九州大学 1998年 理系 第1問 解説

方針・初手
- (1) 条件(A)は関数が周期1であることを示している。すべての実数で微分可能であり、定数ではない周期関数の代表例を考える。
- (2) $a < b$ ならば $F(a) \geqq F(b)$ を示すには、関数 $F(x)$ が単調減少(広義単調減少)であることを示せばよい。定義された $F(x)$ を微分して、条件(B)を適用する。
- (3) 条件(A)を繰り返し用いて $f(x+n)$ を $f(x)$ で表し、$F(x+n)$ の定義式に代入して整理する。
- (4) これまでに導いた $F(x)$ の単調減少性と (3) の関係式を用いて証明する。不等式を作って矛盾を導く背理法や、値を挟み込む手法を利用する。
解法1
(1)
条件(A)は、$f(x)$ が周期1の周期関数であることを意味している。 すべての実数 $x$ において微分可能であり、定数関数でない周期1の関数の例として、三角関数が挙げられる。 例えば、$f(x) = \sin(2\pi x)$ とすると、
$$f(x+1) = \sin(2\pi(x+1)) = \sin(2\pi x + 2\pi) = \sin(2\pi x) = f(x)$$
となり、条件(A)を満たす。また、すべての実数で微分可能であり、定数関数でもない。 したがって、条件を満たす関数の例は、
$$f(x) = \sin(2\pi x)$$
である。($f(x) = \cos(2\pi x)$ などでもよい)
(2)
$F(x) = e^x f(x)$ を $x$ について微分すると、積の微分公式より、
$$F'(x) = (e^x)' f(x) + e^x f'(x) = e^x f(x) + e^x f'(x) = e^x \{ f'(x) + f(x) \}$$
となる。 条件(B)より、すべての $x$ に対して $f'(x) + f(x) \leqq 0$ であり、また指数関数であるから常に $e^x > 0$ である。 したがって、すべての実数 $x$ に対して、
$$F'(x) \leqq 0$$
が成り立つ。 導関数が常に $0$ 以下であるため、関数 $F(x)$ は単調減少(広義単調減少)である。 ゆえに、$a < b$ ならば $F(a) \geqq F(b)$ であることが示された。
(3)
関数 $f(x)$ は条件(A)を満たすので、すべての実数 $x$ に対して $f(x+1) = f(x)$ が成り立つ。 これを帰納的に用いると、$n$ が正の整数のとき、
$$f(x+n) = f(x+n-1) = \cdots = f(x+1) = f(x)$$
が成り立つ。 したがって、$F(x+n)$ を $F(x)$ の定義に基づいて変形すると、
$$F(x+n) = e^{x+n} f(x+n) = e^n e^x f(x) = e^n F(x)$$
となる。
(4)
①
$f(c) \geqq 0$ となる $c$ が存在すると仮定し、もし $f(c) > 0$ であるとすると、$e^c > 0$ より $F(c) = e^c f(c) > 0$ となる。 任意の正の整数 $n$ について、(2)の結果から $F(x)$ は単調減少であるため、$c < c+n$ より、
$$F(c) \geqq F(c+n)$$
が成り立つ。 (3)の結果より $F(c+n) = e^n F(c)$ であるから、これを代入すると、
$$F(c) \geqq e^n F(c)$$
$$F(c) (1 - e^n) \geqq 0$$
となる。 ここで、$n \geqq 1$ であるから $e^n \geqq e > 1$ となり、$1 - e^n < 0$ である。 したがって両辺を負の数 $1 - e^n$ で割ると $F(c) \leqq 0$ となるが、これは $F(c) > 0$ であるという仮定に矛盾する。 ゆえに $f(c) > 0$ となることはなく、$f(c) = 0$ である。
②
ある $c$ で $f(c) = 0$ であるとする。このとき $F(c) = e^c f(c) = 0$ である。 任意の実数 $x$ をとる。この $x$ に対して、
$$c < x+n < c+m$$
を満たすような正の整数 $n, m$ が存在する。 (例えば、$n$ を $n > c-x$ となる正の整数、$m$ を $m > x+n-c$ となる正の整数と選べばよい) (2)の結果から $F(x)$ は単調減少であるため、この大小関係を用いると、
$$F(c) \geqq F(x+n) \geqq F(c+m)$$
が成り立つ。 ここで、$F(c) = 0$ であり、また(3)の結果より $F(c+m) = e^m F(c) = 0$ であるから、
$$0 \geqq F(x+n) \geqq 0$$
となり、$F(x+n) = 0$ が得られる。 さらに(3)の結果より $F(x+n) = e^n F(x)$ であるから、
$$e^n F(x) = 0$$
$e^n > 0$ より $F(x) = 0$ となり、$F(x) = e^x f(x) = 0$ となる。 $e^x > 0$ であることから $f(x) = 0$ が導かれる。 $x$ は任意の実数としてとったものであるから、すべての $x$ で $f(x) = 0$ となることが示された。
解説
- 微分や積分を含む関数の決定や性質の証明において、指数関数 $e^x$ や $e^{-x}$ が絡む式は、積の微分公式 $(e^x f(x))' = e^x(f'(x) + f(x))$ や $(e^{-x} f(x))' = e^{-x}(f'(x) - f(x))$ を逆用する発想が非常に頻出である。本問の (2) はまさにその誘導となっている。
- (4) では、「微分可能」「単調減少」といった連続的な関数の性質と、「周期性」という離散的な漸化式の性質を組み合わせて論証を行う力が要求される。
- (4) ①の証明は、背理法を用いて $f(c) > 0$ と仮定し、関数の単調減少性と周期性による拡大($e^n$ 倍)が両立しないことから矛盾を導くのがスムーズである。
- (4) ②の証明では、任意の $x$ について $0$ になることを示すために、周期性を利用して既知の点 $c$ の間に着目する点 $x$ (を周期でずらした点)を押し込み、不等式ではさみうちの要領で評価するという論理構成が鍵となる。
答え
(1) $f(x) = \sin(2\pi x)$ (など)
(2) $F'(x) \leqq 0$ より $F(x)$ が単調減少であることを用いて証明した。
(3) $F(x+n) = e^n F(x)$
(4) ① 背理法などを用いて $f(c) = 0$ であることを証明した。 ② $c < x+n < c+m$ となる正の整数 $n, m$ をとり、$F(x)$ の単調減少性と (3) の結果を利用して証明した。
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