, b, c$ で表し、それが2次方程式の解の公式で得られる $\alpha, \beta$ と一致することを示します。
(2) 行列の積 $A^2$ を計算し、$A^2 = A$ の各成分を比較することで $a, b, c$ に関する条件式を導き出します。条件によって場合分けを行い、それぞれのケースにおいて (1) の2次方程式がどのような解 $\alpha, \beta$ を持つか(すなわち $f(x)$ の最小値と最大値がどうなるか)を網羅的に調べます。
解法1
(1)
半角・倍角の公式を用いて $f(x)$ を変形する。
$$\begin{aligned} f(x) &= a \frac{1 + \cos 2x}{2} + b \sin 2x + c \frac{1 - \cos 2x}{2} \\ &= \frac{a - c}{2} \cos 2x + b \sin 2x + \frac{a + c}{2} \end{aligned}$$
ここで、三角関数の合成を用いると
$$\frac{a - c}{2} \cos 2x + b \sin 2x = \sqrt{\left(\frac{a - c}{2}\right)^2 + b^2} \sin(2x + \theta)$$
となる($\theta$ は定数)。根号の中を整理すると
$$\sqrt{\frac{(a - c)^2 + 4b^2}{4}} = \frac{\sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2}$$
$-1 \leqq \sin(2x + \theta) \leqq 1$ であるから、$f(x)$ の最大値と最小値はそれぞれ以下のようになる。
$$\text{最大値} = \frac{a + c}{2} + \frac{\sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2}$$
$$\text{最小値} = \frac{a + c}{2} - \frac{\sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2}$$
一方、2次方程式 $t^2 - (a + c)t + ac - b^2 = 0$ を解の公式を用いて解くと
$$\begin{aligned} t &= \frac{(a + c) \pm \sqrt{(a + c)^2 - 4(ac - b^2)}}{2} \\ &= \frac{a + c \pm \sqrt{a^2 + 2ac + c^2 - 4ac + 4b^2}}{2} \\ &= \frac{a + c \pm \sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2} \end{aligned}$$
$\alpha \leqq \beta$ であるから、2つの解はそれぞれ
$$\alpha = \frac{a + c}{2} - \frac{\sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2}$$
$$\beta = \frac{a + c}{2} + \frac{\sqrt{(a - c)^2 + 4b^2}}{2}$$
以上より、$f(x)$ の最小値は $\alpha$ に等しく、最大値は $\beta$ に等しいことが示された。
(2)
行列 $A$ に対し、$A^2 = A$ を成分で計算する。
$$A^2 = \begin{pmatrix} a & b \\ b & c \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & b \\ b & c \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a^2 + b^2 & ab + bc \\ ab + bc & b^2 + c^2 \end{pmatrix}$$
これが $A$ と等しいので、以下の3つの条件式が成り立つ。
$$a^2 + b^2 = a \cdots \text{(i)}$$
$$b(a + c) = b \cdots \text{(ii)}$$
$$b^2 + c^2 = c \cdots \text{(iii)}$$
(ii) より $b(a + c - 1) = 0$ となるため、$b = 0$ または $a + c = 1$ の2つの場合に分ける。
(ア) $b = 0$ のとき
(i), (iii) より $a^2 = a$, $c^2 = c$ となり、それぞれ解くと $a = 0, 1$ および $c = 0, 1$ を得る。 これらを (1) の2次方程式 $t^2 - (a + c)t + ac - b^2 = 0$ に代入して $\alpha, \beta$ を求める。
- $(a, c) = (0, 0)$ のとき、$t^2 = 0$ より $\alpha = 0, \beta = 0$ (最小値 $0$、最大値 $0$)
- $(a, c) = (1, 0)$ のとき、$t^2 - t = 0$ より $\alpha = 0, \beta = 1$ (最小値 $0$、最大値 $1$)
- $(a, c) = (0, 1)$ のとき、$t^2 - t = 0$ より $\alpha = 0, \beta = 1$ (最小値 $0$、最大値 $1$)
- $(a, c) = (1, 1)$ のとき、$t^2 - 2t + 1 = 0$ より $\alpha = 1, \beta = 1$ (最小値 $1$、最大値 $1$)
(イ) $b \neq 0$ のとき
(ii) より $a + c = 1$ である。すなわち $c = 1 - a$。 また、(i) より $b^2 = a - a^2$。 これらを (1) の2次方程式 $t^2 - (a + c)t + ac - b^2 = 0$ に代入する。 1次の係数は $-(a+c) = -1$ であり、定数項は
$$\begin{aligned} ac - b^2 &= a(1 - a) - (a - a^2) \\ &= a - a^2 - a + a^2 = 0 \end{aligned}$$
となる。したがって方程式は $t^2 - t = 0$ となり、解は $t = 0, 1$ である。 $\alpha \leqq \beta$ より $\alpha = 0, \beta = 1$ (最小値 $0$、最大値 $1$)となる。 なお、$b \neq 0$ より $b^2 > 0$ であり、$a - a^2 > 0$ すなわち $0 < a < 1$ を満たす実数 $a, b, c$ は実際に存在する。
以上 (ア), (イ) の結果をまとめると、関数 $f(x)$ の最小値と最大値の組は以下の3通りである。
解法2
(2) について、ケーリー・ハミルトンの定理を用いた別解を示す。
行列 $A$ に対してケーリー・ハミルトンの定理より、単位行列を $E$、零行列を $O$ とすると
$$A^2 - (a + c)A + (ac - b^2)E = O$$
が成り立つ。条件 $A^2 = A$ を代入して整理すると
$$(1 - a - c)A + (ac - b^2)E = O$$
ここで $1 - a - c$ の値によって場合分けを行う。
(ア) $1 - a - c \neq 0$ のとき
$$A = \frac{b^2 - ac}{1 - a - c} E$$
と変形でき、$A$ は単位行列の定数倍(スカラー行列)であることがわかる。 $A = \begin{pmatrix} a & b \\ b & c \end{pmatrix}$ の形から $b = 0$ かつ $a = c$ となる。 したがって $A = aE$ とおける。$A^2 = A$ に代入すると $a^2 E = a E$ となり、$a^2 = a$ より $a = 0$ または $a = 1$ を得る。
- $a = 0$ のとき、$A = O$ ($a=0, b=0, c=0$)。方程式は $t^2 = 0$ となり $\alpha = 0, \beta = 0$。
- $a = 1$ のとき、$A = E$ ($a=1, b=0, c=1$)。方程式は $t^2 - 2t + 1 = 0$ となり $\alpha = 1, \beta = 1$。
(イ) $1 - a - c = 0$ のとき
式は $(ac - b^2)E = O$ となるため、$ac - b^2 = 0$ である。 また、仮定より $a + c = 1$ である。 このとき (1) で登場した2次方程式に代入すると、$t^2 - t + 0 = 0$ より $t(t - 1) = 0$ となる。 解は $t = 0, 1$ であり、$\alpha = 0, \beta = 1$ となる。
以上の網羅的な検討より、取り得る最小値と最大値の組み合わせは以下の3パターンとなる。
解説
(1) は2次同次式の最大・最小を求める典型的な問題です。$\sin^2 x$、$\cos^2 x$、$\sin x \cos x$ が混在する式は、半角・倍角の公式を利用して角を $2x$ に揃えるのが定石です。
(2) は行列の計算と (1) の誘導を結びつける問題です。成分比較(解法1)による場合分けでも容易に解けますが、(1) で与えられた2次方程式 $t^2 - (a + c)t + ac - b^2 = 0$ が行列 $A$ の固有値を求める方程式になっていることに気づくと、ケーリー・ハミルトンの定理(解法2)を活用して見通しよく解くこともできます。
答え
(1) 解答の「解法1」に示した通りである。
(2) 以下のいずれかである。
- 最小値 $0$、最大値 $0$
- 最小値 $0$、最大値 $1$
- 最小値 $1$、最大値 $1$
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