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九州大学 2002年 理系 第3問 解説

数学2/指数対数数学3/積分法テーマ/不等式の証明テーマ/定積分計算
九州大学 2002年 理系 第3問 解説

方針・初手

(1) は、2変数 $x, y$ の不等式であるが、一文字を定数とみなしてもう一文字の関数として微分し、最小値が $0$ 以上になることを示すのが基本方針となる。または、$x, y > 0$ に着目して両辺を $y$ で割り、比 $t = \frac{x}{y}$ の関数として1変数の問題に帰着させることもできる。

(2) は、(1) で示した不等式が「すべての正の実数 $x, y$ に対して」成り立つことに着目し、$x$ と $y$ に条件を満たす正の関数 $f(x)$ と $g(x)$ を代入して、両辺を積分する。

(3) は、(2) で得られた不等式の特別な場合を考える。$g(x)$ としてどのような関数を選べば(2)の前提条件 $\int_a^b f(x) dx = \int_a^b g(x) dx$ を満たし、かつ目的の不等式が現れるかを考える。

解法1

(1)

$y$ を任意の正の定数として固定し、$x > 0$ における関数 $F(x)$ を次のように定める。

$$F(x) = x \log x - x \log y - x + y$$

$x$ について微分すると、

$$\begin{aligned} F'(x) &= (\log x + 1) - \log y - 1 \\ &= \log x - \log y \end{aligned}$$

$F'(x) = 0$ となるのは $\log x = \log y$ より $x = y$ のときである。 $x > 0$ における $F(x)$ の増減表は以下のようになる。

$$\begin{array}{c|c|c|c|c} \hline x & (0) & \cdots & y & \cdots \\ \hline F'(x) & & - & 0 & + \\ \hline F(x) & & \searrow & 0 & \nearrow \\ \hline \end{array}$$

増減表より、$F(x)$ は $x = y$ のとき最小値 $0$ をとる。 したがって、$x > 0$ において $F(x) \geqq 0$ すなわち $x \log x - x \log y - x + y \geqq 0$ が成り立つ。 これはすべての正の実数 $y$ に対して成り立つから、すべての正の実数 $x, y$ に対して与えられた不等式は成り立つ。

(2)

(1) の結果より、すべての正の実数 $X, Y$ について以下の不等式が成り立つ。

$$X \log X - X \log Y - X + Y \geqq 0$$

$f(x), g(x)$ は閉区間 $[a, b]$ で正の値をとる関数であるから、任意の $x \in [a, b]$ に対して $f(x) > 0, g(x) > 0$ である。 したがって、$X = f(x), Y = g(x)$ として(1)の不等式に代入することができ、次の不等式が成り立つ。

$$f(x) \log f(x) - f(x) \log g(x) - f(x) + g(x) \geqq 0$$

この不等式の両辺を $x$ について $a$ から $b$ まで積分すると、

$$\int_a^b \{ f(x) \log f(x) - f(x) \log g(x) - f(x) + g(x) \} dx \geqq 0$$

積分を分けると、

$$\int_a^b f(x) \log f(x) dx - \int_a^b f(x) \log g(x) dx - \int_a^b f(x) dx + \int_a^b g(x) dx \geqq 0$$

問題の条件より $\int_a^b f(x) dx = \int_a^b g(x) dx$ であるから、$-\int_a^b f(x) dx + \int_a^b g(x) dx = 0$ となる。 これを上の式に代入して整理すると、

$$\int_a^b f(x) \log f(x) dx - \int_a^b f(x) \log g(x) dx \geqq 0$$

$$\int_a^b f(x) \log f(x) dx \geqq \int_a^b f(x) \log g(x) dx$$

となり、示された。

(3)

(2) の不等式において、定数関数 $g(x) = M$ とおく。 条件より、$f(x)$ は正の値をとるので $M = \frac{1}{b-a} \int_a^b f(x) dx$ は正の実数である。 したがって、$g(x) = M$ は閉区間 $[a, b]$ で正の値をとる連続関数である。 また、$g(x)$ の閉区間 $[a, b]$ における定積分は、

$$\begin{aligned} \int_a^b g(x) dx &= \int_a^b M dx \\ &= M[x]_a^b \\ &= M(b-a) \end{aligned}$$

となる。ここで、$M = \frac{1}{b-a} \int_a^b f(x) dx$ より $M(b-a) = \int_a^b f(x) dx$ であるから、

$$\int_a^b g(x) dx = \int_a^b f(x) dx$$

が成り立つ。

よって、$f(x)$ と $g(x) = M$ は(2)の条件をすべて満たすので、(2)の不等式が適用でき、

$$\int_a^b f(x) \log f(x) dx \geqq \int_a^b f(x) \log M dx$$

が成り立つ。この右辺を計算すると、

$$\begin{aligned} \int_a^b f(x) \log M dx &= \log M \int_a^b f(x) dx \\ &= \log M \cdot \{M(b-a)\} \\ &= M(b-a) \log M \end{aligned}$$

となるので、不等式は

$$\int_a^b f(x) \log f(x) dx \geqq M(b-a) \log M$$

となる。$a < b$ より $b-a > 0$ であるから、両辺を $b-a$ で割ると、

$$\frac{1}{b-a} \int_a^b f(x) \log f(x) dx \geqq M \log M$$

となり、示された。

解法2

(1)の別解

$x > 0, y > 0$ より、与えられた不等式の両辺を $y$ で割ると、

$$\frac{x}{y} \log x - \frac{x}{y} \log y - \frac{x}{y} + 1 \geqq 0$$

$$\frac{x}{y} (\log x - \log y) - \frac{x}{y} + 1 \geqq 0$$

$$\frac{x}{y} \log \frac{x}{y} - \frac{x}{y} + 1 \geqq 0$$

ここで、$t = \frac{x}{y}$ とおくと、$x > 0, y > 0$ より $t > 0$ である。 不等式は $t \log t - t + 1 \geqq 0$ となる。

$h(t) = t \log t - t + 1 \quad (t > 0)$ とおく。 $t$ について微分すると、

$$\begin{aligned} h'(t) &= 1 \cdot \log t + t \cdot \frac{1}{t} - 1 \\ &= \log t + 1 - 1 \\ &= \log t \end{aligned}$$

$h'(t) = 0$ となるのは $t = 1$ のときである。 $t > 0$ における $h(t)$ の増減表は以下のようになる。

$$\begin{array}{c|c|c|c|c} \hline t & (0) & \cdots & 1 & \cdots \\ \hline h'(t) & & - & 0 & + \\ \hline h(t) & & \searrow & 0 & \nearrow \\ \hline \end{array}$$

増減表より、$h(t)$ は $t = 1$ のとき最小値 $0$ をとる。 したがって、$t > 0$ において $h(t) \geqq 0$ が成り立つので、すべての正の実数 $x, y$ に対して $x \log x - x \log y - x + y \geqq 0$ が成り立つ。

解説

前の設問の結果を次の設問で利用するという、典型的な誘導問題である。

(1) は実数全体の不等式証明であり、1変数を固定して微分するか、比をとって1変数関数に帰着させるのが定石である。

(2) は「すべての正の実数」で成り立つ不等式に、特定の関数を代入して積分するという発想が必要になる。積分区間内において常に関数が正であることの確認を忘れないようにしたい。

(3) は、(2) で示した抽象的な関数の不等式において、片方の関数を具体的な定数関数に設定することで目的の形を導く。誘導に従って $g(x)$ をどう設定するかを見抜くのが鍵となる。

答え

(1) 関数を設定し、微分して最小値が0以上になることで示される。(証明略)

(2) (1)の不等式に $f(x), g(x)$ を代入し、両辺を積分することで示される。(証明略)

(3) (2)の不等式において定数関数 $g(x) = M$ を適用することで示される。(証明略)

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